第140話 スリーとの戦闘訓練
翌日、アルマ様達に朝食を作り終えると早速スリーにトレーニングルームに呼び出された。俺は着替え終えると、彼女が待っているトレーニングルームへと向かう。
そのドアノブに手をかけた瞬間に一瞬ためらったが、これも自分のためと言い聞かせててレーニンぐるーむの扉を開けた。
「マスター、お待ちしておりましたよ。」
扉を開けた先では、スリーがメイド服のまま俺のことを待っていた。
昨日からスリーはナインと共にこの城のメイドとして働くことになった。そのため城の中ではメイド服を身にまとっているのだが、彼女はそのままで俺のことを待ち構えていた。
「それで今日はどんなことをやるんだ?」
俺はスリーに問いかける。
戦闘強化プログラムというものを俺に施すってことは聞いてはいたが、その内容がどんなものなのかは詳しく聞いていなかった。俺が聞いたのはナインとのレベリングの3倍キツイっていうのだけは聞いていたが……。
「本日はまず、マスター自身の基礎戦闘の上昇を目的としたプログラムを行います。」
「基礎戦闘能力?」
「簡単に言うと体術強化のようなものです。マスターは確かに優秀なスキルをお持ちではありますが、体術や戦闘技術はハッキリ言わせていただきますと、素人よりも少し高い水準というだけです。」
「ま、まぁ……そういうのを習ったことはないからな。」
「戦闘技術は習うよりも実戦で自分で編み出し、使えるようになった人間のほうがより優れているとデータがあります。ですので……。」
そういうとスリーはスッと自然に構えを取った。
「まずはスリーとお手合わせして自分なりに戦闘技術の向上を目指していただきます。」
「スリーは武器を使わないのか?」
「今のマスターの戦闘技術よりもスリーにインプットされている基礎戦闘能力のほうが高いので問題ありません。どこからでもどうぞいらしてください。」
確かにまぁ……スリーに攻撃を与えようとした最後、彼女の回し蹴りを頭にモロに喰らって気を失ったからな。あの蹴りの軌道は目視できなかった。それに命を奪うためのものでもなかったから危険予知も発動しなかった。
「どこからでも……いいのか?」
「はい。
「はは、めっちゃ侮られてるな。」
まぁスリーがそう言うんなら……行かせてもらうか。
そして俺が床を蹴って加速した瞬間……頭に強い衝撃が走る。
「ぐあっ!?」
「マスター、初動の動きが遅すぎます。」
いつの間にか足を振り切った態勢で立っていたスリーは、俺に向けてそう言い放った。どうやら俺が動くよりも早く彼女は動いて先に攻撃を仕掛けられたらしい。
「いったたた、容赦ないな。」
「これでも手加減をしているのですよ?やる気になれば一撃で首から上を刈り取ることも可能でした。ですがまぁ、そういう攻撃ではマスターのスキルで防がれてしまうでしょうが……。」
「スキルさえなかったらいつでも殺せたってわけか。」
「はい。」
っかぁ~……厳しいトレーニングになるとは思ってたけど、心までへし折られるようなトレーニングになるとは思ってなかった。
「さぁ、今回はスリーに一撃を加えるのが目標です。時間は限られていますからどんどん動いてください。」
「っ……わかったよ!!」
今度は直線的な動きではなく、ジャックのように左右の壁も利用しながら動きを複雑にしてスリーへと向かっていくが、突然一瞬視界から彼女の姿が消えたかと思えば、今度は超至近距離に彼女の顔があった。
「マスター、直線的な動きを直したのは良いと思いますが、無駄な動きが多すぎますね。」
「っ!!」
そして容赦なく加えられる彼女の重い一撃。動きに夢中になっていた俺はそれを避けられずに普通に喰らってしまう。
スリーは俺に攻撃を加えた後、音もなく床に着地すると体勢を崩しながら落下した俺へと向かって言った。
「無駄な動きを一つするだけで死につながる場面があります。マスター、それはお気を付けください。」
「いててて、あれでもダメか。」
単にジャックの真似をするだけではスリーを惑わすことすらできないらしい。
尻もちをついた状態から立ち上がると視線の先にはスリーの姿がある。その様子から追撃してくる気配はない。あくまでも俺に攻撃を加えさせることが目的らしい。
「マスター、移動を補助するのは筋力だけではありません。魔力を足に籠めて踏み出すことで推進力を増加させることもできるのですよ?」
「魔力を足に?」
魔装を足に纏わせるようなものか。
せっかくアドバイスをこうやって言ってくれるのなら、やってみる価値はある。
むしろそうやってくれってことだろうからな。
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