第248話 舞い込んだ依頼


 パラシミアが殺され、世界樹の果実が奪われたというクリスタの報告から数日後……。


 今日も今日とて俺はナイン達と戦闘訓練に励んでいたのだが、そこへアルマ様達が突然やって来た。


「あ、カオルやっぱりここにいた~!!」


「アルマ様?」


 今しがた戦っていたセブンと戦いの手を止めると、アルマ様はこちらにとことこと歩み寄ってきた。


「カオル、今日ねアルマ達また魔物討伐しに行くんだけど……なんかリルがラピスだけじゃダメって言うんだよ~。」


「ラピスだけじゃダメ?ですか?」


「うんうん、なんかカオルも一緒じゃなきゃダメな依頼らしいんだ~。」


「なるほど。」


 リルがそこまで言うってことは相当難しい依頼なのか?もしもの時にラピスだけじゃ対応できない可能性がある……ってことだよな多分。


「因みにどんな魔物の討伐依頼なんですか?」


 ふと気になった俺はアルマ様に問いかけてみた。


「えっと~……この魔物っ!!」


 そう言ってアルマ様は一枚の依頼書を俺に手渡してきた。そこに書いてあったのは……。


の討伐?場所は……ヒュマノのとの国境付近!?」


 キメラという魔物は聞いたことのない魔物だが、場所が兎に角悪いな……ヒュマノとの国境付近か。


 依頼書を見ながらどうするかを悩んでいると、後ろからナインが耳打ちしてくれた。


「マスター、キメラは異なる魔物同士の交配で産まれた言わば奇形の魔物です。」


「ふむ。」


「キメラは二つの魔物の能力を引き継いでおり、強さ的にもかなり強い部類に入るかと。」


「なるほどな。」


 キメラって魔物のことは大方理解した。だが、二つの魔物を足しただけで、この三人に勝てるとは思えない。

 恐らく俺とラピスの仕事はこの三人にヒュマノの国境を踏み越えさせないようにする事か。


 リルの意図を少しずつ汲み取っていると、再びナインが耳打ちしてくる。


「しかしですマスター、キメラというのは自然界ではまず産まれません。そうなると、何者かが人工的に魔物と魔物を交配させ産み出した可能性があるかと。」


「……。」


 ま~たきな臭い話になってきたぞ~?それに場所がヒュマノの国境近く……偶然なのかなぁこれは。


「マスター、提案ですがセブンを連れていってはいかがでしょうか?」


「セブンを?」


「はい、過剰戦力かもしれませんが……少しでも懸念がある以上、連れていって損はないかと。」


「……そうだな。」


 俺は読み終えた依頼書をアルマ様に返すと言った。


「わかりました、それじゃあ俺もラピスと一緒にいきます。それと、念のためセブンも一緒に。」


「うん!!ありがとーカオル!!」


「カオルさんありがとうございます。」


「パパ、ありがと。」


 わいわいとはしゃぐアルマ様達の横で俺はセブンに声をかけた。


「セブン、今回はよろしくな。」


「お任せくださいマスター。」


 そして皆でギルドへと赴くと、そこには既にリルとラピスの姿があった。


「あ、良かった~。キミも来てくれたんだね。」


「はい。」


「それと……そっちの娘は?」


「初めまして、セブンと申します。つい先日魔王城にてメイドとして雇われました。」


「またメイド!?ジャックのやつ……ハーレムかなんか作ろうとしてない!?」


「ははは、そんなことないと思いますよ。それにセブンは俺よりも強いので、期待していいと思います。」


「うへぇ……魔王城のメイドさんってどうなってるの?採用条件がキミより強いとか?」


「いえ、いたって普通ですよ?」


「それにしては強いのが集まってると思うけどなぁ。……ま、いっか。じゃあ今回の依頼について説明するね。」


 そしてリルは今回発生したというキメラについての情報を話した後、俺とラピス、セブンの役割についても話し始めた。


「魔王様達はもちろんキメラに集中してもらっていいんだけど、国境は踏み越えないように。キミ達は周りを警戒しててね?」


「わかっておる。」


「わかりました。」


 まぁつまりはヒュマノから何かしらちょっかいをかけてこないかしっかりと警戒していてほしいということだ。それと、間違ってもアルマ様達が国境を踏み越えないようにサポートするのが今回の仕事だな。


「それじゃあ頼んだよ?」


「任せてよ!!もうちゃっちゃと倒してくるから。ねっ?カナン、メア?」


「うん!!」


「早く終わらせてパパに褒めてもらう。」


 そしてメアがトンと床を足で叩くと俺達の真下に魔法陣が現れ、光を放っていった。

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