第3話 街にて

 街に入った。

 空を見上げると、緑色の小人さんが人間タワーを作っている。

 塔の最上部では鳥を支えていた。

 鳥が羽ばたくと一番下にいる緑色の小人さんが『ばたばた』と言って座布団を叩く。

 それを合図にまた一人追加され塔が積み上がって高さが上がる。

 鳥が羽ばたきを辞めると緑色の小人さんの塔はぐらついて一人落ちて来た。

 塔の高さが低くなり、鳥も低くなる。


 緑色の小人さんの塔はぐらついて危なっかしい事と言ったら。

 そう思っているうちに三人いっぺんに落ちて来た。

 鳥が失速する。


 鳥は咥えていた木の実を落とした。

 木の実は黒い小人さんの手に握られふわりと落ちて来る。

 黒い小人さんは地面の着地を失敗してコロコロと転がる。

 手に持った木の実も明後日の方向に行ってしまった。


 洗濯物を日なたに干す主婦がいる。

 洗濯物に白い小人さんのヒールが突き刺さる。

 白い小人さんが水蒸気と書かれた綿を持って去って行く。


 日なたに洗濯物を干すと痛むのか。

 一つ勉強になったな。


「ゴホゴホ」


 咳をしている人がいる。

 灰色の小人さん達が現れ駆け回る。

 何人かの人達に灰色の小人さんが触れて消えて行く。


 そして、白い小人さんと灰色の小人さんが喧嘩していた。

 短い腕でぽかぽかと殴り合うのはどこか見ていておかしい。

 喧嘩は白い小人さんの勝利で終わったようだ。


 宿を取る事にした。

 宿に入ると灰色の小人さんが沢山いる。

 この小人さんは邪魔だな。


 灰色の小人さんを何人か表に出したが、いくらでもいる。

 表に出した灰色の小人さんは白い小人さんと喧嘩してた。


 この宿は駄目だ。

 別の宿に行こう。


 隣の宿に入った。

 うん、灰色の小人さんはいない。

 宿はこうでなくっちゃ。


「いらっしゃい」

「とりあえず一泊したい」

「あいよ。銀貨二枚だよ」


 俺はカウンターに銀貨二枚を置いた。

 銀貨が重なり、緑色の小人さんが『ちゃりん』と言って小さい鐘を鳴らした。


 見ると宿の従業員には黒い小人さんが沢山しがみついてた。


「よごれがついているよ。払ってあげる」


 従業員を叩くふりをして黒い小人さんをはがす。

 遊んでおいで。


「なんだか肩こりが治ったみたい。あんた治癒師かい?」

「そんな大層な事はできないよ」

「そうかい。気のせいかね」


 マッサージ師として食っていく事が出来そうだ。

 だが、店を出すには金がいる。

 金を恵んでくれる小人さんが居ないものだろうか。

 冒険者ギルドで飲んだくれている男達をマッサージしてみるか。

 これなら店舗はいらない。

 取り柄のない俺だがなんとかやっていけそうだ。


 俺は希望を胸に宿を出て冒険者ギルドに向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る