第3話妹②

「自宅キットで検査陰性だった。」

「良かったね。」

「水曜ぐらいにPCR行こうかと思ってる。」

「そうなんだね。」

 無症状だという妹は出歩いて食べ物だけ買うのも申し訳ないと言いながら電話を切った。

「家族がいたら地獄だったと思う。」

 と私にとって、いつもの毒を吐きながら。

「そんなに出歩いてないんでしょ。」

「もちろん。」

「仕事できないね。」

「うつした責任で生活費を出してくれるって。」

「そう。」

 それ以上聞くことはない。

 お金の話は生々しすぎる。

 母に大丈夫そうだと告げると、そうと短くこたえ、株の話になる。

 金金金

 私たち家族はお金の話でしかつながれない。

 米国の利上げで日経平均が下がっているため、特定株だけがあげている。

 恐怖指数は落ち着いているがこれから一段底を目指していくのだろう。

 色々話していて母がつぶやく。

「あんたもやっぱり山師だね。」

 祖父が一山あてたように母も、そして私もそうなんだろう。

 妹の話など、10のうちの1の重要さもないのだ。


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