第10話 酒場にて

 厨房から帰ると3人は既に出来上がっていた。

 ピンクの小人さんが3人に火照りという板を貼る。


 ジュリアにピンクの小人さんがピンクの白粉を塗る。

 周りの男がジュリアを見つめ始めた。


「ジュリアの奴、色っぽいな。これで性格があんなじゃなきゃな」

「違いない」


 そう男達が話すのが聞こえた。


「ドワール、聞いているのょ。わたひゃはあんたにゃんか認めないからね」


 確かにジュリアが色っぽい。

 俺の中からピンクの小人さんが、恋と書かれた矢を取り出して、俺の心臓を射抜こうとしている。


「辞めろ」


 俺は矢を取り上げると投げた。

 矢はジュリアの胸に当たった。


「ありゅ、ドワーリゅを見ると心臓がバクバク言ってりゅ。飲み過ぎたみたいにゃのら」

「ジュリアの奴、ドワールに惚れたね」

「ハンナさんもそう思いますぅ」


 不味った。


「ドワールは幾つなんだい?」

「17歳だよ」

「見えない。もっとおっさんだと思った」


 エマは失礼な奴だな。


「じゃあ、ジュリアと似合いだね」


 ジュリアはというと酔いつぶれていた。

 ピンクの小人さんに頭を揺すられている。

 俺は棒付きキャンディを出すとピンクの小人さんに渡した。

 ジュリアの頭を揺するの手が止る。


「胸がくるしぃ、ズキズキと痛むのにゃ」


 ジュリアが起きた。


「ジュリアは寝てな。後で運んでやるから」

「はい、ししょーう」


 ジュリアは敬礼するとテーブルに突っ伏した。


「ドワール、あんた師匠が居ないんだって」

「ええ」

「私がなってあげるわ」


 どうなんだろう。

 冒険者として暮らすのも悪くないな。

 すくなくともマッサージ師よりは良い。

 ハンナさんに色々と教えてもらえればありがたい。


「よろしくお願いします」

「そうこなくっちゃ。言っとくけど、ジュリアの事は責任を持ちな。いい加減な事をしたら許さないから」


 仕方ないな俺がやった事だ。

 責任を持とう。


「はい、出来る限りの事をします」

「よろしい」

「これでジュリアも恋人が出来たのか。先を越されたな」

「エマも私の弟子で良かったら紹介するわよ」

「遠慮しておきます。ハンナさんに紹介されたら、別れたくなっても別れづらいじゃないですか」


「まあね。いい加減な理由じゃね」


 もしかして、俺って選択を間違った。

 ピンクの小人さんがまあまあと俺を慰める。

 元はと言えばお前のせいだ。

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