第2話 ヤングケアラーとしての、処世術…。「詳しく聞かないことで、上手くいくこともある」 これから、どんなケアが進むんだろう?

 そういえば、その子には、連絡先を教えていたのだった。

 「ハナさん?」

 「はい」

 「弱い立場の女性は、他にもいるんです」

 「…」

 「どうか、その人の悩みを、聞いてあげてください」

 「わかりました」

 「女性の弱みを悪用するコロナ禍には、我慢ができません」

 「そうですよね」

 「ハナさんのケアが、必要なんです!」

 「どういう人が、悩んでいるのかな?」

 「同じく、アスリートの人です」

 「あなたの、友達?」

 「はい」

 「中学生?」

 「えっと…違います」

 「高校生?」

 「じゃなくって…」

 「大学生?」

 「違いますよう」

 「あれ?大人じゃ、ないの?」

 「違いますよ」

 「あらら」

 「今どきの大学生は、大人じゃありませんから」

 「うわ…。中学生に、言われた」」

 「ちゃんとした、大人です」

 「そっか…」

 「大学生は、まともな大人のレベルではありません」

 「ははは…」

 「10歳以上も、年上」

 「おお…」

 「同じ女性で、同じアスリートです」

 「ああ、アスリートの方でしたか」

 「障害者スポーツをがんばる人、なんです」

 そうか。

 障害がありながら、スポーツを続ける人も、弱い立場なのかもしれなかった。

 いや、正確にいえば、違った。

 弱いんじゃなくて…。

 弱いと、思われがちな人?

 「マキハタヤマハナと、言います。見学しても、よろしいでしょうか?」

 地域の、総合体育館に向かった。

 電動車イスサッカーに汗を流す人たちの姿を、見学。

 「ふうん、見学ですか」

 歓迎されていない声?

 彼らが悩んでいたのは、障害者にたいする、偏見。

 「私は、つまらない興味や気晴らしできたわけでは、ありません。真剣な気持ちで、皆様の姿を、見にきたのです。どうか、見学させてください!」

 思わず、声を上げていた。

 「まず、あなたの名前を、教えてくれませんか?」

 「そうでしたね…、失礼、いたしました」

 「うん」

 「私は、マキハタヤマハナと、いいます」

 「あ!もしかして!」

 1人の女性が、驚きの声をあげた。

 「ハナさん、ですよね?あの子から、聞かされています!」

 その女性の名は、聞かなかった。

 それで、良かった。

 「詳しく聞かないことで、上手くいくこともある」

 ヤングケアラーとしての、処世術。



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