第145話 魔物との戦闘訓練
次々と黒い霧の中から現れる魔物を相手していると、遠くからスリーの声が聞こえてくる。
「マスター、現在の討伐数は8体です。未だレベル50を超えている魔物は出現していません。」
「まだレベル50超えてる魔物が出てきてないのか!?」
今相手にしてるこいつでも結構強いぞ!?
湧き出てくる魔物相手に多少苦戦しながらも倒すと、また次の魔物が現れる。
「あ、マスターその魔物はレベル52ですよ。」
「こいつがそうなのか。」
スリー曰く今しがた現れたこの魔物がレベル50を超えているらしい。
「さぁこいっ!!」
構えを取り直すと、その魔物は牙をむき出しにして襲い掛かってくる。今まで相手していた魔物とは比べ物にならないほど速い。
「っ!!」
突撃してくる魔物の攻撃を半歩横にずれて回避する。
スリーの動きを見ていたおかげで動体視力が鍛えられたのか、今では早い魔物の動きも鮮明に見えた。しかし体の反応が一瞬遅れ、頬に刃物で切り裂かれたような鋭い痛みが走る。
「あの爪でやられたのか。」
俺の背後に立っていたその魔物は俺の血がついた爪をペロリと舐めると口角を獰猛に吊り上げ、再び襲い掛かってくる。
「普通に避けてたんじゃ間に合わない。」
魔物が足に力を入れた瞬間に、俺は魔力を足に籠めて攻撃を横に躱すと、細分化した魔力を再び推進力にしてターンし、空中で無防備な魔物へと向かっていく。そして拳に大きな魔力を籠めると魔物へと向かって振りぬいた。
「魔力爆発っ!!」
拳に籠めた魔力を魔物へと向かって流し込むと同時に大きく吹き飛ばすと、魔物の体内で俺の魔力が何度も爆発し、内臓を傷つける。
内臓を傷つけられた魔物はさすがに致命傷だったらしく立ち上がることは無かった。
「ふぅ……。これぐらいなら何とかなるな。」
魔物を倒して一つ息をほぅっと吐き出すと、こっちに向かってスリーが近づいてくる。
「お見事でしたマスター。しかし厄介な攻撃を喰らってしまったようですね。」
「厄介な攻撃?」
スリーがそう口にしたと同時に視界がぐわんと大きくゆがむ。そのせいで立っていることすらままならなくなってしまった。
「うっ……これ……は?」
「神経に作用するタイプの筋弛緩性の毒ですね。致死性はありませんが体内に入ると全身の筋力が著しく低下し、動けなくなるようです。」
そう説明しながらスリーは自分の武器である銃を一本取り出すと銃口を俺に向けた。
「マスター、失礼します。」
パンッ!!
銃声が鳴ると同時に俺の体の中に何かが弾けるような感覚が走る。それと同時に全身のしびれが一瞬にして引いていった。
「解毒弾を撃ち込みました。これで動けるはずです。」
「あぁ、体のしびれが一瞬で引いたよ。……にしてもナインといいスリーといいマスターに向かって結構容赦ないよな?」
「あくまでも医療行為ですので。」
「はいはいありがとな。」
ゆっくりと立ち上がると、また魔物が湧いて出てきた。
「ある程度強い魔物を倒したら次のが湧くまで時間がかかるみたいだな。」
あんなのがバンバン出てこられたら困るけどな。
それにしても毒を持ってる魔物まで出てくるのか、とにかく一撃でも喰らったら致命傷になると思って戦わなきゃだめだな。
となれば、常に魔力を足に籠めておいたほうが良いのか?いつでも発動できるように……。魔力操作で発動タイミングは自分で合わせれるだろうから、試しにやってみよう。
そう思い立った俺は、常に足に魔力を籠めておくことにした。その状態で戦ってみると、魔力の消費は多少多くはなったが素早い魔物が現れたときに即座に体が反応できるようになっていた。
「ふっ!!」
魔力による推進力を乗せた攻撃でまた魔物を一撃で仕留めると、スリーがこちらに近づいてくる。
「マスターそろそろお時間です。」
「あぁ、魔力もそろそろ限界だ。」
最近自ステータスを見なくても魔力の限界を自分で感じ取れるようになった。
「さてっと、それじゃあスリー、この倒した魔物を収納袋に入れるのを手伝ってくれ。」
「了解しましたマスター。……新たに現れた魔物はいかがしますか?」
「任せる。」
「承知しました。では魔物の殲滅を行いながら回収作業に移ります。」
するとスリーは新たに生まれる魔物を倒しながら、俺が倒した魔物と今しがた彼女が倒した魔物を収納袋へと回収していった。そして辺りが綺麗になると同時にナインがこっちに空間を切り裂いてやってきた。
「スリー、マスター、迎えに来ました。」
「サンキューナイン。」
「では本日の戦闘訓練はこれにて終了です。お疲れさまでしたマスター。」
そうして今日の戦闘訓練も幕を閉じた。毎日少しずつではあるが自分の実力が上がっているのを感じる。この調子でどんどん強くなれればいいんだがな。
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