第216話 Newメイド エンラとソニア


 そして翌日からエンラと、彼女の従者であるソニアがこの魔王城でメイドとして働くことになった。


「あ、あの……エンラ様?なぜ私たちはこんな格好に?」


 メイド服姿で困惑するソニアは、同じくメイド服を着こなしているエンラへと問いかける。


「昨日ちょっとこのお城を壊しちゃったのよ。それの埋め合わせ。ワタシも詳しくはわかんないけど、なんかこの服を着ながら色々やらないといけないらしいわ。」


 メイド服を着た二人が話していると、そこに先輩メイドであるスリーとナインの二人が合流する。


「あなた方が本日より同じ業務をこなす方ですね?」


 一番の古株であるナインが二人に向かって問いかけた。


「そうよ、メイドってのはよくわかんないけど。まぁよろしく頼むわね。ワタシはエンラ、こっちの娘はソニアよ。」


「私はこの城のメイド兼マスターの守護者のナインです。」


「同じくスリー。」


 四人は軽い自己紹介を終えると早速一日の始まりの業務にあたることになる。


「それではまず本日は1日の業務の流れを覚えて頂きましょう。私たちに着いてきてください。」


「わかったわ。」


 そしてナイン達はまずこの城の城主であるアルマ様の部屋へと向かう。アルマ様の部屋の前に着くと、ナインが説明を始めた。


「まず最初の業務はベッドメイキングです。」


「「ベッドメイキング?」」


 ナインの言葉にエンラとソニアは首をかしげた。


「このお城の主である魔王、アルマ様が起床した後のベッドを整える作業です。やり方はナインがやるのを見て学んでください。」


 そうして、ナイン達はアルマ様の部屋へと入る。すると、起きて間もないアルマ様が部屋の中にいた。


「ふぁぁ……おはよー。ナインとスリー…………と、あれ?そこの二人は誰?」


「アルマ様、こちらの二人は本日よりメイドとして働くことになった方々です。」


「エンラよ。」


「ソニア……です。」


「エンラと~……ソニア?よろしくね~。」


 アルマ様に初めて会ったエンラとソニアは軽い自己紹介をかわす。すると、アルマ様は半開きの目を擦りながらナインに問いかける。


「ナイン~、今日の朝ごはんなに~?」


「マスターからはオムライス……と聞いております。」


「わっ!!オムライスなんだ!!アルマ大好物なんだよね~♪」


 ルンルン♪と鼻唄を歌いながらアルマ様はスキップして部屋を飛び出していく。それを見送ったナイン達は早速業務に移った。


「では、ベッドメイキングのお手本をやってみせますので、よく見ていてください。」


「わかったわ。」


 すると、ナインは手慣れた手つきでささっとシーツを取り替え、あっという間にベッドメイキングを終えてしまう。


「このような感じです。わかりましたか?」


「いや、ちょっと早すぎてなにがなんだか……。ソニアはわかった?」


「い、いえ……私も理解できていません。」


「そうですか、これでも遅くやったつもりなのですが……。」


「あれで!?」


「はい。普段よりもかなりゆっくりやりました。まぁ、こういうものは習うよりも慣れた方が良いでしょう。時間はありますので、お二人ともやってみてください。」


「う、わ、わかったわ。」


 そしてエンラとソニアの二人はナインとスリーの指導を受けながらメイドの仕事を一つ一つ叩き込まれていく。


 時間がかかりながらも朝にやるべき仕事を一通り終えた彼女達は今度は別の場所へと向かう。


 その道中……ソニアがナインに問いかけた。


「今度はどこにつれていくのかしら?」


「これから厨房へと向かいます。あなた方二人は私達とは違って、エネルギーを摂取しなければいけませんからね。マスターのお言葉をお借りすると、まかない飯の時間です。」


「「まかない飯?」」


 またまた聞いたことの無いワードに首をかしげていた二人。


 そんな二人を連れてナインとスリーが厨房へと入ってきた。


「マスター、二人をお連れしました。」


「ん、ちょっと時間がかかったな。」


「それで?ここで今度は何をするのよ。」


「何をするも何も……二人とも朝ごはんまだ食べてないだろ?」


「お、おい!!エンラ様になんて言葉遣いを……。」


 俺がそう口にすると、噛みつくようにソニアが口を開く。すると、エンラが彼女をとめた。


「いいのよソニア。だって、ここでの年功序列はあなたの方が上だもの当然よ。」


「わかってもらえたようでなにより、それじゃそこに座ってちょっと待っててくれ。」


 俺は二人に先程までアルマ様達がご飯を食べていた場所に座るように促すと二人分のオムライスを作った。


「ほい、オムライスだ。おかわりはあるからたくさん食べてくれて構わないぞ。」


「じゃあ遠慮なく頂きましょソニア?」


「は、はいエンラ様。」


 そしてスプーンで大きくオムライスを掬い上げ、口に運んだ二人。


「~~~っ!!おいしっ……朝から贅沢してる気分だわ。」


 バクバクとあっという間に食べ終えたエンラとは別に、まじまじと味わうように……というか探るように食べていたソニア。


 そういえば、ソニアは龍闘祭のとき料理で誘惑したことに怒りを覚えていたな。せっかくしばらくの間ここで過ごすのなら、彼女に料理の基本ってのを教えてみてもいいかもしれない。


 まぁ、それも彼女が望めば……の話だが。


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