第46話 ちりも積もれば山となる。

「レイナ?」


「い、いえ! 何でもありません」


(どうしたんだろう、私…)


 なぜか見つめ合って赤面してしまったレイナ。

レイナは否定し、いつもの無表情の顔に戻るが、薄暗い部屋でもわかるぐらいに耳が赤い。

手で顔を覆い冷たい手で、火照った顔を冷やそうとしている。


(あの時からだ、剣也君といるとポカポカする)


 レイナはよくわからない。

あの時、死なないと手を握ってくれたとき。

一緒に死ぬことさえ覚悟して背中を合わせたときからだ。


 剣也といると、温かい気分になる。

この世に独りぼっちだと思ってた自分の世界に悠然と、そして自然と彼が隣にいる。

レイナの世界で、剣也の存在が大きくなっていた。


「と、とりあえず計画でも立てようかなー」


(嬉しい? レイナが? どうしたんだろう…)


 恥ずかしさから話を逸らそうと剣也もバイトつまり錬金の計画を立てようとした。


「あ、わ、私も手伝えることがあればいってください!」


 レイナもそれに便乗し、何か手伝えることがあればと宣言する。


「あ、じゃ、じゃあ段ボールの中にどれぐらい兵士の小手が入っているのか数えてくれる? 全体の数を把握したくて」


「り、了解しました!」


 そしてレイナは走って行ってしまった。

お互いしどろもどろになってぎこちない会話だった。

しかし一旦離れることで少しは落ち着くだろう。


(よし、とりあえず計画を立てよう)


 剣也は、机に置かれた紙とペンをもって計算を始めた。

自分が今どれだけ錬金できて、どれだけの作業ができるかを考えるために。


(えーっと、進化したおかげでEランク、つまり兵士シリーズの錬金の回数制限はかからないと)


 剣也の錬金スキルはレベルがあがり、Aランクまで錬金できる。

それに加えて最低ランクの錬金の回数制限がなくなっている。


(次に、ステータス錬金で知力に全振りしたとき何回錬金できるのかか)


「ステータス!」



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

名前:御剣剣也

DP:42300pt

職業:錬金術師

・錬金Lv13:次のレベルまで100万pt

(ランクAの武器を日に10回錬金できる:知力10に付き+1回)

(ランクEの武器を無限に錬金できる)

(装備品を錬金の種に変更可能 錬金の種:同ランクの錬金に使用できる種)


・ステータス錬金LvMAX

(現状のステータスを自由に振り分けられる。念じるだけで変更可能)



◆装備品

武器:【斬破刀Lv1】

頭 :【精霊の冠Lv1】

胴 :【黒龍の羽衣Lv1】

手 :【帝の小手Lv1】

足 :【帝の具足Lv1】

アクセサリー:【ゴブリンキングの首飾りLv1】


◆ステータス

攻撃力:0(+1400)▼

防御力:0(+1000) ▼

素早さ:0(+400) ▼

知 力:0(+500) ▼

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


(ふむ、合計ステータス値は1400+1000+400+500で3300。すべて知力に回せば一日330回+10回の340回錬金できるのか)


「なんかいろいろできるようになって混乱してきたな。そう言えばドタバタしてたけど、そもそも錬金の種って何なんだ?」


 剣也がうーんと唸りながら思案していると、レイナが段ボールを抱えてこちらへ歩いてくる。


「剣也君、数えてきました。ひと箱大体10個ぐらい入ってますね」


 そういってレイナは、一つの段ボールを僕の元まで持ってきた。

そして僕も中をのぞくと、汚れた兵士の小手や具足などがセットで適当に入れられている。

確かに10個入っているようだ。


「それと箱ですが、一つの棚に20個ほど。それが奥まで続いて何列もあるので概算ですが箱は一万個ほどはありそうです」


 巨大な倉庫に段ボールの山。

確かに万を超えてそうだ。


(そんなにあるのか…数は気にしないで見積もっていいかな)


 ダンジョンが現れて20年。

兵士シリーズほど出土した装備品はないだろう。

それゆえにすでに飽和しており、中古や傷物には価値がない。


 いまではクリスマスに子供に兵士シリーズをプレゼントするのが習わしとなっていることから需要はあるのだが、新品のみだ。

1000円ほどを中古品で子供にプレゼントする親はいないだろう。いたらごめん。


「ありがとうレイナ。よし、じゃあ一つだけ錬金の種ってのを作ってみるか」


(一つぐらい使っちゃってもいいよね…好きにしてくれって言ってたし)


 そして剣也は、装備品を手に持った。

するといつも錬金が頭に浮かぶのに、今日は錬金と錬金の種の二つが頭に浮かぶ。


(よし! 錬金の種に変換!)


 変換♪ 兵士の小手→錬金の種(E)


 そして現れたのは、白色の球、というか丸い塊?

重くはない、とはいえ軽くもない。

金属でもないし、かといってやわらかいわけでもない。

何か不思議で、白の丸い塊に、兵士の小手は変形した。


(これが錬金の種か…白色だけど、他のランクだとまた色が変わるのかな?)


 そして剣也は、兵士の小手から作ったその丸い塊と兵士の具足の錬金を試みる。


(多分説明の通りなら、この塊はEランクのどの装備とも錬金できるってことだよな…)


 レベルアップ♪ 兵士の具足Lv2


 いつもの軽快な音共に錬金は成功した。

つまりは、錬金の種とは同じランクの装備なら錬金できるようにするためのものらしい。

確かにBランク以上の装備は、ユニーク名も多いため同じ装備を10個集めるのは難しいだろう。


「じゃあ、こいつを錬金の種にすると?」


 すると白い球が二つになった。

つまりLv2のものを種に変換すると二つ種ができるわけか。


「剣也君…それはなにをしているんですか?」


「あぁ、僕の職業は錬金術師でね。装備を合体させたりしてレベルを上げれるんだ」


 レイナが興味深そうな顔で、その球に顔を近づける。

指でつんつんと触ってみたり、なでたりしている。


「すごい職業ですね…」


「あぁ、この力のおかげで何度も助けられたよ、じゃあレイナゆっくりでいいから段ボールを何個か持ってきて、中の物を広げてくれる?」


「わかりました」


 そしてレイナはまた段ボールを取りに行った。


(まてよ…? ステータス錬金があるんだ。精霊の冠と、黒龍の羽衣は進化可能だし先に進化させた方が錬金回数は増えるんじゃないか?)


 いまだBランク装備の中で、帝シリーズと斬破刀は進化できない。

しかし精霊の冠は★2、黒龍の羽衣は★4なのでまだ進化が可能だ。

兵士シリーズがこれほどあるので、錬金を繰り返せばBランクの錬金の種を作ることができるはず。


「よし! 先にこっちを進化させる計画を立てるか。今日中にできるかもしれない!」


 そして剣也は紙に計算しだした。どうすればこの二つを進化できるのかを。


 そして浅はかな自分の考えに気づく。



「えーっと錬金回数は……18000回!!??」




あとがき

これから大体12時ごろに上げていこうと思います。

カクヨムも予約投稿あればいいんですけどね。


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