第173話 人魚のイヤリング
おっさん人魚が消えていった場所に何かキラリと光るものが落ちている。それを拾い上げると後ろに立っていたスリーが口を開いた。
「マスター、それが人魚のイヤリングです。」
「これがあれば水中でも呼吸ができるってわけか。」
さっき使った水の狩人と、この人魚のイヤリングさえあれば、ダイミョウウオにも対抗できるはずだ。
さて、目的の二つを入手したことだしこのダンジョンにはもう用はないな。
「スリー、ここの出口は?」
「あちらに見える魔法陣に足を踏み入れれば地上へと戻れますよ。」
そう言ってスリーが指差した先には淡く光る魔法陣が。彼女に言われた通り、その魔法陣を踏んでみると、一瞬で目の前に映っていた景色が変わり、俺はダンジョンがある海辺へと転移してきていた。
「おぉ、ホントに戻ってこれた。」
そして俺に続いてスリーもダンジョンから戻ってくると、彼女はまたしてもおもむろに自分の武器である銃を取り出して、銃口をダンジョンへと向けた。
「
そう言って彼女が引き金を引くと、放たれた弾丸から鎖が伸びてダンジョンを縛り付ける。すると、ダンジョンはもとあった場所へとゆっくりと沈んでいった。
「今のはダンジョンをもとに戻したのか?」
「はい、あのダンジョンは本来今現れるべきものではありませんから。また本来現れるべき時まで眠っていてもらいます。」
そして完全にさっき俺たちが潜ったダンジョンが海中へと沈んでいったのを確認すると、スリーが言った。
「それではマスター。帰りましょう。」
「あぁそうだな。」
水の狩人、そして人魚のイヤリングという水の中で戦うのに必要なアーティファクトは手に入れた。これでいつでもアルマ様が次の食材を欲したときに対応できる。
でもまぁ、水の狩人はもう少し扱いを練習するべきだな。まだ見つけれていない機能がきっとあるはずだから。
そんなことを思いながら城への道のりをスリーと共に歩いていると、大通りでバッタリと依頼帰りのアルマ様達と出会う。
「あ!!カオルとスリーだ!!」
「アルマ様、また何か依頼を?」
「うん、今日はね~カナンとラピスと一緒にこれ倒してきたよ。」
そう言ってアルマ様が自らの腰に提げていた収納袋に手を入れると、強面の顔をしたトカゲのような魔物を引っ張り出してきた。
その魔物に俺は見覚えがあった。
「ワイバーン……ですね?」
「うん!!空飛ぶから倒すの大変だったんだ~。ね?カナン。」
「うんそうだね。でも、ラピスさんが逃げようとしたのを捕まえてくれたりしたから……こんなにたくさん倒せたんだよアルマちゃん。」
ほぅ~?どうやら今回の依頼はラピスが結構二人に力を貸してあげたみたいだ。
チラリとラピスの方を見ると当の本人は少し恥ずかしそうにそっぽを向いている。そんな彼女に俺は歩み寄るとこっそりとお礼を言った。
「いつもありがとなラピス。」
「っな、ななっ!!きゅ、急になんなのだ!?」
「いや、最近いっつもアルマ様達の依頼についていってくれてるだろ?それに対して感謝してるんだ。」
「む、むぅ……そうか。まぁこやつらは我がおらんと少し危なっかしいのでな。」
少し恥ずかしそうに頬を赤らめながら、そう言ったラピス。
「そ、そういえばお主らはどこへ行っておったのだ?」
「あぁ、俺たちはちょっとダンジョンに行ってたんだ。」
「ダンジョンとな?この近くだと、我とカオルが前に行ったところか?」
「いや、それとはまた違う別のダンジョンだ。」
「むむ?まぁ良い。無事に戻ってきたのなら何よりだ。さて、我らは依頼の報告に行くぞ~。」
「うん、カオルまたね~!!」
そして三人はギルドへと歩いていった。
「さて、俺達は城に戻ろうか。」
ラピスがしっかりとアルマ様達の依頼達成に貢献しているという事実も聞けて満足だ。本人はカナンがラピスの力があったから……と言ったときには少し恥ずかしそうにしていたが、まぁ二人の面倒を見るのも満更ではないらしい。
そして城へと帰るといの一番にメアが駆けつけて飛び込んできた。
「パパお帰りっ!!」
「ただいまメア。」
「あのねパパ、私パパにお願いがあるの。」
「ん?お願い?」
珍しくメアがお願い事があると切り出してきた。一体どんなお願いなんだろうかと疑問に思っていると、彼女の口から語られたのは思いもよらないお願い事だった。
「メアもアルマとかカナンと一緒にお外で遊びたい!!」
「なにっ!?」
アルマ様とカナンと一緒に外で遊びたい……その意味を彼女はわかっているのだろうか?
「一応聞いておくけど、外でアルマ様達が何をしてるかは……知ってるのか?」
「知ってる。魔物退治。」
「流石にメアには……ちょっと危ないと思うぞ?」
「む~……パパ私を見くびってる。私だって戦えるの!!」
ムキになって片手を天に上げたメア。すると、彼女の手の上にまるで太陽かと見間違うほど巨大な炎の玉が現れた。
それに唖然としていると、となりにいたスリーが冷静にそれを分析してくれた。
「マスター、あれは炎属性の最上級魔法に匹敵する魔力量です。」
「さ、最上級魔法に匹敵する?」
唖然としていると、メアがきゅっと開いていた掌を握りしめる。すると、その巨大な炎の玉は綺麗さっぱりどこかへと消えてしまう。
「どう?すごいでしょ?」
「いつの間にそんな魔法を使えるようになったんだ?」
「メアはこれでも幻獣。魔法の扱いは人間よりも得意。」
胸を張ってそう言ったメア。
正直不安はあるが……あんな魔法を見せられちゃな。一方的に突っぱねることはできない。
「わかった。後で自分の口でラピスにも話してみるんだ。いいね?」
「うん、わかった。パパありがと。」
そしてまたぎゅう……と俺にしがみついてくるメア。
アルマ様といいカナンといい、下手したらメアにまで俺は強さ的に負けているのではないだろうか?
いや、多分この三人が異常に強いだけだよな……うん、そういうことにしておこう。
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