第2話 車上にて

 朝日が眩しい。

 白い小人さんが、目にかぼちゃのランタンの光を当てて来る。

 俺はそっとかぼちゃのランタンに手ぬぐいを掛けた。

 眩しくなくなった。

 白い小人さんは仕事が済んだとばかりに去って行く。


「ちょっと白い小人さん行かないで、手ぬぐいを返してよ」


 追いかけてやっと手ぬぐいを取り戻した。

 荷馬車を通りかかる。

 馬の足元では二人の緑色の小人さんが、お椀を持って『ぱかぱか』と言っていた。


「乗って行くかい」


 荷馬車を操っている男から声を掛けられた。


「悪いね」

「お互い様だ。道中が暇なんでね。話し相手になって欲しい」

「そのくらいなら、お安い御用だ」


 荷馬車の荷台を見ると山と積まれた芋がある。

 そして、その上には黒い小人さんが手に大きい石の分銅を持って沢山乗っていた。


「悪いな。お前ら降りてくれ。俺が乗るんじゃ狭くていけない」


 俺は黒い小人さんを次々に降ろした。


「準備はいいかい。出すよ」

「おう、やってくれ」

「ありゃ、あんた何かしたかい。あれっ、芋は確かに載っているし。こんなに歩き出しが速いはずないんだが」


 御者台の男は頬をかいた。

 黒い小人さんは重さだったんだな。

 邪魔だから降ろしたが、いい仕事をした。


 ぎしぎしと車軸が軋む。

 荷台から身を乗り出し車軸を見ると、赤い小人さんがヤスリを持ってごりごりと削っていた。


「めっ!」


 赤い小人さんは驚いてヤスリを落とした。

 涙目になる赤い小人さんに、干し肉を投げてやった。

 これでも食って落ち着きな。


 赤い小人さんは干し肉を受け取ると俺に返しにきた。

 干し肉は温かくなって柔らかくなっていた。

 一仕事終えたと言わんばかりの得意満面の笑みの赤い小人さんの頭を撫でてやった。


 緑色の小人さんが『ぎしぎし』と言って楽器を奏でる。

 別の緑色の小人さんが『がたがた』と言って震える。

 音ぐらい別に良いか。

 そんなに邪魔になる物でもない。


 荷馬車は何も積んでないかのように快調に進んで行く。

 緑の小人さんが前方からやってきて、玩具の剣を振り回した。

 風を切る感覚を感じた。


 朝飯代わりにパンに干し肉とチーズを挟んでかぶりつく。

 空から白い小人さんがヒールの高い靴を履いて落ちて来た。

 ヒールが色々な物に刺さる。


「おい、俺の一張羅に傷をつけないでくれ」


 白い小人さんを避けた。

 白い小人さんが不満そうに見上げて来る。

 手に持っている熱と書かれた板を受け取って体に貼り付けた。

 体がぽかぽかとしてくる。


「いい陽気だなぁ」

「お前さん、何で街に行くのかい?」

「ちょっと、仕事を探しにね」

「見つかるといいな」

「ああ、ありがと」


 陽気に誘われ、ピンク色の小人さんが出てきて、眠気と書かれた重りをまぶたに貼り付ける。

 俺は船を漕ぎ始めた。

 御者台の男との会話がああとしか返事が出来ない。

 仕方ないよな。

 こんなにいい天気じゃ。

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