1月18日
嗅覚による記憶への干渉。
私は、小学生のころ好きだったあの娘の柔軟剤のかおりを今でも覚えている。覚えているというと少し語弊があるかもしれない。
私たちが記憶していることの半分以上はきっとそうだ。見たり、聴いたり、嗅いだり、触ったり。脳みその奥底から「あの時のこと」を引っ張り出す。それが空想でも構わない。私たち人間は空想に支えられてなんとか生きている。19歳になった私は、彼女と再会することになった。経緯は省略する。
人間は匂いが違うだけでこんなにも別人のように感じるのか。彼女との空間に、懐かしさというものなどかけらもなかった。それはそれは嘘のように空虚な時間だった。この場から今すぐ逃げ出してしまいたい。彼女の顔を覗き込んでみることなど私にできるはずがなかった。彼女はそう、女性になっていたのだ。柔軟剤の甘い香りを振りまいていた彼女は、いつしか香水で自らを包み込み、素敵な化粧で自らを偽っていた。
世界は私が望むようには流れない。わかってはいる。しかし、こんなに狭い、私に近い世界ですら私の思い通りにはならない。
変われていないのはきっと私だけなんだろう。
街中でふと同じ香りと遭遇してしまった時のゾクっとする感覚。心臓の上の方がキュッとなる。思い出したくもないことまで、私の心は覚えている。余計なお世話だ。全く嫌になる。
日記 @damgam
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