第8話 解体にて

「オーエス! オーエス! 後少しだ! 頑張れ!」

「精霊を励ましたって、精霊は聞いてないわよ」

「うるさいな。やりたいからやっている。なあみんな、掛け声で力が出るよな」

『でるでる』

『うっす』

『おす』

『でる』


 小人さんの声をジュリアにも聞かせてやりたい。

 やりたいが無理だろうな。


「こりゃ大物だな」

「ハンナのパーティが討伐したのか。流石だな」


 沿道に人が集まってきた。

 門にはモンスターが入らないので門の前の広場みたいなところで解体ショーが始まった。

 銀色の小人さんが包丁に糊を塗る。

 馬鹿でかい包丁が途中で止った。


「エマ、魔力だ」

「もう便利屋扱いして」


 飴を銀色の小人さんに配る。

 銀色の小人さんは砥石で包丁を研ぎ始めた。

 包丁は再び進み始める。


「鋭刃の魔法みたいな事が出来るのね」

「出来るみたいだ。俺の魔力じゃないけどな」

「魔力放出なんて、ちょっと訓練すれば、出来るようになるわよ。次からはあんたの魔力でやりなさい」


 いっちょやってみますか。

 俺の中にいるピンクの小人さんに話し掛ける。

 飴がほしいと。

 ピンクの小人さんが現れたが持っている飴が違う。

 飴玉ではなく、でかい棒付きキャンディだ。

 どんな違いがあるんだろう。

 俺は銀色の小人さんに棒付きキャンディを配った。

 小人さんは片手が塞がっているので作業が出来ない。

 包丁の動きが止まった。


「あれれー。魔法が切れましたよ」

「今はパワーを溜めているんだ」

「そうなの」


「早く食えよ」


 小人さんを急かす。

 小人さんは棒付きキャンディをかみ砕くと食べ終わった。

 小人さんが腕まくりしてハチマキをして包丁砥ぎ始める。

 物凄い勢いで肉が切れていく。


「ほら見ろ。パワーを溜めていたんだ」

「パワーを溜める隙が出来るなんて、使えない魔法ね」

「良いんだよ。俺は満足している」


 解体は終わり、銀色の小人さんは物欲しげな表情をした。

 仕方ないな。

 今回だけだぞ。


 俺は銀色の小人さんに、追加で棒付きキャンディを配った。

 にっこり微笑む銀色の小人さん。

 ここまで運んだ黒い小人さんは指を咥えてよだれを垂らしている。

 すまん、気が利かなかった。

 俺は黒い小人さん達にも棒付きキャンディを配った。


「ほら、ドワール。分け前の金貨17枚よ」


 ジュリアがそう言って小袋を投げて来た。

 受け取ると緑色の小人さんが『ちゃりん』と言って鐘を鳴らした。


「なんか悪い気がするな」

「私達に遠慮しているの?」

「いいや。お前らのいう所の精霊にさ」

「そんなの無意味よ。気兼ねしたって結果は変わらないわよ」

「そうかな。なんか変わるような気がするんだ」

「その考えは分からないわ」


 小人さん達がジュリアに向かって中指を立てる。


『ぶー』


 ブーイングが起こった。

 全くジュリアの精霊術がいまいちなのは、ここら辺に原因がありそうだ。


 父さん母さん、俺は街でなんとか、やれそうだよ。

 弟達や妹達よ、次に村に帰るときは土産を持って帰れそうだ。

 帰ったら小人さんの話をしてやろう。

 きっと驚くに違いない。

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 コンテストの望みは無いんですが、カクヨムWeb小説短編賞2021応募中の表示が消えるまでは続きを投稿しません。

 一万字を超えると募集要項違反になります。

 ですので、一度完結にしておきます。

 続きは気が向いたら書きます。


追記

 改訂して出直す事にしました。

 未完のまま完結です。

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