1月12日

セプタム。

真っ赤な口紅。

唇のしたに佇むラブレット。

綺麗に切り揃えられた前髪。


乱雑に塗られた真っ赤なマニキュア。

「ギャルみたいでかわいいね。」

西日が激しく照りつける午後4時08分。西へと国道19号線を走る2人きりの小さな世界の中で彼女は白い歯を覗かせる。腰のあたりまでまっすぐに伸びた彼女の髪を見つめる。時がただただ流れていくのを感じる。頭の中で、彼女の肌に触れようとする。髪が靡く。金色の繊維が私を包み込む。あくびを噛み殺して、彼女の横顔を見つめた。

私は生きている。なんてことを思ったりもする。


N’夙川boysの’’物語はちと?不安定’’が流れている。とてもいい曲。この前、その娘が聴いていたから、家に帰ってからこっそり調べたんだ。

「このN’ってところなんて読むかわかる?」

「えー、なんだろう。。ナンバーとか??」

「ン!ていうんだって笑」

「なんだそれ笑」

ン!夙川ボーイズのリンダとマーヤが何度も何度も繰り返す。物語はちと?不安定。物語はちと?不安定。物語はちと不安定。


そういえば今日は牛タンを食べにいくんだ。その娘が食べたいと言っていた牛タン。タバコの吸えるお店で。2人で。すぐお腹いっぱいになる2人。お腹いっぱいだねと言い合いながら笑い合う。道路にはまだまだ終わりそうもない、始まったばかりの冬の冷たさが居座っている。2人のジャンパーが擦れ合う音だけが私の耳に響く。遅れてやってきた、なんていうか、そう、青春?てやつ?私にはあんまりそういうのわかんないけど。

手を握りたいな。なんて童貞の高校生みたいなことを考えながらその娘を眺める。本当に素敵な娘だなあ。週8で会えたらいいのに。


そういえばN’夙川boysの’’プラネットマジック’’って曲も良かった。


「彼は魔法をかけた。

 素敵な願いを込めた。」


「またね。」

そう、またね。また会う日まで。また会う日までがんばれるかなあ。やっぱり走って追いかけてしまおうかな。でもすんごい重たいブーツ履いてるしなあ。やめとこ。また今度にしよ。

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