第176話 みんなで囲む食卓


 キノコの魔物を大量に討伐し、ギルドにある程度の数を収めたアルマ様たちはお昼の時間も近いことから、報酬だけを受け取って真っすぐにお城へと戻る。


 俺は早速倒してきたキノコの魔物を厨房へと運ぶと、まず解体から始めた。


「手足はいらないよな。」


 さすがに手足を料理の中に入れるのは……かなりグロテスクな料理になる。食べられるかもしれないが、これは落とそう。

 手足を落とすと、すっかり大きなキノコの様な見た目になった。


「まぁまずは半分にして……ちょっと切り分けてみるか。」


 半分にしてもまだデカい……。とりあえず使いやすいように一口サイズに切りそろえる。そして俺は味を見るために一切れを熱く熱したフライパンでソテーする。軽く焼き目がついてくると、何とも香ばしい香りが漂い始めた。


「うん、結構香りはするな。ポルチーニ茸に近い香りがする。」


 松茸のような香りとは違いどちらかと言えば……ナッツを炒っているような香りがする。これはなかなか味も楽しみだな。


 そして焼きあがったそれに軽く塩をかけて口の中に放り込むと、香ばしい香りが口いっぱいに広がって、濃厚なキノコの旨味がじゅわっと口の中に溢れ出す。食感も火を通しても割とコリコリしてて良い。


「美味い。これならなんにでも合うな。」


 でもまぁ無難に今回はお昼ってこともあるし、こいつを使ったクリームパスタでも作ろう。


 それでもかなりの量が残ると思うが……残った分は天日干しして乾燥させて保存しておこうかな。一回水分を全部乾燥させてしまえば腐ることは無いし、いつでも使えるようになるだろう。


「まずは食材の下ごしらえから始めるか。」


 今回のクリームパスタに使うのは、まずメインにこのキノコ。それでベーコンと玉ねぎ。キノコは切ったからあと切るのはベーコンと玉ねぎだけだな。


 ベーコンは長方形の棒状に厚く切り、玉ねぎはある程度の厚さにスライスする。


 材料を切り終えた俺は大きな鍋にお湯を沸かし、その隣で先ほど切った材料を炒めていく。材料を炒めるイメージは、オリーブオイルでベーコンに焼き目をつけながら、キノコと玉ねぎを炒めるって感じ。キノコがベーコンから出た脂と旨味を吸って、玉ねぎがしんなりしてきたらそこに生クリームを入れて混ぜながら粉チーズと塩、コンソメで味を決める。


 これでパスタソースは出来上がりだ。


 あともう少しでパスタ茹で上がるという時間に、招かれるように浴場で汗を流したアルマ様達が厨房に雪崩れ込んできた。


「いい匂い~!!お腹減った~!!」


「今日はパスタなんですね。」


「パパの作る料理なら何でも食べる。」


 三人の後に続くようにラピスも姿を現した。


「クンクン……何やら懐かしい香りがするな。キノコを焼く良い香りだ。」


 鼻を鳴らしながら此方へと近付きながらラピスは言った。


「今思えば、ラピスと初めて出会った時もキノコを料理したな。あのときは弁当は食われるわ、デカイドラゴンが現れるわで頭のなかが混乱してた記憶があるな。」


「あの時の弁当は美味かったぞ?量こそ少なかったがな。」


 そう言ってラピスはくつくつと笑う。


「その感想は前にも聞いたよ。」


 ラピスとそんな軽口を交わしている間に、パスタは茹で上がる。それを先程作ったクリームソースと合わせて仕上げた。


「ほら、ラピスできたら座ってくれ。」


「うむ!!我のは大盛りで頼むぞ!!」


「はいはいっ。」


 いっつも大盛りで盛ってるんだけどな……。それでも彼女は必ずおかわりをする。まぁ、それはアルマ様達も同じだが。少しだけ違う点がある。それはアルマ様達は恐らく成長期ということで、たくさん食べる。だが、ラピスはただの大喰らいということだ。


 まぁ、みんなおかわりすることを予測して予め多く作ってはあるんだが……。


 そして俺は皿に盛り付けたパスタをお腹を空かせているアルマ様達のもとへと運んだ。


「お待たせしました。キノコクリームパスタです。」


「来たっ!!みんな食べよ食べよ?もうアルマお腹ペコペコだよ。」


「うん、そうだねアルマちゃん。」


「我ももう辛抱たまらん!!」


 そしてみんなは同時に手を合わせると……。


「「「「いただきま~す!!」」」」


 と、声を合わせて口にして食べ始めた。


 どうやら今回もアルマ様の口に合うものができていたらしく、とても美味しそうに召し上がっていた。もちろんカナンやメア、ラピスもな。


 皆が美味しく食卓を囲む姿を眺めて、心が暖かくなるのだった。


(この光景がずっと……続けばいいんだがな。)

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