第185話 成長する二人
アルマ様とカナンが光に包まれると、その光景を眺めていた俺達のもとにジャックが訪れた。
「ホッホッホ、今までとは非にならないほどの強大な力をお二人から感じますな。」
「ジャックさん?」
「カオル様、此度のダイミョウウオ討伐お疲れ様でございました。これでまた魔王様はお強くなられます。」
そして二人を包み込んでいた光が弾けると、その中から大きく成長した二人が姿を現した。
アルマ様は前よりもかなり身長が伸び、頭に生えていた角は羊のような巻角に……腰からは前の成長の時に生えた尻尾の他に真っ赤な翼膜のコウモリのような翼が生えている。
一方カナンも、アルマ様と同じくかなり背が伸びていた。カナンは人間ということもあり、アルマ様のように魔族的な特徴が現れるような成長はないみたいだ。
あと、二人に共通して言えるのは……うん、いろんなところが大きくなって、
そう考察していると、アルマ様がこちらへと上機嫌で歩み寄ってくる。そして俺とジャックの前で立ち止まった。
すると、ジャックは忠誠を誓っていることを示すかのようにアルマ様に向かって膝をつく。
「ご成長おめでとうございます魔王様。」
「うんうん、ありがとねジャック。いつも助かってるよ。」
「ありがたきお言葉……。」
ジャックにそう告げると、今度はアルマ様は俺の方を向いた。
「カオル?」
「は、はい。」
俺の名前を呼んだアルマ様はにっこりと笑うと、おもむろに俺の頬に唇を当ててきた。
「~~~っ!?!?」
「いつもありがとってご褒美だよ。ちょっと恥ずかしかったけどね~。」
その行動に出たアルマ様はにこやかに笑いながらも、顔が真っ赤に染まっていた。
俺が呆然としていると、彼女に詰め寄る人物が三人……。
「お、おぬしっ!!急に我のカオルに何をするのだ!?」
「アルマちゃん!!そういう抜け駆けはよくないよ!!」
「アルマ、今のは見過ごせない。」
「あはは~、こういうのは早い者勝ちっ♪」
アルマ様は詰め寄ってきたラピスとカナン、そしてメアの三人を軽くあしらうと、俺に向かってパチリとウインクして、また料理を味わい始めた。
「ぐぐぐ……か、カオル!!おぬしは我の物だということを忘れるなよ!!」
「ぼ、ボクのことも見てくれなきゃダメですよ?」
「ダメ、パパはメアのもの。浮気はダメ……。」
「………………。」
呆然とする俺に三人は口々にそう告げると、食卓へと戻っていく。そしてまたさっきのことをアルマ様とギャーギャーと騒ぎ始めた。
「ホッホッホ、カオル様よかったですなぁ。」
「い、いや……なにがなんだかさっぱり……。」
「魔王様はカオル様が自分のものであると誇示したかったのでしょう。大胆な行動でしたが、それもクイーンサキュバスの血が魔王様を突き動かしたのかもしれません。」
「なるほど?」
なぜアルマ様があんな行動に出たのかは俺にはわからない。ジャックの言うとおりクイーンサキュバスの血がそうさせたのだろうか?
その日の夜、俺はスリーとナインに呼び出された。例のメディカルチェックというやつだろう。
「ではマスター、メディカルチェックを始めますのでこちらのベッドに上着を脱いで横になってください。」
「わかった。」
言われた通りに上半身になり、ベッドの上に横になると、二人はてきぱきと俺の体に何かを張り付けていく。
「これは?」
「マスターの体内をスキャンする機械です。スキャンしたデータはスリーとナインの
「そうか。」
「痛みを伴う作業はありませんので、マスターは力を抜いて横になっていてください。」
「わかった。」
スッと目を閉じると、二人が同時に口を開く。
「「メディカルチェック、スタート。」」
そして数十分後……。
「マスター、目を開けてください。」
「ん。」
目を開けると、そこには変わらずスリーとナインの姿があった。
「メディカルチェックは終了です。お疲れ様でした。」
「あぁ、ありがとう。それで?何か異常はあったのか?」
「やはりマスターのスキルは脳に少し負担をかけているようですね。スキルの連続使用や長時間の使用は避けたほうがよろしいかと。」
「わかった。」
「後程詳しくデータをスリーとナインで分析しますので、異常がわかればその都度お知らせします。」
「頼んだ。」
そして俺はスリーとナインに別れを告げて自室へと戻り、眠りにつくのだった。
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