第2話 後日
流星群の日から3日後の昼を少し過ぎた頃
今日もいつも通りに新聞を読んでいると、ドアを叩く音が聞こえた。
「やけに遅かったな」
やってきたのは予想通りと言ったところか、ハイドリヒだった。
「なんできてくれなかったんですか!」
「なんでって、その日に用事があったからだよ。ほら、言っただろ“行けたら行く”って。3日前は用事があったから行けれなかった。そんだけ」
「言ったからには来てって言ったじゃないですか!」
「無理な話だ」
ただの家の中で中年ほどの男性2人が揉めている。
「...で、なんでその祝宴の次の日に来なかったんだ?お前のことだし、絶対に来ると思ったんだが。そして、まだそこまで寒くないのにそんな厚着を着て...なんかあるだろ」
明らかに、3日前の容姿とは全く違う姿になっていた。
「あれ、分かっちゃいましたか?流石は100年勤めてた人ですね」
「そのくらい分かるわ。俺を馬鹿にしているのか?」
「へへへ、そうでしたね。実は、その日の出来事なんですけど...」
話は3日前の新しく就任したハイドリヒの時のハルド平原で祝宴を開いていた時のことらしい。
「ご存知の通り、祝宴を開いていた時なのですが、おり夜空を眺めながら部下たちと飲み合っていました。...まぁ、私は紅茶ですが」
軍の位が高い人は、いつでも準備ができるように酒は決まりで飲めなくなっている。しかし、そもそもハイドリヒは酒に弱いためあまり飲まない。
「その終わり頃でした。一つの流星と思われるものが近づいてきたんです」
その時にいた兵士たちも酔いが覚めてきた頃合いで、多数の人がその流星を見ていたそう。
「そして、その流星が平原の近くのハルド森林に落ちていたんです。しかし、大きな音が鳴らなかったので、私どもは他国の攻撃だったら大変なことになってしまうため、見に行ったんです。そしたら...」
すると、ハイドリヒは被っていた厚着を取った。
「この子が...」
背中に背負っていたのは少年...と言うには少し大きいく、現在は死んだように寝ている。
「そうか。...で、その子がどうしたって?」
3日前は聞く耳すら持たなかったグレーマンが、身を前に倒しながら聞いている。
「流星が落ちた辺りを探索していると、この子がいたんです。ただ、周りには大きなクレーターは無く、この子がその時火傷を負っていたので、恐らくこの子が落ちてきたと本部は考えてます」
たしかに、ハイドリヒが背中に背負っている少年のほっぺたや腕に焼けた痕がある
「ちょっとまて、そんなの2、3日前の新聞になかったぞ?」
「今の新聞は、少し盛って話題にしてしまいますから...。もし、そいつらがとんでもないことを記事にして、戦争にでもなったら大変なので軍部内でがなんとか情報を隠蔽しています」
幸いにも、一般客の来場を拒んでいたため、今は隕石が落ちてきた噂としか騒がれてない。
「ふ〜ん。でも、その子が?どうやって?周りはそこまでの高さがない丘しかないハルド平原に?」
「だから本人に聞こうとしてるんですが、この様子で...」
ハイドリヒが、近くにあった椅子を2つ並べて、そこにに優しく寝かしつけた。
「それは確かにな...でも、それで俺のところになんでそんな話をしに来た?軍部内で安静にしてさせていればいい話じゃないか?」
「それをまず最初に考えました。しかし、現在の軍部は新兵器の開発に勤しんでおりまして、それが漏れてしまうと大事件になってしまいますから、軍部内の規則で軍部の関係者以外は軍部の病棟で寝かせられないんです」
「じゃあ病院は?一時的な保護なら孤児院でもいいんじゃないか?」
「それが...現在皇帝の命令で2つを除くそういう施設が工事中で、現在受付を拒否している状態なんです」
現在は、国王の命令でなんでも新しく建て替えており、一時的に公共設備がかなり制限されてしまっている。
「タイミングが悪いな...なら、軍部内の人だったらどうだ?家族持ち何人かいるだろ?」
「忘れたんですか?あなたが参謀総長を辞める少し前に軍部内の規則として上位以外の軍隊の兵士は家族を持ってはいけない、ってあなたが決めたんですよ?」
家族がいると、指揮が下がってしまうと考えたため、参謀総長命令で、家族は持ってないことを条件に入隊させることにしている。
「今はお前が参謀総長なんだろ?なら取っ払っちまえよ」
「結果として我が軍の兵士の士気が上がってしまっているのでできません!」
グレーマンが思いつくこと以上に、ハイドリヒは動いていたため、かなり時間がかかってしまった。
「...はぁ、だから3日もかかったわけか。...待てよ、ここにその子を連れてきたってことはまさかとは思うが」
つまりは、
「はい、あなたに任せたいと」
「だろうな。帰れ」
「何でですか?私の知人でも頼れるのがあなたくらいですよ?そして、今あなたは軍には入っていないので、規律的にも大丈夫です。だから、せめて孤児院の改築が完了するまでの間、預かってください」
「それもそうだが...」
グレーマンが渋る。
「だからお願いしますって」
しつこく、お願いするハイドリヒ。
「無理だ」
「そこをお願いしますよ」
「だから無理な話だ...
<そんな中、しばらく押し合いがあり>
「それでは、お願いしますね〜」
結局、グレーマンはハイドリヒに根負けし、少年を預かる羽目になった。
「外交もそこそこ得意だった俺が、まさか根負けするなんてな。20年で落ちたもんだ」
グレーマンはため息をつきながら外に出て、パイプを口にした。
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