第33話 本戦初戦×魔力枯渇
10日間に及ぶ予選は終わりを迎え、遂に本戦出場者が決まった。
本戦はA〜Dの4ブロックに各8名ずつ割り振られた、32名のトーナメント方式で行われる。
トーナメント表やルール、出場者の予選戦績などはギルドから支給されたバングルで確認ができるようだ。
「レンとは違うブロックか。勝ち進めば決勝で当たることになるな」
俺はベッドに寝転びながら、トーナメント表を確認して呟いた。
予選ではレンに当たることはなく、リアのことも初戦以降見ていない。
予選戦績を見た限り、2人も全勝無敗で同率1位のようだ。
「明日から本戦か」
俺は小さく呟くと、ゆっくりと目を閉じた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
本戦の開会セレモニーが王城敷地内にある闘技場で行われた。
場内闘技場は王都で1番広い闘技場で、どこからでも試合を楽しめるように、4箇所に魔導具による特大モニターが設置されている。
闘技場内には4つの舞台が設置され、各ブロックに分かれて同時並行で試合が行われるようだ。
この日は王城の敷地内に入れるということもあり、王都は予選以上にお祭り騒ぎだった。
闘技場内で花火や出し物が催され、観客席で一緒に見ていたティナは楽しそうに騒いでいた。
最後にフジワラ王の挨拶があり、本戦が始まった。
「あれがフジワラ王か。レンが言ってた通り太ってるが、あまり日本人ぽくない顔つきだな……」
俺は特大モニターに映し出される、フジワラ王を見て呟いた。
「それじゃ、行ってくる」
「ん。頑張って」
ティナと別れた俺は、控え室に向かった。
控え室に出場者たちが集まると、審判から改めてルールの確認があった。
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〜冒険者武術大会のルール〜
・相手を殺してはいけない
・舞台から落ちると敗北
・武器破損や戦闘継続不能となれば敗北
・ギブアップを宣言すれば敗北
・身動きが取れない状態で10カウント取られると敗北
・使用武器は問わない
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「相手を殺す以外は基本なんでもありです。殺してしまうと1年間の活動停止、場合によっては罪に問われます。また、使用武器や防具は手に入れる財力や運もその者の実力とするため、何を使って頂いても構いません」
出場者たちは静かに審判の説明を聞いていた。
「それでは、1回戦を開始します。1回戦出場者は私に着いてきてください」
審判の後を追って俺を含む8人の出場者が闘技場に現れると、場内は割れんばかりの歓声が響いた。
観客席から手を振るティナが見えたので手を振り返すと、目の前を歩いていた巨漢に舌打ちをされた。
出場者が各ブロックの舞台に着くと、出場者を紹介するアナウンスが響き渡った。
「Aブロック第1試合は予選で1位の成績を残した、
俺の紹介で場内がざわめく。
「対する対戦相手は、大会の常連と言っても過言ではない、ゴンザレスッ! 今度こそ迷宮への挑戦権を手に入れることができるのか!? なにより、
ゴンザレスと呼ばれる巨漢の紹介が終わると、観客席からどっと笑い声が起こった。ゴンザレスは何故か俺を睨みつけてきた。
「そしてそして! Bブロック第1試合は予選同率1位の成績を残したあの、剣姫リア・エストレアだーッ! この大会で血の雨が降らないことを祈ることしかできません!」
リアの紹介がされると、ブーイングの嵐が巻き起こった。リアは苦虫を噛み潰したよう顔でアナウンスをする男を睨みつけてた。
「剣姫の対戦相手は──」
次々と紹介が進み、第1試合出場者の紹介が終わると、審判に舞台の中央に立つように促された。
目の前に巨漢のゴンザレスが立ち、俺を見下すように睨みつけてくる。
「ルールを守って、フェアな戦いをしてください」
審判はそう告げると、俺たちから距離を取った。
俺も所定位置に移動し、ゴンザレスと向き合う。
「はじめッ!」
審判の掛け声と共に、ゴンザレスが大斧を振り回し突っ込んできた。
それに対し、俺は右腕を突き出し構えた。
「──エアーインパクト」
俺が唱えると手のひらに空気の球体が出現した。
俺は軽く地面を蹴り、ゴンザレスの懐に潜り込む。
隙だらけのみぞおちにエアーインパクトが触れた。
「ぐほッ……!?」
ゴンザレスは軽々と場外へと吹き飛んで行った。
「しょ、勝者ユウヤッ!」
「おーと! はやくもAブロックが決着のようです! 勝者はユウヤッ! ゴンザレスは場外に吹き飛ばされたようですが、一体あの体格差で何をしたのかッ!」
アナウンスで再度俺の勝利が宣言されると、場内に歓声が響いた。
俺は歓声に軽く手を振り返しながら、闘技場の入場ゲートへと向かった。
「2回戦出場おめでとうございます。2回戦目は明日となりますので、本日はご自由にお過ごしください」
「わかった。ありがとう」
入場ゲート付近にいた闘技場スタッフから説明を受け、闘技場から出ようとした時、後ろから衝撃音が響いた。
振り返ると、Bブロックの出場者が闘技場の壁まで吹き飛ばされたのか、土煙を上げて瓦礫に埋もれていた。
「勝者リア・エストレアッ!」
場内の視線が集まる中、静かな空間に審判の声が響いた。
リアは何事も無かったかのように舞台を降りると、俺の横を通って闘技場から出ていった。
「あ、ちょっと待ってくれ」
「なに、またあんた……なの」
俺の呼びかけに立ち止まるとリアはふらつき、その場で倒れてしまった。
「おいッ! 大丈夫か!? 誰か来てくれ!」
俺の声を聞きつけた闘技場スタッフたちが駆け寄ってきた。
「魔力枯渇の様ですね。医務室に運びましょう」
闘技場スタッフに協力してもらい、リアを医務室へと運んだ。
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