第268話 カーバンクルを捕まえろ
ラピスとともに城下町の外へと飛び出すと、そこかしこでカーバンクルたちがぴょんぴょん飛び跳ねていた。そしてそれを追いかける人々の姿も目に入る。
しかし、俊敏に動き回るカーバンクルたちはなかなか捕まえるのは難しそうだ。今のところカーバンクルたちに遊ばれているような光景にも見えるな。
そんな光景を見てラピスはフンと鼻で笑った。
「くくく、カーバンクルどもに良いように弄ばれておるようだの。カオル見ておれ。」
そう俺に言い残してラピスは一匹のカーバンクルに狙いをつけると、一瞬で距離を詰めて手で鷲掴みにした。
「捕まえたぞっ!!」
「きゅっ!?」
そしてあっさりとカーバンクルを捕まえてきたラピスはこちらにご満悦の様子で戻ってきた。
「カオル、捕まえたぞ。」
「さすがは空を支配する龍だな。しばらくそんなに機敏に動いてるラピスの姿を見てなかったから忘れかけてたよ。」
「思い出したようで何よりだの。さてさて、お前の宝石を見せてもらおうかの~。」
そうラピスがカーバンクルに声を投げかけると、カーバンクルは観念したようにお腹のポケットから小さな宝石を取り出した。
「むっ……お前の宝石は小さいな。」
確かに先ほどクリスタのもとに集まっていたカーバンクルたちに比べると、ラピスが捕まえたカーバンクルの宝石ははるかに小さい。
するとラピスはカーバンクルをそっと地面に降ろした。
「ほれ逃げるのだ。」
「きゅ?」
「来年はもっと宝石を育てて戻ってくるのだぞ。」
ポンポンとラピスは優しくカーバンクルの頭をなでてやると、くるりとカーバンクルに背を向けた。
そんな彼女に俺は声をかける。
「良いのか?」
「あんな小さい宝石を取り上げても何にもならん。我が狙うのは優勝だ。もっともっと大きな宝石を抱えたカーバンクルを探さねばなるまい。…………む?」
そう言いながらラピスはカーバンクルが逃げて行った方へと視線を向けると、何かを感じ取った。
「おい!!そっちは危ないぞ!!」
ラピスが声を上げると同時に先ほどラピスの捕まえたカーバンクルが逃げていった草むらからシャドウジュエラーが姿を現したのだ。
「きゅーっ!!??」
カーバンクルへと伸びた異形の手をラピスは蹴り飛ばすと、拳に風を纏わせシャドウジュエラーを睨み付ける。
「消し飛べ愚物め。」
そして風を纏わせた拳でシャドウジュエラーの体を打ち抜くと、その体は内側から砕けて散った。
「まったく、無粋な奴らめ。祭りのさなかに邪魔をして来るでないわ。」
そうしてラピスが拳を下ろすと、辺りで人々の悲鳴が聞こえ始める。
「魔物だーー!!」
「逃げろっ!!ハンターはどこだ!?」
そこかしこでシャドウジュエラーが現れ、カーバンクルの宝石を何とか入手した人々へと襲い掛かっていた。
「これは祭りどころの騒ぎじゃなくなってきたな。」
俺も急遽収納袋から剣を取り出して、今にも襲い掛かろうとしていたシャドウジュエラーの弱点を貫いた。
そこにラピスが合流する。
「おいカオルよ、ずいぶん荒っぽい参加者が大量に来たようだの?」
「あぁ、そうみたいだな。今はひとまずこいつらを片付けるぞ。」
「カーバンクルたちが怖がって逃げてしまってはかなわんからな。ぱっぱと殲滅するのだ!!」
そして俺とラピスはカーバンクルと、辺りの人々を守りながら突然現れたシャドウジュエラーを倒すことに専念した。
「ふんっ!!」
ラピスが最後の一匹と思われるシャドウジュエラーを殴り倒す。
「こいつで最後だの。」
「幸いけが人もいないみたいだし、これでまた祭りを始められそうだな。」
倒したシャドウジュエラーを収納袋にしまっていると、先ほどまで逃げまどっていたカーバンクルたちがラピスと俺のもとへと駆け寄ってきた。
「「「きゅー!!」」」
そして一斉にお腹のポケットから宝石を取り出し、こちらに捧げるようにしてきたのだ。
「む?お前達、良いのか?」
そうラピスが問いかけると、カーバンクルたちはいっせいに頷いた。
「そうか、ならばありがたくもらおう。」
ラピスは一匹一匹から宝石を受け取ると、丁寧にカーバンクルたちの頭を撫でていった。その光景を眺めていると、俺の足元にもカーバンクルたちが駆け寄ってくる。
「「きゅーきゅーっ!!」」
そしてお礼とばかりに宝石を差し出してくる。そんな彼らに俺は告げた。
「俺は良いから、ラピスにあげてやってくれないか?」
すると俺の言葉を理解したのか、彼らはラピスのもとへと駆け寄っていって宝石を置いていく。そして気がつけば……ラピスの周りにはとんでもない量の宝石が集まっていた。
「おぉ、これは……困ったのぉ。まさかこれほど光り物をもらうことがあるとはな。」
「よかったじゃないか。俺はひとまず一回、ギルドに行ってこのことを報告してくるよ。」
「うむ、我はしばらく解放されそうにないからの。」
そう言ったラピスの周りには大量のカーバンクルが集まっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます