第7話 緊急事態宣言
「映ってるか?」
「ああ、ばっちしじゃ。そっちも見えとるか?」
「ああ、問題ない(今日の魔王……)」
「それにしても、このZ00Mというのは便利じゃのう。L1NEも良いが、お主の顔を見ながら話せるのは最高じゃぞ」
「元気にしてたか?」
「それはいつもL1NEで伝えておるじゃろう」
「ちゃんと修行しているか?」
「修行? ……うん、ああ、修行ね。うん、うん、してるしてる。ばっちしばっちし」
「それ、明らかにやってなかった奴のセリフだよな」
「だって、強くなったら、お主に殺されてしまうではないか」
「それで、そっちも酷いのか?」
「うむ。こっちも緊急事態宣言で魔王城に引きこもりっぱなしじゃ」
「もともと、引きこもりじゃねーか」
「ははっ。それで勇者の方はどうしておるのじゃ?」
「俺は山奥で結界貼って過ごしてる」
「一人でか?」
「ああ。『勇者が感染したら一大事だ。絶対に人里に下りるな』ってお偉いさんに言われてな」
「一人ぼっち……そんな、世界を救う勇者に対して、あんまりではないか……」
「ははは。もともと一人っきりの修行漬けの生活だ。たいして変わらん」
「そんな……あまりにも寂しいではないか……」
「慣れてるしな。それに、今は話し相手も出来たしな。だから、大丈夫だ」
「(妾のことか……)」
「だから、今年は残念だ」
「残念? (まさか……)」
「おまえに会えない」
「…………(勇者も妾と同じ気持ちであるか。嬉しいことよのう)」
「この疫病が恨めしい」
「そうじゃのう。なあ、勇者よ、お主の力でなんとかこっちに来れんものかいの?」
「例年はこの時期にゲートが開くんだが……。今年はお偉いさん方が封鎖しているから行けないんだ」
「そっ、そうであるか」
「なあ、ちゃんと、メシ食ってるか?」
「食べとるぞ」
「じゃあ、なんでそんなに痩せてるんだ?」
「…………」
「ちゃんと、寝てるか?」
「寝ておるぞ」
「じゃあ、なんで目のくまがそんなに酷いんだ?」
「…………」
「どうして最近『まも森』にインしないんだ?」
「ちょっと飽きてきたのじゃ……」
「嘘つけ、あれだけ楽しんでたじゃないか」
「…………」
「なあ、魔王、おまえ、顔色が悪すぎるぞ」
「画面越しだとそう見えるかもの」
「おまえ、絶対なにか隠しているだろ」
「なっ、なんのことじゃ、ぴゅーぴゅー」
「下手な口笛でごまかすな、って前も言っただろ。正直に答えろ!」
「なあに、お主には関係ないことじゃ。のんびり巣ごもり生活を満喫しておれ」
「俺たちは今さら隠しごとする仲なのか?」
「お互い殺し会うだけの仲じゃろ?」
「なっ。ずっとL1NEしてたし、『まも森』も一緒に遊んでたじゃねーか」
「なに、戯れの時間つぶしよ」
「疫病が終焉したら、二人で新作ケーキ食べようって約束したじゃねーか」
「そうだったかのう? そんな些細な事は覚えとらんのう」
「なっ……」
「……………………(どおぉぉん!)」
「おい、今スゴい音したよなっ?」
「心配いらん。ちょっと壁が爆破されただけじゃ」
「おいッ!」
「ちょっと野暮用じゃ。来年こそは、会えると……いいな」
「ちょっ、待てっ、切るなっ…………チッ」
【後書き】
『ゼットゼロゼロエム』です。
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