2-2
翌日、ビジネスホテルを出た私は、元会社の先輩で数少ない友人の一人だった田丸先輩との待ち合わせ場所に向かった。
スマホに"話したいことがある"とメールがきていたんだ。
多分・・・満さんの件だ。
「バカ恵利!!!」
待ち合わせ場所に着いて早々に私は田丸先輩に頬を叩かれた。
あまり人気のない公園ではあったけど周りに居た人達は驚いて私達を見ている。
「せん・・・ぱい?」
「言ったじゃない!横田君の事を頼むわよって。
あなたが横田君の事を好きだって言うから私は・・・」
「・・・ごめんなさい」
私と池田さんの事・・・もう知ってるんだ。
満さんから話を聞いたのかな?先輩とは仲が良かったし。
それに・・・先輩は満さんのことが好きだったんだ。
それなのに私が好きだって言ったから遠慮して・・・私先輩の気持ちに気付いていたのに知らないふりして・・・結婚したときは祝福してくれたけど先輩に対しても酷いことしてたんだよね。
叩かれて当然だ。
「否定もしないんだ・・・」
「・・・後悔はしてるけど。浮気してたのは事実だから」
そう。悪いのはすべて私。
満さんは何も悪くない。
「今日ね。横田君会社休んだのよ」
「え?」
「彼、今まであんまり休み取ったことなかったし心配になって電話したの。
何でも無い。体調が悪いだけだって最初は言ってたんだけど、しつこく聞いたら・・・あなたと池田君の事を話してくれたわ。精神的に大分弱ってるみたい。
あんな辛そうな声初めて聞いたわ」
そうだよね。私本当に酷いことしちゃったんだよね。
「どうするつもりなの?」
「え?」
「離婚・・・するの?」
離婚。
そうだよね別れたくないけど・・・無理だよね。
満さん・・・許してくれないよね。
あんな場面見られちゃったら・・・そう思ったら急に悲しくなって涙が出てきた。
「泣いたって駄目よ・・・自業自得。
自分がやったことを思い返して少し反省しなさい。
横田君のケアは出来る限り私の方でもするわ」
「・・・はい。よろしくお願いします」
「今は無理だと思うけど。落ち着いたらちゃんと謝るのよ」
「・・・はい」
そう言いながら先輩は私にハンカチを差し出してくれた。
先輩なら満君を任せられる。
私と違ってちゃんとしてるから。
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先輩と別れた私はマンションに戻ることも出来ず実家へと向かった。
でも、家に帰って早々に両親から激怒された。
お父さんからは初めて頬を叩かれたし、お母さんは・・・泣いていた。
最初、満さんがお父さんたちに報告したのかと思ったけど、たまたまお父さんが私に会うつもりでマンションに行ったらしくて家に居た満さんに事情を聞いたらしい。
だいぶ憔悴して顔色も悪かったみたいだ。
そして実家で数日を過ごした私はお父さんに連れられて満さんの待つマンションへと向かった。
当初、会いたくないと断られたみたいだけどお父さんが説得してくれたんだ。
数日ぶりのマンション。
私と満さんの幸せが詰まっていた場所だ。
ただ、今は家に居るのが辛い。
久しぶりにあった満さんは少しやつれた感じがした。
会社もまだ休んでるらしく目の下にクマもあるし、あんまり寝れて無いのかもしれない。食事も出来てないのかな。
それに・・・いつも優しい目で私を見てくれていた満さんも今は冷たい目で私を見ている。
「満君。今回の件は本当に申し訳なかった。娘とは会いたくないだろうし謝罪も受け入れがたいとは思ったが、けじめとして本人から謝らせてくれ」
「・・・」
相変わらず満さんの私を見る目は冷たい。
でもちゃんと謝らないと。
先輩にも約束したんだ。
お父さんに促された私は満さんの前に進み謝罪の言葉を口にした。
「許してもらえるとは思っていません。
それだけ酷いことをしてしまいました。
満さんは私にたくさんの愛情をくれたのに私は・・・。
本当にごめんなさい」
「・・・・・」
最後の方は涙で声になってなかったかもしれない。
会えるのはこれが最後かもしれないけど、満さんは私に声を掛けるでもなく何も言わずにただ見ていた。
許してもらえるとは思っていなかったけど・・・やっぱり悲しいよ。
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