④擦れ違い

 あれから2年が経った。

 俺達は、本当に仲良くやってきた。少なくとも、俺はそう思っていた。

 それが、どうした事か、ここ3~4ヶ月の美鞠はおかしかった。

 俺の言葉に何かと突っかかって来る。

 (生理か?)とも思ったが、イライラは月に何度もあったので、すぐに違うと理解した。

 (倦怠期か?)・・・その線が強いと思った。


 その週末の美鞠は、いつになく機嫌が良かった。

 内心ホッとした。

 俺がソファーに腰掛けるや否や俺にポストカードを差し出し、浮かれた様子で捲くし立てた。

 「ねぇ、杏士!見て見て!ナツコが結婚したの!綺麗でしょ!ねぇ!・・・綺麗だなぁ・・・いいナ・・・あたしも早く着たいナ・・・ウェディングドレス!」

 ポストカードの中のナツコは、純白のドレスを身にまとい、これ以上にない幸せそうな表情で微笑んでいた。

 「へぇー・・・ま、そこら辺、あんま俺に期待すんなよな?」

 俺は、テーブルの上のリモコンを手に取りテレビを点けながらそう言った。

 すると、美鞠はリモコンを取り上げた。

 「それ、どういう意味?」

 「どうって・・・俺、やりたい事まだまだたくさんあるし、今はまだ自由でいたいしさ~」

 27といえばもう結婚を考えてもおかしくない年令かも知れないが、俺はまだ何にも縛られたくはなかった。美鞠にしたってまだ25だ。もう少し色んな事を楽しんでも損はない。

 途端、彼女は奪ったリモコンでテレビを消した。

 「何、そのいい加減な感じ!杏士はいつもそう。いつもいつもいい加減!真面目に話したくても、いつもはぐらかしてばっか!」

 全く意味がわからなかった。

 (いい加減?確かに、俺、B型だしな・・・っていうか、それは今に始まった事じゃねぇしなぁ・・・)

 考えていたら、だんだん腹が立ってきた。

 「何だよ、何怒ってんだよ!何か気に入らねぇ事あるなら、はっきり言えよ!」

 俺はイライラから少し声を荒げてしまった。

 「・・・もういいっ!解らないなら、もういいですっ!」

 出た。

 敬語が出たよ。女って、何で喧嘩口調になると敬語になるのかねぇ・・・ホント、意味不明。

 

 リモコンを取り上げられた俺は、真っ黒になった液晶画面を眺めながら考える。  

 が、この空気を和ませる案がひとつも浮かんでこない。

 仕方なく俺は、いつものコースに逃げる事にした。

 「・・・帰るわ」


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