第231話 部分龍化
ナインとスリーのメディカルチェックを受けた後、二人から俺はあることを告げられた。
「マスター、メディカルチェックの結果ですが……ナインとスリーの想定よりも遥かに早く、そして強く……龍昇華の効果が現れています。」
「つまり、俺は異例ってわけか。」
「いえ、異例……というよりも龍昇華の情報が少なすぎるのです。龍昇華の存在はナイン達が造られるよりも遥か昔から存在が知られていましたが、それを口にした人物のデータがほとんど残されていないのです。」
「なるほどな、つまりまぁ……ナイン達のデータの中では俺は異常な速度で体に龍昇華の効果が現れてるってことか。」
「そういうことになります。もしかすると過去……データに残されていないだけで、マスターと同じような速度で龍昇華の効果が体に馴染んでいた人物もいたのかもしれません。」
「ふむ……。」
「一応データに則った話になりますと、そろそろマスターは体の一部を変化させたりできるようになっていてもおかしくはないはずなんです。」
「体の一部を?」
「はい。」
体の一部を変化させる……って、魔王城が襲撃されたあの時みたいにってことか。
「変化させるって言ったって……なぁ。」
あれか?魔法を使うときみたいに頭のなかで意識してみれば良いのかな?
確か、あの時俺の腕は……真っ黒な鱗に覆われてて……。
あの時見た光景を意識していくと、俺の手がみるみるうちにビキビキと音を立てて変化していく。
腕が黒い鱗で覆われ、爪が凶悪な形へと変化し、それこそラピスが龍の姿になったときのような腕へと変化する。
「おぉ!!できた。」
意外にすんなりできるもんなんだな。これも体にどんどん龍昇華が馴染んでいる証拠か。
「黒い鱗……マスターが初めて体を変化させたあの時と同じですね。」
「あぁ、それと……一つ疑問なんだが、この鱗の色ってのは……なんか種族とかそういうのとかと関係があったりするのか?」
「いえ、そういったデータはありません。ですが、今までのデータで黒い鱗を体に纏わせていた人物というのは、マスターが初めてです。」
「ほぉ~……。」
「データで残っているのは赤色と青色……そしてごく少数ですが白色ですね。」
「その色によって能力が違ったりするのか?」
「します。赤色は炎を操る力が強くなり、青色は魔力が増幅します。そして白色は身体能力が大きく増幅していると、データにありますね。」
「じゃあ俺の黒い鱗のデータはこれから記録されていくってわけだ。」
「そういうことになります。ですが、今のところこれといってマスターには身体能力の向上以外に目立った特徴が見られないんです。」
「これから現れるんじゃないか?」
「そう思いたいところなのですが……。」
ナインは一瞬言葉につまる。
「今までのデータでは体の一部を変化させることができるころには、能力が突出しているのです。マスターの鱗が黒色なのも気になりますし、能力が現れないのも疑問なのです。」
「う~ん、まぁなんか稀なケースを引いたってことにしとけばいいんじゃないか?能力が現れないのだってただ大器晩成型なのかもしれないしな。それに、この龍昇華ってやつが体に馴染んだからといって死ぬわけじゃないんだろ?」
「データでは龍昇華の効果が完全に発揮されるまでに死に至った情報は確かにありませんが……。」
「なら大丈夫だ。ちょっとステータスにおまけがついたぐらいって考えとくさ。」
「……わかりました。ですがマスター、何かお体に変化があればすぐにナインかスリーにお伝えください。」
「わかったよ。」
そしてメディカルチェックを終えた俺がベッドから起き上がると頭の中に声が響いた。
『新たなスキル
(部分龍化……か。さっきのやつだな。)
これは色々と使い道がありそうだから、後で使い方を試してみようかな。
新たに獲得したスキルに好奇心をそそられながらも、俺はアルマ様達に料理を作るため厨房へと赴くのだった。
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