第5話 道中
<別の大陸の樹海>
「...んっ」
少女が目を覚ました
「ここは...」
目覚めた時間帯が夜ということもあり、辺り一面暗闇に染まっていた
「...お兄ちゃんっ!」
咄嗟に辺りを見るが、いない
「はぐれちゃったの...?」
何度見渡しても人影どころか、人の気配すら全くない
「と、とにかくここを移動しないと...」
少女が歩きはじめる
高い木々に太い根。そこに、苔やキノコが生えており、ジメジメした感じになっている
その少女はひたすら歩いた。しかし、人がいそうな気配は未だに感じ取れてすらいない
「歩いても歩いても...全く同じ風景ばっかりで、どこにいるか全く分からないな...」
そうこうしていると、手に違和感が出てきた
「なんか...手が痺れてきた...」
手は動かせるものの、段々と痺れが増していき、足にも痺れが出てきて、遂には...
「息が...苦しい...」
呼吸が荒くなり、視界も歪んてきた
「もう...だm...」
と、膝から崩れ落ちるように倒れてしまった
「わぁ...っ!」
ウラジミールが飛び起きた
「どうした?」
夜の見張りを少し休憩しようとコーヒを煎れていたグレーマンが話しかけた
「いや、何も...ないです」
「まぁ、悪い夢でも見たんだろ」
再び背を向け、コーヒーを煎れる続きをする
そんな中、ウラジミールは独り言を呟く
「あの夢は一体...そういえば、初めてこの人と会った時に妹がどうとか言ってたけど...まさかあれが?」
思考を巡らせるが、全く答えが見つからない
「どうした?寝られないのか?」
グレーマンがウラジミールの隣に座る
「いえ...寝られます...」
「そうか」
そのまま、コーヒーを作り始めた。
「グレーマンさんの家にいる時によくハイドリヒさんが来てましたが、知り合いなんですか?」
「慣れ親しい関係って言った方がいいか...あいつとはよく昔に任務遂行をよく共にした仲だ。まぁ、あいつはバカ正直だから嫌う奴もいる。ただ、腕は確かだ」
「でも、あの人は軍師なんですよね?なんでわざわざ家まで来るんですか?」
「あいつは軍師じゃなくて最高責任者だな。そして、俺はもう違う。20年前くらいに降りたっていってなかったか?」
と、言いながらコーヒーを啜る
「じゃあ...なんで辞めたんですか?」
グレーマンは、コップの中に写った自分を眺めながらしばらく考えて
「...それは...まぁ、色々あったんだ」
「...」
しばらくの沈黙が流れる。
「...おっと、これは珍しい客人が来た」
グレーマンが立ち、前へと進む。
暗闇から現れたのはゴブリン2体。
「普段だったら、あまり見かけない奴なんだが、今夜はくる気がしてな...だから起きてたんだ」
「長年の感ってやつですか?」
「そういうことかもな(笑)」
余裕そうにするグレーマン。
「そんな余裕そうで、大丈夫なんですか?」
「俺を誰だと思っている?俺はな、こう見えても...」
と、背中を晒しているところにゴブリンが飛びかかる。
「グレーマンさん!後ろ!」
次の瞬間、ゴブリンは投げ飛ばされていた
片手に大剣を持っているにも関わらず、華麗な身のこなしでゴブリンにダメージを与えていく。
そして、2体を逃してから振り向いて、
「ま、こんなもんか」
と、言いながら戻ってきた
「...私の必要はなかったようですね」
<次の日>
朝食を簡易的に済ませて、再び出発した2人
「そういえば、昨日の夜にゴブリンを逃したんですけど、いいんですか?」
「いいんだ。むしろ逃さないといけない。あいつらから出る素材がそこそこの値段で売れていたんだ。しかも、昔は畑とかも荒らして害悪極まりなかった。だから乱獲されたんだ。その結果、かなり個体数を減らして狩ってはいけないって決まっちまったんだ」
「それって、いつからなんですか?」
「ここ最近の話。12、3年前だったからか...」
「そんなことがあるんですね...」
歩きながら話していたが、どこか慣れない様子
「...そろそろ着くぞ」
日が丁度真上に来たとき、最初に目指していた場所、ナウルカイロの元領地の範囲内であった街、ギーズに着いた。
「なんか美味しそうな匂いがしてきましたよ」
「貿易の中継地点だから、馬主の休憩所でもある。だからこんなにも食堂がある」
「ここの料理って美味しいの?」
「体力が欲しい連中がくるところだから、味が濃いものが多い。...どうした?腹減ったのか?」
「...はい」
ウラジミールがお腹をさすりながら言ってきた
「そうか...丁度昼時だし、食べにいくか」
〜〜〜
「そんで、お前はなんでナウルカイロに来たかったんだ?」
「いや、なんとなく...ですかね?」
目についた店で食事をとりながら、話をしていく。
「なんとなくかぁ...」
「感覚的にです。グレーマンさんもそんなことありません?」
「あるが...それだと、どこに行けばいいか...」
テーブルに肘を打ち、手で頭を支えるようにして考えていた
「...とにかくだ、まずはボワーナ共和国に行ってから考えるか」
そう言い、料理を食べ切って店から離れた。
「また出発します?」
店を出てからウラジミールが聞いてきた
「いや、今日は泊まれる宿を探す」
道の建物を見ながら探す
「流石に、1日中歩くのは疲れますからね」
後ろについていくウラジミール
しかし、日は、まだ傾き始めたばかり。
日が暮れるまで少なくとも5時間はある。
「ただ、まだ宿を確保するにしても日が浅すぎる。何かしらやれるといいんだが」
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