第6話 その子が、特別支援学校に編入学して、変わったことは何だった?ヤングケアラーの胸を打つ、思いがけない、出会いとは…?

 特別支援学校に編入学した当初は、落ち込むことだらけだったという。

 気遣ってくれる人は多かったものの、編入学生だ。まだまだ友達も少なく、その女性のほうからの動作が、なかなか、とれなかったから。

 「もどかしかったなあ…」

 「反、2階から目薬、ですいよね…」

 「それって、何です?」

 「すみません。何でも、ありません」

 ハナの顔が、赤くなった。

 「はじめは、いやなことばかり…」

 「そうですか…」

 「特別支援学校のクラス担任に、きついことを、言われました」

 「そうですか…」

 「でも、それが、虹を呼んだんです!」

 「え?」

 特別支援学校のクラス担任が、窓辺に寄り添って校庭を眺めるその女性に、声をかけてきた。

 校庭では、クラスメイトたちが、バレーボールかバスケットボールを投げ合っていた。

 大きめの、キャッチボールのようなもの。

 「良いなあ…」

 「何だ?皆が、うらやましいのか?」

 「…先生?」

 「交ぜてくださいって、声をかければ良いじゃないか」

 いじわるだなと、思ったそうだ。

 「そんなんじゃあ、孤立するぞ?」

 きつかった。

 「自立と自律が、できなくなるぞ?君は、社会全体に、疎外される」

 きつかった。

 途中編入でやってきて、日が浅かった。友達が少ないのは、その先生にも、わかっていたはずなのに!

 それなのに…。

 「ほら、がんばれ!」

 そこまで、言うか?

 「せ、先生は、いじわる」

 「ほら!君のほうから、アクションを、起こすべきだ!」

 頭にも、きた。

 「…あんなにはしゃぎ回ってボールを投げ合ったりすることまでは、できない身体なのに。それを、わかっていたはず。このクラス担任は、いじわるよ」

 不満で、一杯だった。

 「どうした?」

 体育館に、連れていかれた。

 「…先生?」

 「やるぞ!」

 「先生、何ですか?」

 「君は、電動車イスサッカーという競技を知っているかい?」

 「電動…、何ですか、それ?」

 「つべこべ言わず、これを、蹴ってみろ」

 体育館倉庫から、大きめのボールを、もってきた。

 「どうだ?」

 「どうって…」






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