第142話 魔力の細分化


 カーラにもらった魔力を細分化するやり方などが記されたノートを受け取った俺は早速城へと戻るとそれを開いてみた。


『魔力の細分化……それを会得するためにはまず自分が魔法や魔術で放出する魔力量を詳細に知る必要がある。たとえば初級魔法フレイムを使う際に発動させるのに必要な魔力量が20MPだったとする。必要な魔力が20MPだったなら、今度はそれを徐々に少なくしていきつつも出力が変わらないように練習を積む。それを繰り返しているうちに、その魔法を発動させるのに本当に必要な最小限の魔力量が知ることができる。それを知ることができれば、魔力の細分化に大きく近づく。』


「……なるほど?今の俺がやるべきは、推進力を得るために必要な魔力量を知って、その魔力量を少なくしていけばいいのか。」


 カーラのノートを手にしつつ俺は一人トレーニングルームへと向かった。


 トレーニングルームについた俺はさっそく足に魔力を籠めるとそれを爆発させるイメージで移動の推進力に使った。一回それを使った後、俺は今どのぐらい魔力を使ったのかを調べるべくステータスを開く。


「ステータスオープン。」


 そして開いたステータス画面で魔力の残量を確認すると、今の一回の使用で40もMPを消費してしまっていたことが分かった。今の俺のレベルは51。最大MPは1050……現MPは1010。


「あとはこの40ってMPをどんどん少なくしていきながらも、推進力が変わらないようにする。」


 と、カーラのノートには書いてあったが……言葉で表すのは簡単だろうが、どうやって少なくしていくかが問題だな。


「ひとまず感覚で籠める魔力量を調節してみるか。」


 こういう時に役立つのがスキル魔力操作だ。


 スキルの魔力操作を使って足に少しずつ魔力を籠めていく。そしてさっきよりも少し少ないぐらいの塩梅で魔力を籠めるのをやめて一歩踏み出してみた。


 すると、案の定さっきよりも少し移動距離は落ちた。


「これで?どのぐらい消費した?」


 再びステータス画面を確認すると今ので30MP使用したことが分かった。


「たった10MPの違いでも結構違いが出てくるな。」


 あとはこの消費MPでさっきと同じ距離進めればいいんだが……。どうすべきかな。魔力の細分化……細分化ねぇ。


 頭を悩ませていると、ふと頭の中にある考えが浮かんだ。


「30のMPを二回に分けて連続で使ったらどうなる?」


 魔力の細分化というものの真の意味がそう言うことなのならば、こういう理屈が通用するはずだ。


 俺は再びさっきと同じように魔力を足に籠めると最初一回半分の魔力を推進力に使い、加速途中で残った半分の魔力を使って再び加速した。すると最初の移動距離よりも何メートルか前に進むことができた。


「おっ?30MPでさっきよりも進めたぞ?」


 ならこの要領で分割を繰り返していけば……いずれ最小限のMPでこれを使えるようになるはずだ。


 そしてしばらくトレーニングルームで何度も何度も試していると、一回の魔力を使った加速に使う最小のMPは10であることが分かった。その10という魔力をいくつにも分解しながら工夫を何回も試していると、突然頭の中に声が響いた。


『熟練度が一定に達したため新たなスキルを獲得しました。』


「おっ?一気にスキルが二つも。ステータスオープン。」


 ステータスを開いてみると、パッシブスキルの項目に先ほど声が言っていた魔力細分化と魔力節約の二つが新たに追加されていた。


「パッシブスキルで追加されたってことは常に発動してるってことだな。」


 試しに今の状態で魔力を足に籠めて推進力にして進んでみると、ステータスのMPがたったの5しか消費していなかった。


「おぉ!!これならかなりの回数使えるな。」


 最大MPが1050だから……250回は使える計算か。一回の戦闘で使うのなら十分だろう。


 それに魔力節約というスキルが手に入ったのなら……魔装に使用するMPもかなり減っているはずだ。


「魔装。」


 試しに魔装を使って両手に魔力の剣を作り出してみると、ステータスの画面上で毎秒1づつMPが減っていっているのが見て分かった。


「うんうん、思った通り魔装も消費MPが少なくなっているな。」


 これなら多少複雑な動きを絡めても……。


 俺は足に魔力を籠めると、魔力を推進力にして加速する。そして加速途中で再び細分化した魔力を爆発させ方向を直角に変えるイメージで動いてみた。すると、急発進や急停止、それに加えて変幻自在の移動方法を身に着けることができた。


「いける……。よし、これならスリーの攻撃を当てることもできるかもしれない。」


 新たなスキルを手に入れ、俺は明日また待ち構えているスリーとの戦闘訓練に手ごたえを感じるのだった。

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