第6話 廃墟の探索
あの後、宿を見つけることはできたがどうしても時間が空いてしまっている。
「あと5時間だが、何をしていようか...」
質素な部屋でベットの横に腰をかけ、足を組みながら考えている。
「せっかくハイドリヒさんが経費を出してくれるっていうのに、こんな質素な部屋でいいんですか?」
部屋の対にあるベットに仰向けにしながらウラジミールが言ってきた。
「この辺じゃ、こんな宿しかない。我慢しろ」
「それは残念ですね」
グレーマンの方に体の向きを変える
「右腕の骨ににヒビが入っているのわすれたのか?もうちょっと大人しくできんのか」
「だってやることないんですよ?」
「それもそうだが...」
すると、グレーマンが顔を上げる。
「仕方ない、あそこに行くか」
と、立ち上がりウラジミール連れてとある場所へ向かった。
平原を越え、山道を歩いている最中
「グレーマンさん」
後ろを歩いていたウラジミールに声をかけられた。
「どうした?」
「今、どこに行っているんですか?」
「お前...えっと、ウラジミール。ナウルカイロに行きたいって出発前に言っていたよな?」
「はい」
「ただ、俺もどこに行けばいいか分からない。だけど、とりあえず何かしらないとこっちも困るから、なるべくなにかありそうなナウルカイロの首都だった場所に向かってる」
「そうなんですか」
しかし、グレーマンは下を向きながら、
「...ただ、今はあまり何も残ってない」
「なんでなんですか?」
続けて、グレーマンは話す。
「120年前に戦争があったって言ったよな?その終戦間近の首都の攻防戦がかなり激化してな、ことごとく建物が破壊されて、ほとんど残ってないんだ」
「そうなんですね」
まだ、どう接すれば分からず会話が続かない。
「...見えてきたぞ」
山道を歩くこと1時間。
森の一部が晴れていた場所には、石造の街だったらしきもの。
酷く風化して、見るからに瓦礫の山ばかりだが、どんな家があったかが予想できるまではある程度、原型を保っている。
「...とりあえず、何かしらないか一緒に探すか」
2人は町だった場所に入る。
「まだ、砲台の弾とかがあちこちに見られますね」
苔や蔦が生えているが、当時の生活風景がまだ想像できそうだ。
それに、少量ではあるが建物や当時の家具は残っている。
「戦争が激化して、民家にまで被害が及んだからな。ここを再復興するにしても、原型がないから修復のしようがない」
と、言いながら一つの家に入る。
「それに、莫大な費用がかかるし、それに見合う地形というとそうでもない。ただ、軍の補給点だったり、要塞拠点にしては、いい立地かもな」
壁や床などを見ながら机にのっている砂埃をはくグレーマン。
「う〜ん...あ、あれなんていいかも」
ウラジミールがまだ使えそうな台の代わりになりそうな古びた椅子を足と左手で移動して、壁にかけてあった時計を持ってきた。
「...なんで時計?」
グレーマンが手に持ち、裏も見て、埃をどかす。
「そういえば、グレーマンさんの家に時計がなかったな〜って」
しかし、120年前のものなのでこの時計が動くはずがない。
「...動くのか...これ」
針は一向に進もうとしない。
「まぁ、気分的にあった方がいいんじゃないですか?」
「気分的に...か」
そう言いながらも、グレーマンは使えもしない時計を背負っていた大剣の間に挟んだ。
その後も、廃墟を探索したが、これと言ったものは見つからず、暗くなってきたため宿に戻った。
「少しは暇潰しになったか?」
「探検家みたいで良かったですね」
2人は夕日に照らされながら、来た道を戻って行った。
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