ヒーローインタビュー

さて、小さい子供との食事で、親が最も食べるのが困難なものグランプリに、わたしは納豆を推薦したい。


①パックのふたを開ける。


②たれとからしを取り出す。


③薄いビニールをはがす。(納豆がくっついてきて難儀)


④たれをかける。(9割たれが手につく、あの袋よ)


⑤まぜる。(もうまぜるの2、3回でええわってなる)


まず、段階が多すぎる。


さらに、①~⑤各段階の間に、息子に食べさせる、娘の納豆にたれをかける、息子がこぼした納豆を拭く(ベタベタとの戦い)、などなど挟まってくるのだ。


全然自分の納豆の一口目に辿りつけない。


試行錯誤の末、最近は自分の分の納豆は、食卓に並べる前①~④の過程を済ませておくことにしている。


あと、あれですよ、手巻き寿司。


昨年(2021年)の節分は、手巻き寿司にした。

いつもは恵方巻を買っていたが、久しぶりに手巻き寿司が食べたくなったのだ。


当時育休中だったため、刺身を買いに行くことができたし、すし飯を作るゆとりもあった。


さあ準備万端。

しかし、昨年の節分は平日。

つまり大人はわたし1人。


「ご飯はいらないからイクラだけ食べたい」

「たくあんがいい」

「たくあんおかわり」


次々と襲い掛かる娘のリクエストに応えた寿司を巻いて渡し、よし次は自分も巻くぞと思ったら、隣で息子が口を開けて待っている。

(当時、離乳食後期)


せっかく念願の手巻き寿司ができたのに、自分のは味どころか何を巻いているのかさえもよく見ず食べていた。


これにはだいぶ懲りたので、今度から手巻き寿司は必ず夫がいる時にしようと誓った。


それにしても、小さい子供達に対して大人1人での食事って、ほんとにほんとに忙しい。


「そんなに忙しいなら、料理は手抜きして惣菜やお弁当を買って帰ればええやん」

と思うやろ?

おっしゃる通り。


しかし、想像してみてください。


荷物の多い保育園帰り、スーパーに自転車を止めて、ヘルメットベルト外し自転車から下ろす×2人、カートに座らない息子、お菓子売り場に吸い込まれる娘、レジの支払いを自分でやりたいと言う娘、買い物後はさらに荷物が増え、またヘルメットベルト(以下略)…


それでもスーパー、寄りますか?


惣菜1パック買うだけでも、家で料理するのに等しい(場合によってはそれ以上)の労力である。


しかも、作った料理であっても買った弁当であっても、子供2人に食べさるとなれば、先述した一連の戦いが繰り広げられるのは同じだ。


ああ、どうにかこの平日夕方を、もう少し楽できる方法はないかなーなんて考えているうちに、子供たちは大きくなっているんだろうなぁ。


解決策と言えるかどうかわからないけど、最近は子供達と食べる自分のご飯は半分だけにしておいて、残りの半分は夫の仕事が終わってから一緒に食べている。


半分でも自分の分が落ち着いて食べられるし、ビールを飲みながら、「今日ご飯の時、大変やったんやで・・」と話を聞いてもらうと、少しスッキリするのだ。


「じゃあ先に子供たちに食べさせるだけにして、全部後で旦那さんと食べたらええやん」

と思うやろ?

おっしゃる通り。


だが、夕方6時くらいになるとお腹が空いてきて、自分だけ食べないなんて耐えられず、結局一緒に食べてしまうのだ。


平日の夕食がバタバタする原因の何割かは、自分の都合にもあるのかもしれないと、色々書いてみて気がついた。


休日に家族4人で食べられる夕食は、慌ただしくとも息切れすることはないし、気持ちにもなんとなくゆとりが持てる。


大人が1人そこにいるかいないかの違いって、かなーり大きいんやで!と、声を大にして言いたい。


いてくれて大変ありがたい反面、夫の動作がついマイペースに見えてしまうことがあるが、これに関してはおそらく夫の方が正常で、わたしの慣れた感覚の方が異常なのだと思う。


早く普通の人間のスピードで食べられるようになりたいものだ。


先程も少し触れたが、たぶん、こんなにハードな食事タイムは、もうあと少しで終わるはずだ。


息子が上手に1人で食べられるようになる頃には、もう少し手が空いて、手巻き寿司だってゆっくり味わえるかもしれない。


その頃には、てんやわんやしていた今の光景を、きっと懐かしく思い出すことだろう。


しんどかった夕食タイムだって、もっと笑い話に変えられているに違いない。


ようやく言葉を覚え始めた息子が、ご飯を食べて「ウン、おいちい!」や「おいちいねー」と言ってくれたこと。


苦手な物が食べられなくてグズる娘を励ましているうちに、なぜか励ましソング&ダンスができてしまい、途中から娘も息子も一緒に踊り出して、よくわからないけど楽しかったこと。


大変なだけじゃなくて、嬉しかったことも、楽しかったことも、笑ったこともいっぱいあるのが子供達との食卓だ。


目が回るほど忙しい子育ての日々の中にも、実は目に見えないささやかな幸せがいっぱい散らばっているはずである。


1日1日を乗り切るだけで精いっぱいで、つい忘れがちになるけど、可愛い子供が2人、元気に大きくなっている。

それだけでこの上なく幸せなのだ。


何回忘れても、何回も思い出したらいい。


今がすごく楽しいし、これからだって楽しみだ。



でもやっぱり最後には本音を…!


小さい子供達との食事時間を1人で乗り切っているお母さん、お父さんを、もっと褒めてくださーい!


労いの言葉を湯水のように浴びせてくださーい!!


(おわり)

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