試合開始

3歳と1歳との食卓、本当の試合はここから始まる。カーン。

(ホイッスルよりもゴングのイメージなので、あえてこの音で)


以下、脚色なし、わりとリアルな平日の夕食風景のごく一部である。


(席に座る)

「いただきまーす」


娘「お母さん、スプーンがないよ」


わたし「ほんまや、ごめん」


座って早々、席を立って取りに行く。

まあこれは、単にわたしの準備忘れだ。


ただの言い訳だが、エプロンにお手ふきタオル、娘はスプーンとお箸、息子はスプーンとフォーク、小さい子の食事って何かと準備する物が多い。


軽く仕切り直して食べ始める。

待ったなしの息子はもう食べている。


最近自分で食べようと意欲的な息子。

自分で食べたがる割には盛大にこぼす。

スプーンからも皿からも、次々とおかずが落ちてくるので目が離せない。


ふと娘に目をやると、なぜかボーっとして何もしていない。


わたし「はよ食べや」


娘の方を向いた時に限って、息子は何かをこぼす。

慌てて机を拭く。


娘「お母さん、これ何?」


わたし「ピクルスだよ」


娘「これは?」


わたし「ぶりの照り焼きだよ」


たまに、料理の紹介を求められる。


娘「ぶりって、泳ぐの早いの?」


わたし「早いんちゃうかな」


娘「なんで?」


たまに、奥の深いなんでなんで攻撃が入る。


いつのまにか息子が椅子から脱走している。


どうにか座らせると、今度はスプーンをこちらに渡してくる。

これは、「もう自分で食べるのは飽きたから食べさせてくれ」サインだ。

息子にご飯を食べさせる。

キャベツの硬いところははお好きでないらしく、口からボロリと落として返品される。


娘「お母さん、今日保育園で○○ちゃんと種を拾ったよ」


わたし「そうか、それはよかったね」


娘の手が止まっていることに気が付く。


わたし「おしゃべりしてもいいけど、食べるのも忘れんといてね」


息子がエプロンをバリバリとはがす。


これはもうあきらめる。


息子がどうやらうんちモード。


ズボンをチェック、案の定出ている。


おむつを替え終わると、息子は自分の席に戻らず、わたしの席に座っている。

しかたなくわたしが息子の小さい椅子に座る。


娘「うんちー」


これは結構あるあるだ。

姉弟は便意がつられるのか。


娘をトイレに連れて行き、手を洗って戻って来てまた息子の小さい椅子に座る。


息子がスプーンを落とす。

洗いに行く。


40歳近くにもなると、この辺でちょっと息切れする。


娘「あつまれしてください」(お皿にくっついた最後の一口を集めて食べさせてください、の意味)

あつまれして、娘に食べさせる。


娘「あれ?お母さんのごはんは?」


わたし「もう食べたよ」


驚くなかれ、そうなのだ。


お母さんは、このゆっくり座るヒマが全くなく、身体があと2つ、手があと4本くらいほしい状況にも関わらず、誰よりも早く自分のご飯を食べ終わっているのだ。


何なら、息子が自分の椅子に来ることも想定して、空いた食器は下げてさえいる。


これは日々のトレーニング(?)を積み重ねて身に着けた、誰も褒めてくれないし何の自慢ににもならない技と言えよう。


ただし、頑張って作った物であろうとチンしただけの物であろうと、味はよく覚えていない。


(つづく)

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