第6話 森にて

 俺はなぜか森に居る。

 冒険者ギルドでジュリアに会ったのが運の尽き。

 人数が足りないとかで強引に連れて来られた。


 メンバーはジュリア。

 ジュリアの師匠のハンナ。

 助っ人魔法使いのエマ。

 それと俺。

 戦士が一人も居ない。

 戦士に何か含むところでもあるのかな。


「戦士が居ないんだが」

「あんなの役に立たないわ。そうですよね、師匠」

「ええ、精霊術で見つけ次第ズドン。これが一番効率が良い」

「魔法だって戦士なんかには引けは取らないです。光の刃を発動すれば戦士の何倍もの距離から切り刻めます」


 さいですか。

 森には茶色の小人さんが多い。


「ちょっと聞いてるの?」

「ジュリア、この男は精霊視を発動しているみたいだわ」

「師匠と同じ資質ですか?」

「ええ、さっきから視線を飛ばした先には精霊がいるもの」


「俺の能力は精霊視というのか?」

「精霊が光の玉に見えるのよね?」


 ハンナがそう尋ねてきた。

 あれっ、どうやら違うらしい。

 俺は腰に付けた火種が入った容器を開けた。

 赤い小人さんが現れ、小さい赤い布切れを手に持ってふうふうしてる。


「赤い布切れが見えるんですが」

「赤い布切れ? あなたは火の精霊が赤い布切れに見えるの?」

「いや、違う。いや、どうでも良いや」


「精霊視とはちょっと違うけど似たような能力みたいね」

「師匠と似たような能力だなんて生意気だわ」

「そろそろ、一休み、しない」


 エマは体力が無いようだ。

 森歩きに根を上げたみたいだな。


 休憩の準備をする。

 火種を乾いたこの葉に移す。

 その上に枝を積み上げた。

 赤い小人さんが活発に動き始める。

 枝を更に足すと分裂した。


 森の茶色の小人さんは動かないのが多い。

 だが、赤い小人さんが活発になるにつれ、近くにいた茶色の小人さんは恐れ慄いた表情を見せる。

 俺は安心させるために火の管理はしっかりするからと呟いて、茶色い小人さんの頭を撫でた。

 安心した表情になる茶色い小人さん。


「やっぱり精霊視だわ。でも精霊に触っているみたい。不思議な能力ね」


 ハンナは師匠をやるだけあって鋭いな。

 弟子の能力とか見抜かないといけないのだから、当たり前か。

 俺は水色の小人から水蒸気の綿を分けてもらって、絞って木の根元を濡らした。

 茶色の小人さんが笑顔になる。


「いとも容易く精霊術を使うのね。精霊を集めずに精霊術を使うなんて」

「俺の能力はどうでも良いでしょう。何か問題でも?」

「無いわ。でも見た事のないタイプだから、興味をそそられるわ」


 水色の小人さんが落ちて来た。

 樹の葉っぱから雫が垂れる。

 小人さんを受け止めそっと地面に置いた。

 小人さんは手に持って居た筆で地面に点を描いた。


 『えへへ』と笑う水色の小人さん。

 水色の小人さんは筆で地面の色んな場所に何度も点を描く。


 水色の小人さんはジュリアの体をよじ登り、ジュリアの頭にも点を打った。


「冷たい!」

「精霊の動きを捉えられないようでは、まだまだね」

「師匠、酷い」


 俺は水色の小人さんを抱き上げた。

 ジュリアの目の前に突き出すと小人さんはジュリアの頭に何度も筆を降ろした。


「ひゃっ、やったわね」


 ジュリアの後ろに出現したピンクの小人さんが『我が望みに答えよ』と書いた立札を掲げた。

 俺は立札を取ると文字を手で消して返してやった。


「おかしい、術が発動しない」

「私が代わりにやってやるわ。レイン」


 エマが雨の魔法を唱える。

 エマの背後にピンクの小人さんが現れ、他の小人さんに飴玉を配り始めた。

 俺は飴玉を強奪。

 涙目になる小人さんに良い子にしないとあげないと言った。

 列になって飴玉を受け取りに来る小人さん。


「おかしいわ。私の魔法も発動しない」

「こら、小雀共、ふざけるのもそれくらいにしておきなさい」

「はい」

「はーい」

「うっす」


 魔法の仕組みも大体分かった。

 魔力という飴玉で小人さんを動かすんだな。

 俺には出来そうにないけど、まあ良いや。

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