第174話 三人の魔物ハンター
メアがアルマ様たちとともに魔物討伐をしたいと言い出してから数日後、俺とラピスはアルマ様とカナン、そしてメアの三人を連れて隣町のアダマスへとやってきていた。というのも今回三人が受けた依頼は火事があったキノコの森で異常発生しているという魔物の討伐だった。
アダマスの街からキノコの森へと向かっている最中、ふとラピスが俺の隣でつぶやいた。
「よもやまたこの場所に来ることになるとはな。」
「今度は変なキノコ食って腹を壊すんじゃないぞ?」
「わかっておるわ!!それに今回は特別腹が減っているわけでもない。道端に生えているキノコなんざ食う気にならん……はずだ。万が一の時はカオル、お主に毒の判別を頼むのだ。」
「まったく懲りてないじゃないか。」
マジでラピスなら道端に生えてる美味しそうなキノコをパクっと食ってしまいそうだ。まぁそれが原因で最初出会った時はあんなにグロッキーだったわけだが。同じ轍は踏んでほしくはない物ものだ。
それにアルマ様たちの行動にも気を付けていなければならない。万が一にも毒キノコを食べてしまった時には目も当てられない。しっかりと見張っておかないと。
そしていざアダマスを出発してキノコの森があった場所へとたどり着くと、そこは以前見た景色とはまるで別風景だった。まるで空を覆い隠すように生えていた巨大なキノコも傘の部分や柄の部分が焼けこげている。周りの景色ほとんどに焼けた形跡が見られることから火事の規模の大きさがわかる。消火活動も大変だったろう。
辺りの景色を眺めていると、アルマっ様がこっちに向かって問いかけてくる。
「ね~カオル?今回の依頼の魔物ってこの森の中にいるんだよね?」
「そうみたいですね。」
依頼書に目を通してみると、そこにはキノコに短い手足の生えた魔物が描かれていた。
「キノコに擬態している魔物みたいなので怪しいキノコを見つけたらなるべく近づかないようにしてください。」
「は~い!!」
「キノコに擬態してる魔物なんですね。結構厄介かも?」
「大丈夫、私の魔法で一撃っ。」
「メアは炎魔法使うの禁止な。」
「な、なんでパパ!?」
「この森は燃えやすいみたいだからな、炎魔法でも使って引火したら大変だろ?だから使うなら水魔法とかそういうのにしてくれ。」
「う~……わかった。じゃあ水魔法にする。」
少し残念そうにしながらもメアは納得してくれた。それに続いてアルマ様も自分の武器を眺めて口を開いた。
「じゃあアルマも炎の
「アルマちゃんなら
「そうかな~。まぁ戦ってみなきゃわかんないね。」
そして意気揚々と森の中へと足を踏み入れようとする三人に、俺は一声かける。
「あ、そういえば今回依頼されている魔物はとっても美味しいみたいなので、もし食べたかったらなるべくボロボロにしないように討伐をお願いします。」
「え!?美味しいの!?」
「はい、高級キノコのような味わいと香りがあるらしいですよ。」
俺がそう説明していると、約一名俺の隣でやる気を出している人物がいた。
「むふふ、美味い魔物か……腕が鳴るのだ。」
今にもよだれが口元から垂れてきそうになっているラピス。ホンット食欲には正直な奴だな。
「ラピス、忘れるなよ?俺たちはあくまでもアルマ様たちの目付け役だ。くれぐれも仕事を忘れないように…………。」
俺がそう話している最中だった、突然腰のあたりをツンツンとカナンに指でつつかれた。
「あ、あのカオルさんラピスさんもう行っちゃいました。」
「はぁっ!?」
すぐに隣に目を向けると先ほどまで隣にいたはずのラピスが忽然と姿を消していた。
「はぁ~……まぁこれに関しては俺が間違ってたかも。」
ラピスの前で食材の話をした俺が間違いだったのだ。こういう話はこれから依頼の後にすることにしよう。監視役に支障が出る。
やれやれと大きなため息を吐いていると、アルマ様に服の裾を引っ張られた。
「カオル、アルマたちも行こ~?ラピスは大丈夫だよ多分。」
「うん、ラピスなら大丈夫。」
「そうですよ、ラピスさんならまず負けないと思いますし、ボク達も早く行きましょう!!」
三人に促されるがまま、俺たちはキノコの森の中へと入っていく。すると入ってすぐに怪しい巨大なキノコがあちこちに生えていた。赤い色と白い色の斑点模様のその傘はいかにも毒々しいが、あれが目的の魔物なら食べられるらしい。
「ね~、カオル。あれ攻撃してみてもいい?」
「良いと思いますよ。」
「じゃあボクはあれを……。」
「私はあれやる。」
そして各々アルマ様とカナンは武器を構え、メアは魔法の準備を始めた時……一斉に辺りに生えていた巨大なキノコの魔物が危険を察知して地面から飛び出してきた。
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