第278話 魔道具を求めて
ユノメルはナナシが対応してくれるということで話は着いた。
だが、問題がすべて片付いたと言うわけではない。
ユピスパークがあるのは通称
「時間がどれぐらいかかるのかはわからない。できるだけの備えはしておかないとな。」
雪山での極寒を耐えしのげる装備はあるから、暑さに耐えられる装備とかそういうのを買い足しに行かないといけない。
そうと決まれば向かうのは魔道具のお店だ。
以前ノーザンマウントへと向かう際に魔道具を購入したお店へと向かうとある人物と出くわした。
「ん?なんだカオルかい?」
「こんにちはカーラさん。」
ちょうど出くわしたのはお店に自分の商品を卸しに来ていたカーラだった。
「この店に来たってことは魔道具を探しに来たのかい?」
「はい、実は死の島に行くことになって……そのために道具を揃えに来たんです。」
「死の島かい……ま~た厄介なところに行こうとしてるねぇ。」
俺から行く場所を聞いた彼女はやれやれとため息を吐き出した。
「死の島って言えばとんでもなく危険な神獣の生息地だし、それに加えて色付きの魔物もかなりの数生息してる。魔物が強いのはそれとして問題はその気候……環境の変化になれていない生物なら簡単に死んでしまうほどの気候と寒暖差の変化。まぁ、普通の人間なら魔物に遭遇する前に凍え死ぬか、体中の水分が蒸発して終わりだろうね。」
「それは御免なので、魔道具を買いに来たってわけです。」
「その判断は大正解さ。店主、この客にはアタシが魔道具の紹介をするよ。」
カーラはそう店主の男性に告げると、俺の背中を叩いた。
「さ、行くよカオル。」
「お願いします。」
そして案内されるがままに彼女に着いて行くと、商品が並んでいる店のコーナーではなくお店の裏側へと連れていかれた。
「あの、カーラさん?ここって?」
「ここはまだ発売してない商品が保存してある倉庫さ。アタシが納めてもまだ販売してない商品がここにあるのさ。」
そう言ってカーラはたくさん積み重なっている箱を次々に開けて、そこからいくつかの商品を取り出してくると俺の前に並べた。
「さて、まずは一つ一つ性能を紹介していこうかい。まずはこいつだ。」
そう言って彼女は水の雫の形をしたペンダントのようなものを見せてくる。
「こいつは自分の周りの空気の乾燥を防いでくれる魔道具さ。死の島は気候の変化はもちろんだけど、それに伴って極度の乾燥状態に陥ることもあるのさ。そいつを防いでくれるのがこの魔道具。常に一定の湿度にあたりの空気を保ってくれる。」
「それはいくらです?」
「まぁ金貨20枚ってところかね。」
「じゃあそれ買いでお願いします。」
「即決かい……庶民感覚でいったら少し悩むぐらいの値段なんだけどねぇ。まぁ毎度あり。それじゃ次はこいつだ。」
そしてカーラに宣伝してもらった商品をことごとく買っていると、あっという間に金額がとんでもないことになってしまった。まぁ自分の身を護るためだ、致し方のない出費だろう。幸い今は貯金にも余裕があったし。それに彼女曰く余程雑に扱わない限り一生ものらしいし、一回買ってしまえば次同じようなことで困ることは無い。
「とまぁ今紹介したものでたいていの温度変化と化気候の変化には耐えられるとおもうよ。」
「親切にありがとうございました。」
そうお礼を告げると、彼女はあることを問いかけてきた。
「カオル、あんた……神獣に挑むのかい?」
「……わかりません。集めた情報だ真実だとしたら……勝てる見込みが全くないので、できれば戦わずにアルマ様の食材を手に入れられればいいんですが。」
「即答で戦うつもりって答えなくて安心したよ。あんな化け物に挑むなんて半ば自殺行為さ。アタシの知ってる限りでも真正面から勝負を挑んだバカはいなかった。」
「ははは、できれば命は大切にしたいので。」
「その言葉、忘れるんじゃないよ?生きてればチャンスなんて何度でもある……何もチャンスがその一瞬だけとは限らないんだ。……とは言ってもそのチャンスの瞬間をモノにできるかは、自分次第だけどね。ま、アタシが言いたいのはくれぐれも命は大切にするんだよってことさ。」
「肝に銘じておきます。」
魔道具を購入した後、彼女にその言葉を投げかけられた。
彼女の言う通り、生きている限りチャンスは巡ってくる。一応ナナシが神獣の方は何とかしてくれるという話になっていたが……その言葉に頼り切らずにいざという時には自分の命を自分で守る行動をとる必要があるな。
カーラの言葉で決意を新たにした俺は店主と彼女にお礼を言って店を後にするのだった。
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