不安と安心

 

 そう言えば私が仕えていた公爵家の令嬢はレイア様に敵対した結果、国から追い出されることになった訳です。それをしたのは国王ではありますがレイア様にとっても良い印象はないでしょう。


 ではその方に仕えていた私に対する印象はどうでしょう。……あまり良い気はしませんね。基本的に仕えているメイドや使用人はお付きの方に同調するものです。あの事件の時もあの方に付いていた使用人たちの大半は処分されました。まあ、大多数は労役を与えられた程度ではありましたけれど。

 私だって罪状特になしでこの有様なのです。レイア様が私と言いますか、あのかたに仕えていたメイドに対して良い印象を持っているとは思えません。


「どうしたんだ? いきなり顔を青くして」

「あ、いえ、何でもないです」

「そうとは思えないけど」

「良いんです」

「……そうか」


 レイア様は敵対した方には容赦をかけない方ですからね、この話はすぐにでも断った方がいいでしょうか? 下手に紹介されたりしてしまえば逃げ出せなくなります。


「それで仕事についてだけど、レイア様が関わっていてね」

「そ……そうですか」


 レイア様、ガッツリこの仕事に関わっているようです。これはやはり逃げた方がいいかもしれません。


「本当に大丈夫か? かなり顔色が悪いように見えるが……」

「い…あ、すいません。ちょっとですね、その話は無かったことに」

「え? 何だいきなり、さっきまでそれなりに乗り気だったのにどうしたんだ?」

「えっと、レイア様関係となると……」

「は? どういう……、もしかしてレイア様に恨まれているとかそんな感じに思われていると考えているのか?」

「……はい」


 私が話を拒否しようとした理由を察してハレスレイさんの表情が心配から呆れへ変わっていきました。


「そんなことなら気にしないでも問題ないだろう。もともとレイア様は敵対した相手には手加減しない方だったけれど、別にその取り巻きには手を出すような方では無かったしな。庇ったり余計に攻撃したりしたら別だったけど」

「そうですけれど」

「そもそも今回の仕事、というか招集にはあの元公爵家に仕えていた騎士もいるし、問題ないと思うぞ?」

「え? それは、本当ですか?」

「ああ。招集された中には俺も含まれてるし、名簿の方も確認したから確実だな」


 私と同じような立場の騎士でも雇ってもらえるということですか。職が違いますので一概に同じように対応してもらえるとは思えませんが、これは希が生まれましたね。


「すいません。でしたら、話を詳しく聞かせていただけると助かります」


 そうして、私はハレスレイさんから仕事の話を聞き、選択肢としては十分だと判断し、後日候補者の選定会場へ向かうことになりました。

 

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