第31話 転移者×王都観光

 

「なぁ、あんた日本人・・・だよな?」

「え?」


 日本人と言うワードに耳を疑い、一瞬思考が止まった。


「もしかして……」


 俺は男のステータスを確認する。


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【名前 / 性別】イチジョウ レン / 男


【レベル / Exp】Lv.37 / 40012(Next:4270)


【スキル】片手剣:Lv.6 / 両手剣:Lv.4 / 槍:Lv.4 / 斧:Lv.4 / 籠手:Lv.4 / 火魔法:Lv.3 / 水魔法:Lv.3 / 風魔法:Lv.3 / 土魔法:Lv.3 / 身体強化:Lv.Max


【ユニーク】転移者 / 鑑定 / 成長促進グロースプロモーション


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 俺も人のことを言えないが、かなりのチートステータスだった。


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成長促進グロースプロモーション

 ステータスに『経験値ブースト』と『スキル成長ブースト』を付与する。


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 経験値ブーストとスキル成長ブーストは自身とスキルのレベルが上がりやすくなる効果があるようだ。

 このスキルは転移者にとってかなり都合がいいスキルだ。

 そもそも転移者はユニークスキル〖転移者〗によりスキル取得は容易い。

 スキルのレベル上げに時間がかかるものだが、このスキルは素材が必要な能力付与エンチャントよりも効率がよく、成長に特化したスキルだ。


「俺は一条蓮。レンでいいぜ」

「俺は玖珂雄也だ。俺もユウヤで大丈夫だ」

「まさかこんな所で日本人に会えるなんてな! よろしくなユウヤ!」


 レンはそう言うと、手を前に出した。


「ああ。よろしく!」


 俺はレンの手を取り握り返した。


「ユウヤは転移者でいいんだよな?」

「そうだ。レンと同じだと思うが?」


 ステータスは持っているユニーク以外は同じようなものだった。

 俺は、レンの質問の意図が分からず聞き返した。


「いや、ステータスにユニークが無いのが気になってな……」

「ステータスは転移者スキルで隠蔽できるんだ。知らないのか?」

「え? うぉ、マジかよ……」


 レンはステータスを開いて隠蔽を試して驚愕した。

 ──ステータスを隠蔽せずにギルドに登録してるってことは色々騒ぎが起きただろうな……


「それはそうと、ユウヤはいつ王都に来たんだ?」

「昨日だけど?」

「それじゃ、俺が王都を案内してやるよ。こっちに来てからのこととかも聞きたいしな」

「ああ、よろしく頼む。ティナもそれでいいか?」

「ん。ユーヤに任せる」


 朝食を済ませた俺たちは、レンと情報交換を兼ねて、王都観光へ向かった。

 道中、買い物をしながらお互いのことや、転移してからのことを掻い摘んで話した。


「ユウヤ……かなりハードな生活してきたんだな。ティナちゃん、無事にノースフルに帰れるといいな」

「ん。ユーヤがいるから大丈夫」

「そうか。ユウヤのことホントに信頼してんだな」


 レンは優しい笑顔でティナに言った。


「レンはずっと王都にいるのか?」

「俺はユウヤと違って運良く王都の近くに転移して来たんだ。それで王様と謁見してさぁ……あ、そうだ。言ってなかったけど、ここの王様も日本人だぜ」

「やっぱりそうなのか! 名前からしてそうだと思ってたがって謁見したのか。どんな人だった?」

「おっさんだな。けど結構優しい人だったぜ? 自分と同じ境遇の俺に王家専属冒険者なんて位をくれてさ、色んな武術の指導を付けてくれんだよ。お陰でかなりスキルも習得できたしな。だから、次は迷宮に挑むつもりだ」

「……なぁ、やっぱりそのバングル」

「あぁ、俺も大会に出るぜ。運悪かったら予選で当たるかもな」

「それは笑えねぇわ」


 俺が苦笑いで返すと、正午を告げる大きな鐘の音が響いた。


「やっべ、そろそろ戻らねぇと」

「何かあるのか?」

「昼から指導あるんだけど、なんも言わずに城抜け出してきててさ」

「おいおい、仮にも王家専属冒険者なんだろ?」

「まぁその甲斐あって、ユウヤたちにも会えたんだ。次は大会でだな!」

「ああ。その時は手加減は無しだ」

「当たり前だ」


 俺たちは固い握手を交わし、その日は別れた。


「買い食いしながら帰ってもいいが……色々買ったし宿で何か作るか」

「ん。ユーヤの料理楽しみ!」


 俺たちは宿に戻ることにした。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「わからないやつだな! 僕が泊まる部屋を用意しろと言っているだろう」

「しかしですね……ただ今、どの部屋も満室でして……」


 宿に戻るとフロントで騒いでいる客がいた。

 主張の激しい服を着た男が騒ぎの原因らしい。男の後ろにはガタイのいい取り巻きが2人いる。

 俺は関わらないように、隣のフロントに向かい鍵を受け取り部屋へ向かった。


「僕は泊まらせないのに、あのゴミは泊まらせるのか!?」


 男がこちらを指さしフロントに怒鳴りつける。


「あの方は先に泊まられているお客様ですから……」

「ならばあのゴミを追い出せばよかろう?」

「いえ、それはですね──」


 フロントは困り果て何度も頭を下げている。


「はぁ……」

「ユーヤ、どうしたの?」


 俺は部屋に向かう足を止めると、ため息をついた。

 ティナが不思議そうに顔を覗かせる。


「どこにでもいるんだな。クズは!」


 俺の声はホールに響き渡った。


「い、今僕のことをクズと言ったのは貴様かぁあ?」


 男は怒りやすいたちなのか振り返った顔は赤面し、こめかみに青筋をたて怒鳴り散らした。


「返事をしたってことは、自分のことがクズだと理解してるみたいだな」

「貴様、1度ならず2度も……」

「クリフ様、落ち着いて下さい」

「黙れッ! この僕を侮辱してタダで済むと思うなよ? 名を名乗れ! 末代までいたぶり続けてやる!」


 クリフと呼ばれた男は取り巻きの静止を跳ね除け怒鳴り続ける。

 ──そんなこと言われて本名を名乗るやつはいないと思うが……


「俺はユウヤだ。お前は?」

「冥土の土産に教えてやる! 僕はクリフ・ユースレスト。ユースレスト家の次期当主だ!」


 クリフは偉そうにふんぞり返りながら名乗った。


「ん? そのバングル、貴様も大会出場者か!」


 俺のバングルを見つけたクリフは、自分のバングルを得意げにチラつかせた。

 その時、2人のバングルからアラームのような機械音が鳴り出した。

 腕を上げてバングルを確認すると、ウィンドウが表示された。そこには──


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 対戦相手の連絡。

【対戦相手】クリフ・ユースレスト

【対戦場所】南闘技場

【対戦日時】予選初日 正午


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「貴様か」「お前か」


 2人の視線が交差する。


「ここでボロ雑巾のようにしてやるつもりだったが、命拾いしたな! 予選出場者同士の大会外での戦闘は禁止されている。明日の予選まで首を洗って待っておくんだな! カハハハハ」


 クリフは高笑いしながら、取り巻きを連れて宿から出ていった。


「騒がしいやつだ……さてと、部屋に戻るか」

「ん。お腹空いたー」


 俺たちは何事も無かったかのように、自分の部屋に戻った。

 フロントの人達は安堵し、ユウヤに頭を下げていた。

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