第196話 アリス流剣術
そして何体目かもわからないほどゴーレムを切り刻んでいると、突然……刃から斬擊のようなものが飛び、ゴーレムの体を突き抜けていった。
それと共に声が響く。
『熟練度が一定に達したため新たなスキル
「おっ?新しいスキルだ。」
このスキルについてる名前にはさっきナインが剣聖って言っていたアリスという人物の名前が入っている。恐らくは俺が今使っている剣の型が剣聖のアリスが使っていたものだからそういうスキルになったのだろう。
気になってステータス画面を確認してみると、そこにはパッシブスキルの項目にアリス流剣術Lv01と新たに追加されていた。
「01……ってことはもっと先があるってことか。」
ちょっとした斬擊が飛ばせるようになってようやくレベル1……レベルマックスになるにはどれだけのことができるようになればいいんだ?
と、疑問に思っているとナインが拍手をしながら口を開く。
「おめでとうございますマスター。
「
「先ほど斬擊を飛ばした攻撃が初の太刀と呼ばれる、アリス流剣術の始めの技です。」
「ほぉ?」
じゃあそれができるようになったから、アリス流剣術ってスキルが手に入ったってわけか。
試しに新たに湧いたゴーレムへと向かって遠距離から剣を振るってみると、剣が通った道筋から斬擊が放たれ、それがゴーレムの体をいとも容易く真っ二つに切り裂いた。
「おぉ~……。剣なのに遠距離攻撃ができるのか。」
しかも魔力を一切使っていない。こいつは使い勝手がいいな。
それに発動は自分が斬擊を飛ばす……という意識を持って剣を振るえば良いだけだ。単純だが強力な攻撃手段だ。
辺りに湧いてきたゴーレムを斬擊で一掃すると、俺はナインに問いかけた。
「なぁナイン?このアリス流剣術のスキルってマックスはいくつなんだ?」
「最大スキルレベルは11ですマスター。」
「11か。」
最大までレベルを上げるのにはなかなか時間がかかりそうだ。そんなことを思っていると、おもむろにナインは機械仕掛けの剣を取り出して湧いてきたゴーレムへと向かっていく。
「ナイン?」
「マスター、せっかくの機会ですので初の太刀の次の技をお見せしましょう。」
そう言うと、彼女は不自然なほどゆったりとした足取りでゴーレムへと向かっていく。そしてゴーレムがナインめがけて鋼鉄の拳を振り抜いたその瞬間だった。
確かにナインを捉えたはずだったゴーレムの攻撃は、ナインの姿を突き抜けて地面へと直撃する。その直後……ゴーレムの体は細切れになり地面に山となって積み重なった。
そのゴーレムの背後には既に剣を納めたナインの姿がある。
「マスター、今のが弐の太刀
「いったいどういうからくりなんだ?さっきまでたしかにそこにいたよな?」
「それはナインが生み出した残像ですマスター。」
「残像!?それって魔力使わないのか!?」
「使いません。特殊な歩法で一時的に自分の姿を残しているだけですので。」
「…………。」
あっさりとそう言ってのけたナインだが、当の俺は開いた口が塞がらない。
たしかに漫画とかアニメで特殊な歩法を使って残像を残したりだとか……そういうのは見たことがある。でも現実でそういうことができるなんて一ミリも思ってなかった。
「ちなみにその特殊な歩法ってのは?」
「いつもマスターに教えていますよ?」
「え?あの……まさか剣を構えるときのやつ?」
「その通りです。それを高速でやっているだけですよ。」
「………………。」
またしても開いた口が塞がらない。どう考えても人間業ではないからだ。
ナインはただ高速でやっているだけ……と言っているが、それがいったいどれだけ難しいことか。
しかし剣聖と呼ばれたアリスはナインのようなアンドロイドでもなく、それをやっていた……そう考えるとアリスがどれだけ人間離れしていたかがわかる。ってか普通に斬擊を魔力無しで飛ばせるだけで人間業じゃない。
弐の太刀でさえ大分人間離れしているというのに、スキルレベル的に考えて業が総計11あるって考えると…………。
いったい完全にアリス流剣術を取得するまでにどれだけの時間がかかるのだろうか。
軽く人間として一度一生を終えられるのではないだろうか?
これは後でその剣聖と呼ばれたアリスって人物について、よ~く調べる必要がありそうだ。
「さて、マスター。試し切りはほどほどにしてそろそろ戻りましょうか。」
「あ、あぁ。」
「そちらの剣の手入れもしなければなりませんからね。」
そして俺とナインは城へと戻った。
てっきり手入れというから刃こぼれがないか確かめたり、汚れがついていないかを確認する程度かと思ったが……。
俺が思っていた以上にナインが言う剣の手入れとは多岐にわたるものだった。
結局、剣を手にいれた初日は試し切りと剣の手入れだけで俺の1日は終わってしまうのだった……。
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