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 ミューリエは熊にトドメを刺した。僕はその様子を静かに見守る。可哀想だけど、このまま見逃したらまた人間を襲うかもしれないから。


 だからこそ、僕は今回の出来事をしっかりとこの目に焼き付ける。せめて熊の最期を心に刻んで、その生きていた証を忘れないようにしたい。それが彼に対する敬意の念と手向けだ。


 その後、僕は動かなくなった熊へとゆっくり歩み寄り、しゃがんで手を合わせる。


「ミューリエ、熊を埋めて供養してあげようよ」


「っ!? ……承知した。ふふっ、アレスは優しいのだな」


 一瞬、息を呑んだミューリエだったけど、すぐにその瞳は温かなものへ変わった。それになんだかすごく嬉しそう。


 でも僕は別に優しくなんてない。何の力もないがゆえに、見守ることしか出来なかっただけだ。だから最期くらいは何かしてあげたいという気持ちになっただけ。結果論なんだ。


 僕にもっと力があれば女の子も熊も、両方を助けることが出来たかもしれない。無力な自分が本当に嫌になるし、悔いだけが残る。


「――おい、娘。お前も熊の供養を手伝え」


 直後、そうミューリエが声をかけると、女の子は露骨に不満そうな顔をした。


「はぁっ? なんであたしがそんなことをしなきゃならないのよっ!? そもそもあたしを襲ってきたヤツなのよ? 供養なんか真っ平御免よ」


「私はお前の命を助けてやっただろう。その借りをチャラにするチャンスをやろうと言うのだ。それともお前は恩知らずか?」


「ぐ……恩知らずとは聞き捨てならないわね。あたしはこれでも義理堅いんだから」


「だったらなおさら、貸し借りはここで精算しておいた方がお前もスッキリするのではないか? それともどこかで何かの縁があって再会した時、『今回の借りを返せ』と無理難題を押しつけられて後悔しても知らぬぞ? フッ……」


 ニタリと怪しく口元を緩めるミューリエ。計算通りの展開といった感じなのかな? 案外、こういう駆け引きみたいなことも得意なのかも。


 それに対して女の子はやれやれといった感じで深いため息を吐く。


「あんた、なかなかいい性格してるわね? まぁ、いいわ。分かった。協力するわよ」


 とうとう女の子は折れて、熊を埋葬するのを手伝ってくれることになった。


 早速、僕と彼女が道端にスコップで穴を掘っていく。ミューリエは火葬するのに使う薪を調達しにいった。


 僕はそのまま埋めてしまえばいいと思ってたんだけど、ミューリエ曰く、それだと熊の体は大きすぎて深く広く穴を掘らないといけないとのこと。確かに言われてみればそうだよね。


 ちなみにスコップは旅の必需品だから、大抵の旅人は常に持ち歩いている。だってほら……その……山や森などに用事がある際に使うから……ね……。



 ――ここでダイス判定。六面ダイスを二個振ろう。数値の合計は?



●8以上……→35へ

https://kakuyomu.jp/works/16816927859763772966/episodes/16816927859765856970


●7以下……→3へ

https://kakuyomu.jp/works/16816927859763772966/episodes/16816927859764246180


 

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