第184話 ダイミョウウオを食卓へ
ギルドにラースホエールらしき魔物を預けた俺とカナンは真っ直ぐに城へと戻った。
すると、城門の前でナインとスリーの二人が俺達のことを待っていた。
「「おかえりなさいませマスター。」」
「あ、あぁ……。まさかずっと待ってた……のか?」
「いえ、マスターがこちらに近付いてくる反応を検知して、少し前からお待ちしておりました。」
俺が問いかけるとナインがそう答えた。
「そうか。」
「マスター、既に皆様方が中でお待ちです。」
「あぁ、わかった。」
ギルドに寄ったから時間が時間だ。もう夕食時……アルマ様やラピス、メア達ががさぞお腹を減らしていることだろう。
そして城の中へと入ろうとしたとき……突然スリーに背後から手を引かれた。
「マスター。」
「ん!?スリー?」
「本日の夜、就寝前にマスターのメディカルチェックを行います。」
「へ?」
唐突にそう言ったスリーに思わず首をかしげていると、彼女は続けて言った。
「隠しても無駄ですマスター。スキルを過剰使用しましたね?」
「な、なんでわかった?」
「鼻腔の奥にわずかに血液が固まった痕跡がありました。スキルの過剰使用によるマスターへの体への負担に関してはまだ正確なデータがありません。情報収集とともに、マスターの体に異常がないかを調べます。」
「それって俺に拒否権は……。」
「ありません。ナインとスリーの二人で体の隅々まで調べさせていただきます。」
「はぁ、わかったよ。」
まぁ、俺自身自分の危険予知というスキルについてわかっていることは少ない。わかっているのは自分か、親しい誰かに危険が迫った時に時間の流れが遅くなったり止まったりする。そして連続で使いすぎると鼻血が出る。大雑把に言うが実際把握できているのはこの二つぐらいだ。
二人にメディカルチェックとやらをしてもらって、もしこのスキルについて何か新しいことがわかれば儲けもの……か。まぁもともと俺に拒否権はないって言われてる時点で、二人が強制的にメディカルチェックをしてくることは間違いない。ここは素直に受け入れよう。
「理解していただけたようで何よりです。それでは後程お部屋の方にナインとともに伺います。」
「あぁ。」
そして二人と別れて城の中へと入り、真っすぐに厨房へと向かうと、すでにそこにはアルマ様たちの姿があった。
「あ!!カオル、カナンお帰り~!!」
「む、帰って来たか。」
「パパ、カナンお帰り。」
三人に出迎えられながら、俺は調理台の前に立つと大きなまな板の上に先ほどギルドで少し解体して小さくしたダイミョウウオを収納袋から取り出した。
巨大な魚体を前に三人の口からは思わず、おぉ~……という声が漏れている。
そしてダイミョウウオの向こうからアルマ様の少し興奮気味な声が聞こえてきた。
「これがダイミョウウオ?すごくおっきいね!?」
「アルマちゃん、本当はもっと大きかったんだよ?」
「ホント!?これよりももっと大きかったの!?」
「うん!!」
今日討伐したダイミョウウオのこと……そしてあのラースホエールらしき魔物のことをカナンはアルマ様たちに聞かせていた。その横で俺はてきぱきとダイミョウウオを捌いて一品一品の料理へと仕上げていく。定番のお造りはもちろん、寿司に塩焼きや煮つけ等々……このダイミョウウオでできる限り作れるレパートリーの料理をみんなの前に並べていった。
「ふぉぉぉぉっ!!なんともなんとも美味そうな料理がこんなにも……流石図体がデカかっただけあって、料理も種類豊富だの。」
興奮しながらラピスは言った。
ちなみにこれだけの数の料理を作っても、まだ半身残っている。あと一回はダイミョウウオのフルコースが作れそうだ。
そして俺が料理を作り終えたところで、アルマ様たちはいっせいに手を合わせた。
「カオル、もうたべてもい~い?」
「もちろんです。どうぞ召し上がってください。」
「ありがとー!!それじゃあ……。」
「「「「いただきまーす!!」」」」
その掛け声とともにみんな一斉に料理を食べ始めた。美味しそうにみんなが食事を食べ進めている最中、アルマ様とカナンの二人の体にいつもの変化が現れる。
「「あっ!!」」
二人がそれに気が付くと同時に、二人の体は光に包まれていた。
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