第97話 冬場のカッパ
ハロウィンのときに『保留』にしていた霊たちをなんとか
怪異退治組合での除霊(浄霊)作業には細々とした規定がある。
まずは霊の
本格的な除霊や浄霊は、一連の作業が終わった後に検討される決まりなので、とにかく処理に手間と時間がかかるのだ。
「霊に手間取ってるとほかの狩人のお仕事できないし、貯金はたいてもいいから
そんなことを言いながら、バリバリと音を立ててメロンパンの袋を開ける。
腹ぺこのリスみたいに菓子パンを
裏口から、店員がふたり表に出てきた。
話し声がコンビニの駐車場まで聞こえてくる。
河童寿司の営業時間はもうとっくの昔に終了している。
「今日、無理言ってラストまで残ってもらって悪かったね! バイト代はずんどくから!」
「ッス!」
「君さ~、最初はどうだろうと思うこともあったけど、よく働いてくれて助かってるよ。今日失敗しちゃったカッパ
「パッス!」
片方は新人アルバイトっぽい雰囲気である。
ずいぶん気合の入った返事だ。
ほとんど何を言っているか聞き取れない。
二人はそれぞれ分かれて
「それじゃお疲れ~っす!」
「カ~ッパッパッス!」
あまりにもな別れの
なんだろう。カッパッパッス……って。
河童寿司の店員たちの間で流行しているのだろうか。
不意に新人バイト君がコンビニの方を向いたとき、的矢樹は
野球帽を
そして、口にはくちばしがついていたのである。
*
カッパの生態は
とくに、冬の間にカッパが何をしているかは誰も知らない。
彼らは
「現在わかっているカッパの生態は、夏になってみんなが水場に繰り出し、たまたま目撃情報が
——と、先輩狩人である
たまたま宿毛湊が事務所に顔を出した際、的矢樹は挨拶もそこそこに切り出した。
「わかりましたよ、宿毛先輩。
もちろんそれだけだと何のことだかわかったものではないが、的矢樹は
「…………出稼ぎ?」
眉を寄せ、渋い顔つきで首をかしげる宿毛湊に、的矢樹は昨晩、河童寿司の駐車場で見かけた出来事を
「——というわけで、きっと河童は冬の間、人里におりて、河童寿司で出稼ぎのアルバイトをしているんですよ。
宿毛湊はこのとき、的矢樹が
宿毛湊から報告を受けた七尾支部長もまた「
妖怪学会で、カッパ族が急速に人の生活圏に侵入していることが正式に報告されたのは、その三年後のことであった。
河童寿司の店長は届出なく妖怪を雇用した
しらばっくれているのか、それとも本気なのか、店長のカッパ並みに青白い顔色からはうかがいしれなかったそうである。
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