第239話 二度目の襲撃
ステラがこの国に住み着いてから少しの間は、ヒュマノも特に目だった動きは見せず平和な日常が続いていた。
だが、そんな日常はふとした時に崩れ去ることになる。
今日も今日とてナインとスリーと戦闘訓練に励んでいた俺。だいぶ剣の扱いにも慣れてきて、ようやくナインと互角に打ち合えるようになってきていたところだ。というのもまぁ龍昇華を食べて色々なステータスが大幅に上がったお陰だが……。
そしてナインと剣を交えていると、ふとナインが視線を反らしながら俺の剣を弾き、トン……と後ろに下がった。
「ん?どうしたナイン?」
「……マスター、カーラさんから通信が入りました。繋ぎます。」
そうナインは口にすると、空中に画面が現れ、そこにはなにやら焦った様子のカーラの姿と平然と紅茶を嗜むステラの姿が映っていた。
「カオル!!またエルフにヒュマノが攻め込んでる!!前回とは非にならないぐらいの大群らしい、今リル達がエルフと協力して前線を抑えてるらしい!!」
「なんだって!?」
また懲りずに攻めてきたか……。黙って見過ごすわけにはいかないな。
「アタシとステラも今から向かう!!カオルも来てくれるかい?」
「もちろんです。ナイン、頼む。」
「了解しましたマスター。」
そしてナインが空間を切り裂き、エルフの集落へと道を繋ぐ。それを通ろうとすると、トレーニングルームにスリーが飛び込んできた。
「待ってくださいマスター!!」
「スリー?」
「今しがたスリー達と同じ反応をエルフの集落周辺で検知しました。もしかすると起動済みの
「アンドロイド……ナインとスリーとはまた違うやつか。」
「恐らくは
「なら尚更急がないとな。ナイン達と同じ力を持っているアンドロイドはエルフ達とリル達が力を合わせても止められない。」
急いでナインが切り開いた空間へと足を踏み入れる直前、スリーが言った。
「マスター、
「あぁ、わかった。」
要は俺の方が優れてる……って見せつけてやれば良いんだろ。やってやるさ。
そした俺とナインとスリーはエルフの集落の近くへと転移すると、すぐに戦闘音が近くで聞こえてきた。前線は近いらしい。
「一応こいつは着けてかないとな。」
俺は収納袋からクリスタにもらったペンダントを取り出して首から下げた。
「マスター、反応はこの先です。急ぎましょう。」
「あぁ。」
走ってアンドロイドの反応があるという方向へと向かうと、そこには既に魔物へと姿を変えた人間達と戦うリル達の姿があった。
「スリー、ナイン、俺は前線を切り開く。カバーしてくれ。」
「「了解しました。」」
その声と共にスリーはシュッと姿を消す。そして俺とナインは剣を手にすると入り乱れている前線のど真ん中へと向かって突っ込んでいった。
「ふっ!!」
仲間であるリル達魔物ハンター達とエルフ達を巻き込まないように、正確に剣を振るい魔物へと姿を変えた人間達を一刀両断していく。
ナインと位置を変えながら前線を切り開いていると、彼女が俺に背中を預けて言った。
「マスター、お気づきですか?」
「あぁ?なにが?」
「この変異した魔物……前回マスターが倒した魔物とは少々違うようです。うなじの部分に異物が生えています。」
「うなじ?」
ナインに言われるがまま、魔物達のうなじへと目を向けてみると、そこには冬虫夏草のような見た目のキノコのようなものが生えていた。
「あれか……。」
試しにうなじから生えていたそれのみを切り落としてみると、変異した魔物は先程までとは違い見境なく暴れ始めた。
「なるほどな。」
「マスター、恐らくこの変異した魔物達はあれによって操作されているものかと思われます。」
「ならあれを引っ付けたヤツがどこかにいるってことだな。」
そいつを探しだす前にここを一旦落ち着かせないとな。
敵陣のど真ん中でひたすらに魔物を切り刻む俺とナイン。そして正確に一体ずつ後方からスリーが銃で魔物の急所を撃ち抜き仕留めていく。
そうして奮戦していると、崩壊していた前線を大きく押し上げてきたリル達と合流できた。
「あっ!!キミっ!!」
「リルさん、被害の方は大丈夫ですか?」
「今のところは少し怪我人が出たぐらいで済んでる。カーラ達も来てくれたし、これならなんとかなりそうだよ。」
「そうだと良いんですけど……。」
「……??何か不安なの?」
俺がすこし不安を抱きながらそう呟いた瞬間だった。
ドンッ!!という轟音とともに、巨大な槍が地面に突き刺さる。その見た目はどこか見たことのある機械仕掛けのものだった。
「来たか。」
その槍の上から機械の翼を生やしたアンドロイドがゆっくりと地上に降り立った。その姿はまるで神話に出てくるヴァルキリーのような出で立ちだ。
そして彼女は自分の槍を手に取るとナイン達と同じ色の瞳をこちらへと向けてきた。しかし何か様子がおかしい。
「
そう彼女が口にしていたその時、森の中に声が響いた。
「
「
すると、彼女は再び槍を構える。
「おい、ナイン。あれ何かおかしいぞ。」
「はい、マスター。あれは
槍を構えているアンドロイドのうなじに目を向けるとそこら辺の魔物についていたものよりもはるかに大きな物体が生えていた。
「恐らくあれで強制的に行動させているのかと。」
「ならあれを切り落とせば終わりだな。」
「
「ナイン、スリーと一緒にリルさん達のカバーを。俺はあいつの相手をする。」
「承知しましたマスター。ですがお気をつけ下さい、
「あぁ、わかった。」
空中戦か、ちょうど良い……同じ土俵で戦ってやる。
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