第200話 ラピスのお願い?


 アルマ様やカナン、そしてメアまでもが成長を遂げてから幾日か日が経ったある日……突然俺の部屋にラピスが訪ねてきた。


「カオル、ちと良いかの?」


「ん?ラピスか、改まってどうしたんだ?」


 ラピスがこうして改まって訪ねてくることは珍しい。何があったのだろうか?


 俺は彼女を部屋の中に招き入れると、一先ずお茶をだした。


「感謝する。」


「ほんで?何があったんだ?」


「うむ、今回おぬしを訪ねた用件なのだが……実は近々五龍会合があってな。」


「五龍会合?」


「我が五老龍が一角であることは知っているだろう?」


「あぁ。」


「10年に一度、我らが一堂に会する場があるのだ。それが明日開かれる。」


「ほぉん?んで、それに行くから留守にする……って事か?」


「いや、そうではないのだ。その会合に我の立会人としておぬしを連れていきたいのだ。」


「はい?」


「五老龍は我のような例外を除き、皆自分に付き従う龍の筆頭になっている。昔から会合には一人付き人をつけることが許可されているのだ。」


「つまり、今回ラピスは俺のことを付き人として連れていきたいってことか?」


「そういうことだの。」


「まぁ、別に行くだけなら構わないが……。」


 特に明日予定があるわけでもないし、アルマ様達の料理は作り置いておけばいいしな。


「今まではラピスは一人で行ってたんだろ?」


「うむ。我は何者かを率いることは嫌いだったからな。」


「それがなんでまた、急に俺を連れていこうと?」


「よくぞ聞いてくれたな。我以外の五老龍どもはいつも自分の強さを誇示するために、自分の右腕を連れてくるのだ。カオル、おぬしならば実力も充分。」


「なるほどな。」


「だが、我の目的は別にある!!」


「ほぉ?」


「むっふふ、我は他の龍が羨む表情を見たいのだ。それで、カオルよ我に美味い弁当を作ってはくれまいか?」


「…………んん?それと他の龍が羨むことに何の関係があるんだ?」


「決まっている。我がやつらの前でおぬしの美味い飯をさぞかし美味そうに喰う……さすれば他の龍どももおぬしの飯が食いたくて仕方がなくなる。」


「そう上手くいくか?」


 他の五老龍がラピスみたいに食欲に素直だとは思えないんだが。


「むっふふ問題ない。他の龍どもは我のように舌が肥えておらん。故に生の肉の味しか知らんのだ。」


「それなら……まぁたしかに上手くいくかもしれないが。」


「そして奴等が羨んでいるところで、我が喰っていた弁当と同じものを他の龍どもにも喰わせてやるのだ。二度とカオルが作った飯の味が忘れられなくなるように……な。」


 くつくつとラピスは悪い笑みを浮かべる。なかなか考えていることはえげつない。


 ちゃんとした料理というものを知らないやつに俺の作る料理を食べさせてやれば……普段食べている生の肉とかは食えなくなるだろう。


 ラピスの言っていることを実現させるなら、脳の記憶に張り付いて離れなくなるような料理を考える必要がありそうだが、意外と……料理というものを知らないやつには単純で、美味しい物の方が記憶に残りやすい。


「で、ラピス狙いはわかったんだが……。そんなことをして何の意味がある?」


「無論意味はある。我がおぬしという戦闘力もあり、尚且つ優秀な者を従えているという証明になる。」


「……まぁわかった。やるだけやってみるよ。」


「うむ!!頼むぞ!!」


 首を縦に振ると、彼女は嬉々とした表情を浮かべる。そして次に口を開いたときとんでもないことを口走る。


「あ、そういえば言い忘れておったが……その~明日の五龍会合では従者同士の仕合もあるからの。」


「はっ!?仕合!?」


「うむ。」


「ほかの龍の……連れてきた奴と戦うってことか!?」


「うむ!!」


「……………それを先に言ってくれ。」


「むははは、すまぬ。すっかり忘れておった。」


 笑って済むことじゃないぞ……。龍と戦うことが決定してるじゃないか。


「ちなみに武器は?」


「無論使って構わぬ。殺しは無しだがな。」


 なら剣を使っても構わないな。龍相手だし……素手だと少しばかり厳しいだろ。


 こうして俺はラピスたち五老龍の会合に参加することになった。そしてラピスの右腕として他の五老龍の連れてきた従者達と仕合をすることになったのだった。

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