第4話 冒険者ギルドにて

 冒険者ギルドに入る。

 緑色の小人さんがカエルを手に『がやがや』と言いながら忙しそうに歩き回っている。


「マッサージは要らんかぁ? マッサージは?」

「おう、いくらだ」

「今日は初日なんで、銅貨10枚頂きます」

「安いな。やってくれ」


 しがみついている黒い小人さんをはがす。

 腰に沢山しがみついていたので念入りにはがす。

 遊んでおいで。


「おう、少しやってもらっただけだが、軽くなった。ありがとな」

「どう致しまして」


「喧嘩だあ」


 声が上がった。

 見ると黒い服に黒い丈の長いスカートを穿いた女が、男と睨み合っていた。


 女は何やら気合をいれると、ピンク色小人さんが『みんな集まって』と書かれた立札を見せた。

 色とりどりの小人さんが集まって来る。

 ピンクの小人さんが『整列お願いします』と書かれた立札を上げる。


 小人さん達は言う事を聞かない。

 今度は『炎をお願い』と書いた立札を上げた。

 赤い小人さんの幾人かが赤い布を出して、『めらめら』言いながら睨んでいる男に近づく。


 赤い布はいけないような気がする。

 俺は赤い小人さんから布を取り上げた。

 睨んでた男は青くなって逃げ出した。


「あれっ、私のファイヤーボールはどこ? ちょっとあなた邪魔しないでよ。見たところ同業者みたいだけど、同じ精霊術師なのに敵に回るの?」

「あの力で人を傷つけるのは違う気がしたんだ」

「説教? 説教なら聞きたくないわ。精霊術師の商売は舐められたら終わりなのよ。あんたの師匠は誰?」


 何が何だか分からない。


「師匠などいない」

「天然? 天然の精霊術師に初めて会ったわ」

「俺って精霊術師なのか?」


「精霊を操ったでしょ」

「そうなのか?」

「何時からその力を使えるようになったのよ?」

「昨日からだな」

「はっ、はったりね。ファイヤーボールをかき消すのは、高等技術だわ。二日目の精霊術師とは、思えない」

「聞きたいが、精霊術師って何?」

「精霊を感じてお願い出来る者をそう呼ぶわ」


 さっき布を取り上げた赤い小人がつんつんと俺を突く。

 悪い悪い。

 会話に夢中で布を返してなかった。


 赤い小人さんに布を返すと、小人さんは布を一度振ってからポケットにしまった。


「今のは何? 消えていた私のファイヤーボールが、一瞬現れたと思ったら、燃え上って消えた」

「知らないよ、そんな事」

「もしかしてあんた、魔法使いなの」


「魔法使いって何?」

「魔法使いは、精霊を感じる事が出来ないの。それなんで、魔力を糧に術を行使するわ」

「俺はどちらも違うようだ」


「じゃ、なんなのよ!」

「分からない。分からないがこの力は不快じゃない」

「そうなの。私、ジュリアよ。縁があったらまた会いましょ」

「俺はドワール」

「そう。覚えておくわ」


 ジュリアは小人さんを引き連れて去って行った。

 俺が何なのかは別に良いだろう。

 不都合がある訳じゃないしな。


 酒場を見るとピンクの小人さん達が、酔った男達の頭を揺すっている。

 頭を小人さんにぽかぽかと殴られている男もいる。

 小人さんて見ていて飽きないな。


「酔い覚ましにマッサージどうですかぁ!」

「おう、頭にガンガンくらぁ。覚ませるものならやってみな」


 男は銀貨を出した。

 太っ腹だな。

 ピンクの小人さんがハンマーで男の頭を叩いている。

 俺はそっと小人さんをテーブルから降ろした。


「おっ、すっきりしたぜ。よし、飲み直そう。ありがとな」

「どう致しまして」

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