第4話 甘い罠
一年後。
「太った? 太ったよな? 明らかに太ったよな?」
「そっ、そんなことないぞっ……。しいていえば、ちょっと魔力を蓄えたくらいじゃ」
「蓄えたのは魔力じゃなくて脂肪だろ。それにちょっとじゃねーよ。去年まではスレンダーなのに出る所は出ていて魅力的なナイスバディーだったのに、今は肉まんじゅうじゃねーかっ!」
「ナイスバディー? (ぽっ)」
「反応するとこ、そこじゃねーよ!」
「魅力的? (ぽっ)」
「そこでもねーよっ! オイ、おまえ、なんで太った? 修行してたんじゃねーのか?」
「お主よ、女子に『太った』は禁句じゃぞ」
「うるせー、ちゃんと理由を説明しろっ!」
「妾は悪くない。悪いのは……ケーキじゃ」
「ケーキだと?」
「最近、人間界から入ってきたケーキ。アレは魔性の存在じゃ。ついつい、食べ過ぎてしまう。特に修行後の疲れた身体には反則すぎるのじゃ……」
「ケーキの食べ過ぎで太ったと?」
「うむ。妾は悪くない」
「修行は?」
「……やっておったぞ」
「修行は?」
「最初の頃はちゃんと真面目にやっておったのじゃ。だけど、ケーキと出会ってからは身体が重くなって、身体を動かすのも面倒になって……」
「サボったんだな?」
「…………ごめんなさい」
「よし、殺し合おう」
「待って〜。むりむりむりむり。今の妾じゃ、絶対に瞬殺されてしまうのじゃ〜。だから、来年。来年こそは、どうかな? って思ったり」
「…………はぁ。ほら、これやる」
「この本は?」
「どうせ、効率的な修行方法も知らないんだろ? 俺流の修行方法をまとめた本だ。内容は厳しいけれど、この本の通りに修行すれば、おまえも強くなれる」
「勇者よ……そこまで妾のことを……」
「絶対にサボるなよっ! 来年は本気出すからな。死にたくなかったら、死ぬ気で頑張れっ!」
「ああ、ありがとう。勇者よ。妾はこの本で最強になるぞ。お主が泣いて許しを乞うても、絶対に許してやらんからな」
「ふふっ。一年後が楽しみだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます