第3話 目覚め

グレーマンが外に出て一服した後に、2階の一室で寝かせている少年の様子を見にいった

「うーん...魔素切れの症状もあるが、それ以上に体の疲労が見えるな...。この調子だと2、3日ほどかかるか」

少年はとても疲れているのか、疲労が溜まっているのが目に見えて分かる

「だが、こいつの容姿が気にかかるな」

髪は黄金色の黄色寄りにショートヘアー、肌は白色

兵隊の軽装備と言えばいいのだろうか

上は肋骨辺りを覆っており、下は動きやすい生地を履いている

上の鎧の胸元には独特の鷲のマークが描かれている

「鷲のマークは神風教会に似てるが...」

神風教会はこの大陸のハルド帝国の東側にある国ボーワナ共和国を境にした国々でよく信仰されている宗教だ

「だが、こいつは教会とも関係ない森に落ちてきたんだろ?まさか、何かしらの手違いでこっちに降りてきたとか?」

と、ぶつぶつ顎に手を当てながら独り言を言っていると

「うぅん...」

少年は何かにうなされてているようだ

グレーマンが顎から手を離す

「いも...うと...」

少年の口から寝言が出てきた

「なんだ、寝言か。しかし、妹?こいつは双子なのか?」

少年の寝言からは確かにそう聞こえた

「だが、ハイドリヒの奴が周りを探索したが他には見つけられなかったって言ってたな...」

ハイドリヒの話だと、他にはいないようだった

「一回聞きに行くか」


軍部最高指揮監視塔(参謀本部)

「もう1人いなかった...ですか?」

グレーマンにとって、とても懐かしい場所に戻ってきた

「そうだ。あいつの寝言がそう言ってた」

少年の現在の様子と、寝言についてハイドリヒに事細かく話した

「う〜ん...ハルド森林は奥深くまでは行ってませんが、周囲は確かに探索しましたが、もう1人はいませんでしたよ?」

「そうか...なら、神風教会については?」

「そうですね...たしかにあの特徴的な服装だと、やはり神風教会に似てますね。ただ、連絡はしてませんね」

「なら、行ってくれるか?」

「いや〜...それがまたタイミングが悪くて...」

ハイドリヒが顔を顰める

「あぁ、軍の規則でできないとか?」

「いえ、そうじゃなくて...」

ハイドリヒが上官の部屋に案内する

「こんな感じでして...」

上官たちが書類仕事をしている様子が伺える

参謀総長が来ても挨拶をしてこないということは、相当切羽詰まってる

「新しい武器の開発にこんな書類仕事いるのか?」

「いえ、確かにこの書類の一部にも新たな武器の開発の費用やデータがあるのですが、孤児院の材料費の支出や建設費、城壁の修理費用や堀の建造計画書の見通し書類など...めちゃくちゃありまして、それが軍部内に回ってきて」

「ちょっとまて、軍はいつから雑用の仕事もやるようになったんだ?専門の公的機関があっただろ?」

「それがですね...今の皇帝は、なんでも富国先進国化をスローガンにして古いものをなんでも建て替えたり、昼頃にも話しましたが、新武器の開発をするなら大幅な予算案の拡張をするだったりと、とにかくその公的機関の職員がパンクしてしまって、ボイコットしてしまっているんですよ」

「っで、その代わりにできるのが軍の上官の人員だけだったと...」

「えぇ、年の予算案の5倍を払うからって言われたら...そりゃあ...ねぇ?」

「はぁ...どんだけその武器に金かけてんだ?」

「それは、いくら元参謀総長でも言えませんね...で、そこでです」

なんとなく、グレーマンでも察しがついた

「...俺が直々に?」

「行ってくれますか?」

今度はグレーマンの顔が歪んだ

「一回言ったと思うが、俺はもう軍人でもない」

「でも、なんでその子のことを気にかけてるんですか?」

「それは...暇だったから...」

「なら、お願いしますね〜」

と、口素早くハイドリヒが言うと走って自室に戻ってしまった

「...仕方ないかぁ...」


自宅に戻り、少年の様子を再び見る

「朝より回復はしていそうだな」

預かった時に見た時より寝ている顔が緩やかになっている

「でも、まだなんか苦しそうなんだよな...」それでもまだ何かあるようだ

「...顔が赤いが...もしかしてだが」

少年の顔に手を当てる

「...熱がある」

なにか重篤な病気になってたら大変なため、医者に家に来てもらった

診断結果は右腕の骨のひびと、軽度の火傷

なにかしらの病気にはかかってないが、ガーゼをあててしばらくの間安静にさせろとのことだった

「...それにしても、あの状態からよく生き残れたよな」


<次の日の朝>

夕食を済ませて、今日も新聞を部屋のリビングで読んでいると、2階の少年の部屋から何かが転げ落ちる音が聞こえた

なにかあったのか見に行くと、少年がベットから転げ落ちていた

「いててててて...」

右腕を抑えながら痛そうに横たわっている

「怪我してんだから無茶すんな」

グレーマンが抱き上げ、ベットに戻す

「こ、ここは...?」

「俺の家。お前が空から降ってきて、怪我してたからここに運ばれてきたんだ」

「あ、あなたは?」

「俺か?グレーマンって言う」

「そ、そうか」

少年は立て直そうと必死だが、中々立てない

「...怪我してんだから安静にしておけ」

少年を抱き抱えてベットに戻す

グレーマンは持ってきた椅子を置き座る

「それで...まずは名前を聞こうか」

「...ウラジミール」

「そうか...じゃあ、唐突で悪いが、気絶する前のことは分かるか?」

「...分からない」

少年が足元を向く

「...名前は言えても?」

「いや、その名前もパッと頭に出てきたものを言っただけ...本当に分からないんです」

指を顎に当て、呟く

「...記憶喪失の様に見せかけてるのかもしれないが、この様子じゃあ本当に分からないのかもな...」

少年は落ち着いているように見えるが、少し混乱している様にも見える。

「まぁ、とりあえず怪我が治るまでここで寝てろ」

と、言い少年を寝かしつけた


〜その日の昼〜

昼食の用意をし、グレーマンは少年の部屋で一緒に食べ、話をしていた

「何も覚えてないんだな?」

「...はい」

返事をした瞬間に下を向いてしまった

「お前が寝てた時に寝言で妹についてなんか呻いていたが、なにか心当たりは?」

「妹...いたようないないような...」

「...なにか強く当たったんだろうな。とりあえず、しばらくの間は安静にしていろ」

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