第137話 スリー
シリアルナンバー003と口にした彼女はじっとこちらを見ると、ナインのほうを見て首を傾げた。
「
「今の私はコード9999に則り、こちらの方をマスターとして認証しました。」
「その人間がコード9999に値する能力を持っている……と?」
「はい。疑問に思うのなら、データを共有しましょうか?」
そうナインが提案すると彼女は首を横に振った。
「データを共有するよりも、私自身が体感した方がより鮮明なデータをとれると推測。よって、今より
「だそうですマスター。よろしくお願いします。」
ナインはこちらに目を向けると淡々とそう言った。
「はぁっ!?結局こうなるのかよっ!?」
「コード9999に値する能力を
「簡単に言ってくれるなぁ……。」
そんなやり取りをしている間にも、スリーは戦闘態勢を整えていく。
「
ナインと同じ言葉を口にした次の瞬間、スリーの両手にはハンドガンのような形状の武器が握られていた。
「また物騒な……ナインと同じ武器じゃないのか。」
「全てのアンドロイドは各々違う武器をミラ博士に与えられていますから。」
「後付けの情報どうもっ!!」
そう吐き捨てるように俺が言った時、スリーが動く。
「戦闘行動開始。」
「っ!!」
彼女は容赦なくこちらに銃口を向けると、引き金を引いた。
その瞬間、時間の流れがピタリと止まる。
「うぉっ!?」
危険予知が発動して時間が止まったのは良いものの、スリーが撃ち出した弾丸は俺の眼前数センチのところまで迫っていた。
「速すぎだろ……。」
引き金を引いた瞬間までは見えていたが、本来銃弾が射出される時に発せられる銃声音はまだ聞こえてきていない。
つまり、この弾丸は音が届くスピードよりも速い速度で撃ち出されているということだ。
(相手が遠距離武器なら……接近して戦うのが良さげか?)
そう思った俺は、迫ってきていた銃弾を一歩横に移動して避けると一気に足を踏み出しスリーへと距離を詰めていく。
すると、彼女の懐へと入ったところで時間の流れが戻り、懐へと潜り込んでいた俺は彼女と目があった。
「ふっ!!」
「―――――っ!?!?」
懐へと潜り込んでいた俺は先程拾ったばかりのアーティファクト魔神の腕輪に魔力を籠めると、至近距離で雷を彼女へと向けて放った。
流石に至近距離で放たれた雷撃に反応するのは無理だったようで、スリーは雷を浴びながら後ろへと仰け反った。
一見効いているように見えた攻撃だったが、次の瞬間には彼女は感情のない瞳を此方へと向けていた。
「魔神の腕輪……。それは正確なデータの解析の邪魔なので封印させてもらいます。」
「なっ……にっ!?」
彼女がそう言った瞬間に、俺が身に付けていた魔神の腕輪に鎖が巻き付けられ魔力を籠めても反応しなくなってしまう。
「これは、前にナインが使っていたやつと同じ……。」
「マスター、私達アンドロイドはミラ博士が作ったアーティファクトを封印する力を持ち合わせておりますので、お気をつけください。」
「だからそれ言うの遅くね!?」
そうナインに突っ込んでいる間にも、スリーは両手に握っていた銃をこちらへと向けてくる。
「では改めて戦闘を再開します。」
「っ!!」
「射撃モードを切り替え、セミオートからフルオートへ。」
「は?」
そう言って彼女が引き金を引いた瞬間、再び時間の流れがピタリと止まり、俺の目の前には無数の弾丸が迫ってきていた。
「いやいやいや……そんなこともできんのか。」
スリーの持っている武器の性能に驚きながらも俺は回避行動をとった。
しかし、時間の流れがなかなかもとに戻らない。
「ん?」
それを疑問に思っていると、ゆっくりと時間の流れがもとに戻り始め、今の今までなぜ時間が動き出さなかったのか身をもって体感することになる。
「熱っ!?」
急に右の脇腹に猛烈な熱さを感じ、手を当てるとなぜか腹部から大量に出血していて、左手がベットリと血にぬれてしまう。
「なん……。」
(確かに全部の弾は避けたはず……なのに。)
出血している患部をおさえながら、考えているとスリーの方から今のカラクリについて説明してくれた。
「素晴らしいスピードでしたが……
「跳……弾?」
……確か、撃ち出した弾が壁とかに当たって跳ね返る現象のこと……だっけ?
まさかその軌道すらも計算して今撃ったのか!?
「
「ナインの判断に間違いはありません。その意味を
「…………。」
ナインの言葉に黙るスリー……。彼女はナインの言葉を信用していないかのように、俺に再び銃口を向けると引き金を引いた。
その瞬間……俺の脳内に
(また……か。)
その映像では、また危険予知によって止まった時間の中を動いて銃弾を避けている俺の姿が映っていた。しかし、銃弾を避けたあと壁に当たって跳ね返ってきた無数の跳弾によって体を貫かれている映像だ。
(……普通に避けたら死ぬってことか。)
嫌な未来を見せてくれるもんだな。だが、お陰さまで打開策は見つかった。
再び俺の目の前で止まる銃弾。俺は止まった時間の中で、拳に魔力を籠めると迫ってきていた銃弾一つ一つを殴っていった。
そして全ての銃弾を殴り終えると時間の流れがもとに戻り、跳弾をも計算して放たれた銃弾は全て俺を避けて明後日の方向へと飛んでいってしまう。
「なっ!?」
予想外の出来事に思わず驚きの表情を浮かべているスリー。そんな彼女に向かって一歩で距離を詰めると、俺は拳を振りかぶった。
「お返し…………だっ………あ?」
拳を振りかぶると同時に、スリーの踵が俺のこめかみに当たっていた。
次の瞬間、ぐわんと視界が歪んだ俺はその場に倒れてしまう。
(終わった……。)
そう思いながら意識が闇の中へと沈んでいく最中、最後にスリーの声が頭のなかに響いた。
「
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