ヤングケアラー・ハナは、奮闘中!②~車いすサッカーをする子の悩みを聞いて、理系女子のセクハラ(アカハラ)ケアも、やっていきたい!~
第7話 「感動しました!」そういうことしか言えない人には、本当の感動は、わからない。本当の感動、発見であり、驚き、喜びって?
第7話 「感動しました!」そういうことしか言えない人には、本当の感動は、わからない。本当の感動、発見であり、驚き、喜びって?
「君が、校庭を眺めていたのは、良く、知っている」
「…」
「さあ。このボールを、蹴ってみなさい」
満足に、できるるわけがなかった。
中学生のころなら、それも、できただろうけれど。
当時は、車イスの生活ではなかった。杖歩行くらいの日々で、症状は、軽かったのだし…。
今は、特別支援学校に移ってからの生活。麻痺の残る身体の調子を考えれば、ボールを蹴る動作なんて、とれる?
「先生?」
「何だ?」
「先生は、いじわるです」
「何?」
「ボールを蹴る動作がとれないのを、知っていたでしょうに!」
「何?」
「ボールを蹴るなんて、できません」
「いや、できる」
「え、どういうことですか?」
「できる」
「先生?足が、上手く、動かせないんですよ?」
「そんなことは、わかっている」
「先生、わかっているのなら、無理にこんなことをさせなくたって、良いじゃないですか?」
「蹴るのは、君の足で、じゃない」
「え?」
「違うもので、蹴るんだ」
「違うもの?」
「車イスだ」
「車イス?」
「そうだ。車イスで、蹴るんだ!」
「…先生?何を、言っているんですか?」
「そのまま、ボールに向かって、ぶつかってみろ」
「ぶつかるんですか?」
「そうだ」
「どうなっても、知りませんよ?」
「ああ」
「先生の、責任ですからね!」
「ああ」
ボールに、衝突。
前方に、ころころと、転がっていった。
「驚いたか?」
「はい!」
驚いた、驚いた。
特別支援学校に移ってからというもの、日常の動作は、ほぼほぼ、誰かに手伝ってもらっていたものだ。
それが、誰かによる手伝いや働きかけで動かされるのではなくて、誰かに働きかけることによって、物を動かすことができたことになる。
これは、偉大な発見であり、驚きであり、喜びだった。
「可能性を、感じたか?」
「はい」
「そうか」
「はい」
「オリンピック中継とかを見た人が、感動しましたって、言うだろう?」
「はい」
「それを聞けば、感動しましたっていう言葉しか知らないんじゃないのかと、つっこみたくもなる」
「ははは…」
「それでも、今回ばかりは、感動したんじゃないのか?」
「はい!」
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