第7話 戦闘にて

 俺達は今、小さい建物ぐらいはある猪と対峙してる。

 俗に言うモンスターというやつだ。


 モンスターは悪意の塊で、人を襲う事でしか生きていけないと聞かされている。

 生き物を殺すのは気が引けるがモンスターは別だ。

 その証拠にモンスターを茶色い小人さん達は怖がっている。


「いくわよ」


 ハンナが戦闘開始の号令を掛ける。

 ハンナの後ろにピンクの小人さんが『火の精霊集まれ』の立札を掲げた。

 赤い小人さん達が少数集まった。

 『そことそことそこ、ぼやぼやしない』とハンナの後ろにピンクの小人さんがその立札を上げた。

 集まりの悪かった赤い小人さんが大人数になった。


 『行け』と立札が。

 赤い小人の集団が一斉にモンスターに向かって走り出した。

 赤い布をヒラヒラさせているのは言わずもがなだ。


 モンスターに集団はぶつかり、モンスターはプギィと情けない声を上げた。


 ジュリアは小人さんを集めたが、小人さんの選別が上手くできないようだ。

 エマも関係ない小人さんに飴を配っている。

 俺はジュリアが集めた小人さんの集団を、赤い小人さんだけにしてやった。


「エマはなんの魔法を使うつもりだ」

「光の刃」


 光の刃という事は白い小人さんだけにすれば良いんだな。

 俺はエマの飴を白い小人さんだけが受け取れるようにしてやった。


 二人の攻撃が完成する。

 赤い小人さんの集団はモンスターに体当たりした。

 集団の規模はハンナより大きい。

 モンスターは後ずさった。


 白い小人さんが手を繋いで一直線に並ぶ。

 小人さんが走り始めて弧を描いた。

 モンスターの首筋から大量のピンクの小人さんが出てきて逃げ出す。

 最後に紫色の小人さんが出て来た。

 紫色の小人さんが草に触れると草は枯れていく。

 物騒な小人さんだな。

 紫色の小人さんは消えた。

 こんなのもいるのか。


「なんか絶好調かも」

「私も」


「二人とも気づいてないようね。ドワールがバフを掛けたのよ」

「ええ、そんな気配はなかったのに」

「魔法使いと精霊術師にバフを掛けられるなんて、信じられない」


「私なら出来るわよ」

「そりゃ師匠なら可能でしょう」

「だけど、私でもあのスピードでは、出来ないわ」


「持ち上げてくれるのはありがたいが、大した事はやってないから。エマ、魔力を放出してくれるか?」

「何で?」

「ご苦労様って労ってやりたい」

「まあいいわ。次も魔法が強力になるなら必要な投資ね」


 エマから出たピンクの小人が飴を持って現れたので、戦いに参加した小人さんに配ってやった。

 小人さん達はほっぺを膨らませ飴を舐めた。

 次も協力してくれるかと問うと小人さんはみんな頷いた。

 そして『えへへ』と笑った。


「ところでこのでかぶつはどうするんだ」

「魔法で持って行くに決まっているじゃない」

「いっちょ俺がやってみるか」


 黒い小人さん達を捕まえてロープを持って居るか訪ねた。

 こくんと頷いたので、モンスターの死骸に出して貰ったロープを掛ける。

 黒い小人さん達が力を込めて死骸を引き始めた。


「やればできるじゃない。これなら攻撃も可能ね」

「エマ、また魔力を頼む」

「もうしょうがないわね」


 俺は飴玉を黒い小人さん達に配って歩いた。

 引っ張る時に転がる小人さんが続出。


「おらよ、泣くんじゃない。さっき飴玉あげたろう」

『ぐすん』

「立ち上がれよ。埃、払ってやるから」


 転がる度に俺は起こして埃を払ってやった。

 なんとなく小人さんの扱いが分かってきたような気がする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る