第249話 秘めたる力
メアの魔法陣によって飛ばされてきた場所は、荒野という言葉がよく合う場所だった。
まぁ国境の近くなんてこんなもんか。
辺りをキョロキョロと見渡していると、国境を越えた先になにやら見張り台らしき建物が幾つか見える。そこではヒュマノの兵士らしき人間達が双眼鏡のようなものを覗き込んでこちらを見つめていた。
「監視されてるな。」
まぁ国境付近に俺達が突然魔法で現れたんだ、警戒するのは当たり前だが……。ここに来る前にナインから聞いたあの情報が頭に入っている今だと、なにやら違うものを見るために双眼鏡を構えているのではないかと思ってしまうな。
そう怪しんでいると、後ろからセブンが声をかけてきた。
「マスター、こちらに急接近する生体反応を捉えました。」
「数は?」
「3体です。」
「わかった。」
はしゃぐアルマ様達を引率するラピスが一瞬こちらを向いた時にハンドサインで3体近づいてきてるということを知らせると、彼女は理解しひとつ頷いた。
そしてそれと同時にアルマ様達もこちらに向かってきている気配に気が付き、臨戦態勢に入った。
「二人とも、来たよ!!」
「うん!!」
「わかってる。」
「おぬしら、くれぐれもこれより右に踏み出すでないぞ?」
「わかってる~!!」
そうラピスが声をかけた直後、ドン!!という地響きが三度響き、アルマ様達の前に3体の異形の魔物が降り立った。
ナインが言っていた通り、異なる魔物同士を掛け合わせた結果、このような異形の肉体になってしまったのだろうな。
しかし、そんな異形の魔物に怯むほどアルマ様達は弱くはない。むしろ少し強そうな魔物を前に笑みを浮かべていた。
「なんか強そ~!!」
「あ、アルマちゃん油断はダメだよ?」
「わかってる~!!メア、サポートよろしくね!!」
真っ先にアルマ様は自分の武器であるレヴァを手にして魔物へと向かっていく。そして3体のうち1体の身体を操っていた真っ二つに切り裂いた。
「1匹討伐~。さぁ、次行くよー!!」
1体を討伐したことを確信し、次の魔物へと標的を変えたアルマ様だったが、そこでメアが声をあげる。
「アルマ!!危ない!!」
「へ?」
驚くことに、真っ二つに切り裂かれた魔物がとんでもない速度で再生し再びアルマ様へと襲いかかったのだ。
突然のことに呆気にとられていたアルマ様だったが、メアの魔法がそんな彼女を守るように大地が盛り上がり壁を作った。
「うわ~、助かったよメア。こいつら再生するんだ。」
大地の壁が攻撃を防いだその隙に一瞬でアルマ様はキメラ達から距離を取った。
その一部始終を見つめていた俺は、再びヒュマノの見張り台の上にいる兵士に目を向けた。すると、やつらは何かをメモしていた。
(……やっぱり怪しいな。)
「セブン、あそこにいる人間の手の動きで何を書いてるか分析できないか?」
「可能ですマスター。」
すると、セブンは機械仕掛けの翼を広げる。それと共にキン……という甲高い音が辺りに響く。
「マスター、読み上げます。」
「頼む。」
「魔の国のハンターが実験体と戦闘を開始…………一撃で体を分断されるも瞬時に再生。再生型の魔物との配合は成功の模様。……とのことです。」
「はぁ……わかった。」
「継続して筆跡を探りますか?」
「いや、もういい。それよりもこれ以上やつらに情報を渡さないようにする方が先決だ。セブン、やるぞ。」
「了解しましたマスター。」
そして武装を展開し、槍を手にしたセブンと俺は前に出た。
「アルマ様、大変申し訳ありません。少し事情が変わりましたので、これよりセブンと俺で魔物を殲滅します。」
「え?なんで?どうしたの?」
「それは後程お伝えします。……ラピス、アルマ様達を頼んだ。」
「わかった。ほれ、少し下がっておるぞ。巻き込まれては困るからな。」
「え~、もうちょっと戦いたかったなぁ~。でもしょうがないかぁ。」
そしてアルマ様達が少し離れた場所へと移動したことを確認すると、俺は久しぶりにナイフのアーティファクトを抜いた。それと共にセブンが声をかけてくる。
「マスター、再生型との掛け合わせのキメラですので2度と再生できないほどの攻撃が必要です。」
「わかってる。」
久しぶりにナイフのアーティファクトに魔力を注ぎ込むと、それがドクンと脈打ち、みるみるうちに真っ黒な刀のような形へと変貌していく。
「お?」
前までこんな変化はなかったんだが、魔力を少し注ぎすぎたか?
まぁいい……握りやすくなった。
両手でナイフのアーティファクトを握ると、頭の中に声が響く。
『アリス流剣術のスキルを確認。スキルレベルに応じた性能を解放します。』
「ん?」
なんか新しい力でも解放されたのか?
「マスター、来ます。」
「あ、あぁ。」
まぁいい、やることはひとつだ。俺は刀のようになったアーティファクトを横凪ぎに一閃すると、ポツリと呟いた。
「
それと同時に目の前の3体の魔物が一瞬にして砂粒ほどの大きさまで切り刻まれ地面へと転がった。
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