第5.5章 大きくなりたいメア
第186話 メアに連れられて
アルマ様とカナンが無事に成長を終えてから数日の時が流れた。すっかり大人びた二人に最初は困惑していたが、今では慣れたものだ。
しかし、そんな生活の中で、二人が自分を置いて成長を遂げていくのを黙ってみていられなかった人物が一人……現れた。
「ん~……っはぁ~。」
ゆっくりと俺はベッドから体を起こす。すると、いつの間にか起きていたメアが俺に股がっていた。
「お、おはようメア。」
「パパ、今日何も用事ないよね?」
「え?あ~……。」
買い物は昨日済ませてきたし……特にはないはずだ。
「多分ない……な。」
「じゃあ付き合って。」
「え?」
困惑する俺を余所に、メアは何かの魔法を詠唱し始めた。すると、突然真下に大きな魔法陣が現れる。
(この魔法陣はっ……。)
見覚えがある魔法陣が現れたかと思っていれば、次の瞬間には魔法陣から溢れだした眩い光に視界が包まれた。
「っ!!」
それとともにふわりと体が浮くような感覚……。間違いない、この魔法は
(いったいどこに連れていかれるんだ?)
そして次に目を開けると、俺はメアに深い森の中へと連れてこられていた。
「メア?ここはどこなんだ?」
「エルフの森。」
「エルフの森?エルフってあの耳が長い?」
「うん。この森の中にエルフのお家がある。パパ着いてきて。」
「え?ちょ、メア!?」
ぐいぐいと腕を引っ張られ、森の中を連れ回される。
しばらく森の中を突き進んでいると、巨大な丸太の柵で仕切られた場所にたどり着く。
「着いた。」
どうやらこの巨大な丸太の柵の向こう側がメアの目指している場所らしい。
そして扉らしき部分へと近寄って行ったその瞬間、視界の端でキラリと何かが光った。
「っ!!」
スリーによって訓練された俺の体は即座にそれに反応し、俺へと向けて放たれた無数の矢を手で掴みとった。
それと同時に辺りに生えている木の上から声が響く。
「欲深き人間、すぐにこの地を立ち去れ!!この森はエルフの領地だ!!」
チラリと声のする方に視線を向けてみれば、木の上に迷彩色のマントを羽織り、弓を構える耳の長い人達が……。
俺が言葉を発しようとすると、その前にメアが一歩前に踏み出して口を開いた。
「私はユニコーンのメア。この人間は私のパパ。悪い人間じゃない。」
「ユニコーン?幻獣様?」
木の上からどよめきが聞こえて来たかと思えば、先ほど俺に矢を放ち
「幻獣様、何用で私達の村を訪れたのですか?」
「
「れ、霊薬ですか……。」
「ダメ?」
霊薬と聞いたエルフの女性は途端に困惑した表情を浮かべた。
「一つお聞きしたいのですが……いったい霊薬を何に使うおつもりで?」
「幻獣は大人になるのにすっごく時間がかかる。だから世界樹の果実で作った霊薬の力で一気に成長したいの。」
「…………………。」
メアが自分の目的を話すと、さらにエルフの女性が困り果てた表情を浮かべる。
そしてどう答えるべきかエルフの女性が迷っていると、目の前の集落の扉が開き、衛兵らしきエルフ達に囲まれながら一人の美しい女性が姿を現した。
「リリア、幻獣様はわたくしがお相手します。下がりなさい。」
「はっ!!」
リリアと呼ばれたエルフの女性は道を譲るように端に避けた。
すると、沢山の衛兵を連れた女性はこちらに歩み寄ってくる。
「初めまして、わたくしはエルフの長……クリスタと申します。お二人のお名前をお伺いしても?」
「ユニコーンのメア。」
「カオルです。」
「ユニコーンのメア様に……カオル?どこかで聞いたことがある名前ですね。」
「パパは魔王城で料理作ってる。」
「あぁ!!ジャックの言っていた新しい雇い人とは貴方のことでしたか。」
「え?ジャックさんの事を知ってるんですか?」
ジャックの事を彼女が知っていたことに驚きつつも、俺はもう一つ……自分の名前がこんなところまで届いていたことに驚きを隠せなかった。
「フフフ、えぇ……彼とは長い縁ですよ。ジャックが見定めた貴方なら拒む理由はありませんね。お二人ともどうぞ中へ。詳しいお話はわたくしの家で伺いましょう。」
そして俺とメアはクリスタというエルフ達の長に連れられ、エルフ達が住んでいる集落へと足を踏み入れるのだった。
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