2-1
<横田 恵利視点>
私は・・・取り返しのつかないことをしてしまった。
あれから1ヶ月。
満さんとは正式に離婚した。
何でもお願いを聞いてくれて優しかった両親も今回は私を庇ってはくれなかった。
当然だ。
私が満さんを裏切って・・・幸せだった生活を壊してしまったんだから。
満さんと別れてからは実家に戻ったけど、両親との会話は少なく私も何もやる気が起きず部屋に籠もることが多くなってしまった。
こんなんじゃ駄目だってことはわかってるんだけど。
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池田さんとは入社した直後の新人歓迎会で知り合った。
声をかけられ優しくされて・・・。
社会人1年目でカッコいい会社の上司に優しく声をかけたれて浮かれていたのかもしれないけど深い関係になるまでにそれほどの時間はかからなかった。
ただ、2人が付き合っていることは周囲には内緒にしていた。
当時は池田さんも独身で私も彼氏は居なかったから問題はなかったんだけど、池田さんは女子社員に人気があったしあまり騒ぎにしたくないとのことだった。
私は真剣なお付き合いだと思っていたから公にしても良いんじゃないかと思っていたけど"二人の秘密"という響きが気に入って受け入れてしまっていた。
でも、付き合い始めて約1年で彼は取引先の社長の娘さんと結婚して会社を辞めていってしまった。
私には"出資してもらうため仕方なく・・・"とか嫌々結婚するような事を言っていたけど何となく嘘だとわかった。
私は捨てられたんだ。
あんなに私のことを好きだって言ってくれてたのに・・・。
凄く落ち込んだ。
そして、私も会社を辞めようかと悩んでいた時期に満さんと知り合った。
と言っても同じ会社だし彼のこと自体は以前から知っていた。
池田さんの同期の人で、よく"お人好し"とか"仕事が出来ない"とか悪口を言っていたから。
でも、知り合って話をするようになってわかった。
池田さんの評価はデタラメだったと。
満さんは、何をするのにも一生懸命で時間は掛かってもきちんと確実な仕事を行っていた。その成果は見る人はきちんと見ていたと思う。
それに自分が忙しいのに人が困ってると助けてあげたりもしていた。
確かにお人好しかもしれないけど自分本意な池田さんとは真逆でむしろ好感が持てたし、何よりそんな彼の周りには仲間も多く池田さんに無かった人望が彼にはあった。
だから、自分には無いものを持っていたから池田さんは満さんのことを嫌っていたのかもしれない。
そんな満さんに私もだんだん惹かれて・・・一緒にいる時間も増えて、いつしか私から告白して付き合うようになった。
満さんは、あまり女性に慣れた感じは無かったけど私のことを大切にしてくれているのはよくわかった。
それに池田さんのときとは異なり周囲にも隠したりもせずオープンに私とお付き合いをしてくれた
一緒にお昼を食べに行ったり休みの日はデートしたりと幸せな日々を過ごせた。
そして結婚。
本当はもう少しお付き合いしてからとも思っていたんだけど、独立した池田さんが取引先の1つとして会社に出入りするようになったから会社を離れたかったんだ。
結婚退職し、経理事務の経験を活かし派遣事務として新しい仕事も始めた。
結婚してからも満さんは優しくてすごく幸せだった。
でも、そんな結婚生活の中、私は仕事先で池田さんと再会してしまった。
正直彼のことは忘れたかったし関わりたく無かったけど、仕事上の打ち合わせなど会わざるを得なかった。
そして、嫌々ながらも会っているうちに夫婦関係が上手く言ってないとかで相談されている様になり"やっぱり恵利が一番だ"、"今の妻は自分のことばかりの我儘で"と言葉巧みに復縁を迫られるようになった。
当然私も拒んでは居たけど、私の相手が満さんだと知った彼は"自分との関係をバラす"と脅しをかけるようになってきた。
そしてあの日。
今までは外で会っていたんだけど"近くにいるから"と言われて半ば強引に家に池田を入れることになった。
あの時期満さんは毎日仕事で帰りが遅かったから大丈夫だと思っていた。
そして・・・
満さんに池田さんとの関係を知られた直後は、気が動転してすぐに状況が理解できなかった。でも、満さんから軽蔑するような目で見られて”出ていけ!”と言われたとき全てを理解し後悔の念に苛まれた。
家を追い出されてから満さんの携帯に電話やメールを送ったけど出てくれなかった。
当たり前か。
泣き崩れる私を連れた池田さんは、駅前のビジネスホテルに私を泊まらせると手続きだけして自宅へと帰っていった。
私は家を追い出されたのにあいつには帰るべき家庭がある。
夫婦仲が本当に上手くいってなかったというのも怪しいところだ。
・・・人の家庭を壊しておきながら自分だけ。
満さんのことも"今は興奮してるだけだから落ち着けば許してくれるさ"とか無責任なセリフ。
そんな事あるわけない。あれだけのことをしたんだ。
いくら満さんが優しいからって私のことを許してくれるはずがない。
でも、自業自得なんだ。
きちんと池田さんを拒めばよかったんだから。
満さんは、私が池田さんと昔付き合っていたからって拒みはしなかったはずだ。
それなのに・・・私は脅されたことを言い訳に満さんを裏切ったんだ。
自分のことを何よりも大切にしてくれていた満さんを・・・私は本当に馬鹿だ。
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