第34話 響け、鎮魂のデュエル!! カードゲーマーさくら(上)
やつか駅前にある『カードショップ
ちょうどその日は大人気カードゲーム『
むしろ店内には小学生の泣き声と大人たちの舌打ちが響き、雰囲気は最悪に近い。
大会に参加した客で上機嫌なのは一人だけ。
中央のテーブルで高らかに勝利宣言をしている女がそれだ。
隠してもしょうがないので誰だか言うが、
「フハハハハ! ぬるい、ぬるすぎるわっ。この店には私を止められるデュエリストはいないのかしら! ――――あっ、マスター。大会優勝賞品のこのカード、換金してくれる? フーハハハハハッ」
あまりにも調子に乗っている上、堂々と大会の賞品であるレアカードをその場で換金するというマナー違反ぶりである。
頭に英国国旗柄のバンダナを巻いた名物店主は困り果てた顔でさくらに注意する。
「困るよ、さくらちゃん。禁止してるわけじゃないけどさあ……。最近うちの店、大会賞品をロンダリングするために傭兵を雇ってるんじゃないかって、噂になってるんだよ……」
「なによ、マスター。そんなくだらない噂で長年の私との仲に水を差そうっていうの」
噂の発端である張本人のくせに、諫早さくらは異常なほど堂々としていた。
実は、さくらは闘技王カードゲームの年季の入ったベテランプレイヤーなのである。
その腕前もなかなかのもので、こうして大会に参加しては並み居るデュエリストを打ち負かし、大会の賞品をもぎ取って行く。そして稼いだ小金で高額カードを溢れんばかりにデッキに投入し、さらなる強さを手にするのだ。
「くそっ……またレアカードがさくら姉ちゃんの手に……!」
「俺たちだって小遣い稼ぎしたいのに!」
「っていうか、僕らまた負けたから、さくらおばちゃんにさくら姉ちゃん呼びさせられるんじゃないかな……」
さくらに負けた小学生たちは、その素行の悪さに正直呆れつつ、しかしプレイヤーとしてさくらが優秀であることもあって、手をこまねいていた。
「頼むマメタ! 応援を呼んで来てくれ!」
近所の子どもたちとカドペに遊びに来ていたマメタは、こくりと頷く。
「わかった。マメタにまかせて!」
マメタは少年の肩からぴょんと降り、店を飛び出したところで広げられた両手にキャッチされた。
「やーん! やーん!」
ちゃいろい毛玉をいともたやすく捕獲した手のひらから逃げだそうともがくマメタ。
マメタを捕まえた手のひらの持ち主は、そんなマメタに優しく声をかけた。
「マメタ、俺だ」
そこにいたのは、マメタの良きパートナー、狩人の
「すくもさん!!!!」
「よく頑張ったな、マメタ。後は俺たちに任せてくれ……」
湊は肩の上にマメタを乗せると、カドペの店内に入っていく。
狩人は中央のテーブルで高笑いを続ける魔女の前に立ちはだかった。
「諫早さくら、お前の素行の悪さは通報という形で組合にも届いてるぞ。いたいけな小学生を
「人聞きの悪いことを言わないでちょうだい。アンティルールとはいえ、お互い了承の上での勝負。私が負けたらそれなりのカードを相手に渡している。公平な勝負よ!」
「そのあたりの調べもついている。お前が勝負の見返りに渡してるのはホログラムや箔押し加工が施されて一見強そうに見えるが、実は使いどころのあまりない見た目だけがカッコイイカードらしいな」
宿毛湊がそう指摘すると、たちまち店内がざわめき立った。
「な……なんだって……!? 俺の爆豪竜ドライゼアルスってウルトラレアカードなんじゃないの?」
「レアカードじゃないってほどではないんだけど、後発の上位互換カードが結構あって採用されにくいんだよな」
「ケンタをよくもだましたなっ」
いささか分が悪くなったのか、さくらは顔を歪めた。
「う、うるさい。カードのレアリティも見抜けないようじゃデュエリストとしては三流よ! お菓子の家を作って子どもたちを取って食ってるわけでもなし、組合にあれこれ口出しされる覚えはないわっ」
「そうか。だったらデュエリストとして勝負しろ」
そう言ってテーブルにデッキケースを置く。
「あなたも闘技王のデュエリストだったのね……!」
「俺はこの勝負に……このデッキと俺の魂を賭けるぜ!!」
「あのう、すくもさん、なんだかいつもとキャラがちがいませんか?」
そうかもしれない。
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